見出し画像

当たり前は誰かの当たり前ではない努力

先日、気になるニュースを読んだ。

中部電力、法人の新規契約を一部停止 供給量担保できず

日本経済新聞より

正直、「ついに来たか」と思う。


2016年4月1日、電力小売り全面自由化が始まった。

電力小売り全面自由化について

資源エネルギー庁より

それまで各地域の発電・送電・売電を請け負っていた、
東京電力や北陸電力、中部電力と言った電力会社から、
小売りの機能を切り離し、
誰でも電力を小売りすることが出来るようになった。

ガソリンスタンドや携帯電話ショップなど、
電力と関係のない企業が、
電力を売り出したことをご記憶の方も多いと思う。

それらは【新電力】と呼ばれ、
大抵は既存の電力会社の数十パーセント安い価格設定になっていた。
連日営業の電話を頂き、
当時の社長の指示で、今後の会社の電力購入の方針を纏めることになった。

ただ、電力会社を変更するつもりは最初から無かった。


私は、2008年から2012年まで、
以前勤めていた会社の転勤で、
アメリカ東海岸のある地方都市に住んでいた。

それまで海外で長期にわたって住むことなどなく、
日々が驚きの連続だったのだが、
その中で大きなカルチャーショックを受けたことがある。

民明書房刊【怒気怒気っ★初めての海外生活】より抜粋

それが、電力供給の不安定さ

ガス・水道・電気のインフラ、
全て同じ会社がサービスを提供してくれていたのだが、その中で、電気の不安定さには参った。
なんせ、
雷が3発鳴っただけで停電するのである。
そして一度停電が起こると、土日はまず復旧しない。
平日であっても、3~4日かかるのはザラ
である。

冷蔵庫の中身は何度もダメになり、
買い物に出たお店ではカードが使えない。
携帯電話の充電も出来ず、
インターネットやメールも使えない。

これが本当に世界一位の経済大国かとやるせなさを感じた。

民明書房刊【怒気怒気っ★初めての海外生活】より抜粋

【〇〇自由化】
【規制緩和】
【既得権益の打破】

よく、目にする言葉だ。
それまで限られた企業がマーケットを独占していた
そこに競争原理を働かせることで、
消費者にメリットのある適切な競争を促す。

ただ、疑問を感じてしまう。
どんなケースでも、本当にそんな理想的な姿になるのだろうか。

【既得権益】とは、乱暴に言い換えれば、
【その世界におけるノウハウや繋がり】で、
その世界を守るために投資してきた過去、
それにただ乗りする形で競争原理を働かせることが、
本当に長い目で見て良い事なのか疑問だ。

【競争することで、価格が下がる】
それは経済学におけるイロハのイ
では、下がった価格の犠牲になるのは何か。

実際のところはどうかわからないが、
表に出てこない裏方業務
成果が数値化されない間接業務
ここにメスが入ることが多い気がしている。

そして、その結果として、
巡り巡って、
雷が3発鳴ったら停電する
そんな事態になったのではないか


名古屋に、でんきの科学館という施設がある

電気の歴史的な成り立ち
発電や送電の仕組みから、
普段我々の目につかない部分である、
【送電線のメンテナンスの大変さ】
【発電に使うLNGなどの燃料の調達】

そこに従事する方々のリアルな紹介がある。

『スイッチを入れれば明かりが点く』

我々が当たり前と信じて疑わない、
その『当たり前』を守る人たちがいる。
確かに、それまでの電力事業は
大いなる【既得権益】だったのかもしれない。
でも、
その既得権益の中で、
世界中にエネルギーの調達網を敷き、
各家庭まで電線を敷き、
目も眩む高さで点検業務を行い、
我々の【当たり前】を守る人
たちがいる。
それらの業務が、競争原理の中で、
成果を強いられ、コストカットを強いられる、
その先にあるのは、
アウトソーシングによる競争の競争、
そうして、どんどん仕組み的に無理が重なった結果、
我々が『当たり前』と考えていたものは
脆く崩れ去る


当たり前の向こう側には、
必ず誰かの『当たり前でない努力』がある。

そこにまで思いを馳せて行動することで、
私も誰かの『当たり前』を守れたらと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?