ロイホであんみつに出会い直す。
以前、もはやわたしの作業部屋といっても過言ではない、愛しのコメダ珈琲についてつらつらと書いたが、比較的お客さんが少ない時間帯であれば、ファミリーレストランも作業場所として最高である。
なんたって、食べ物が充実している上に机が広い。その上ドリンクバーという、カフェオレも珈琲もメロンソーダも何でも飲み放題という神システムが存在するのだから。
そして意外と、時間を選べば、パソコンをカタカタしているサラリーマン、勉強をしている大学生や高校生など「おひとり様」のお客さんも多い。
一口にファミリーレストランといっても「サイゼリア」「COCOS」「ガスト」「ロイヤルホスト」と色々ある。
その中でもわたしのお気に入りはロイヤルホスト、通称ロイホだ。
ちょっと他のファミレスよりお高いけれど、飲みものが美味しくて、騒がしくなさすぎないのが良い。
ちなみに、そんなロイホで頼むのは、「アサイーとヨーグルトのパフェ」が圧倒的に多い。
アサイー=美容にいいという浅はかな刷り込み。
これまた身体に良さげなヨーグルトの組み合わせにより他のスイーツに比べて、いくらかヘルシーでカロリーが低そうというよこしまな考えからである。
カロリーを気にするなら、スイーツを頼むなよという声も聞こえてきそうだが、その選択肢はないので悪しからず…!
だから、その日も一応メニューをぱらぱらと開いて眺めてみるも、いつもの「アサイーとヨーグルトのパフェ」に決まりだな、なんて思っていた。
しかしその日は、違った。
ふと、いつもは素通りする「クリームあんみつ」が目に留まったのだ。
少し前に見かけたnoteで、あんみつのことが話題に上っていて、食べてみたいなあ、なんて思った。
頭のどこか片隅にあんみつの存在がこびりついていたのだろう。
へえ、アサイーとヨーグルトのパフェと同じ値段なのか。じゃあ、ちょっとあんみつに挑戦してみてもいいかもね。
メニューの写真を穴があくほど見つめる。
おなじみの白玉だんごに、あんこに、バニラアイス、そしてぎゅうひ、オレンジ色のこれは果物の缶詰なんだろう。下の方はよく分からない。
しかし何が入っているのか、お楽しみというのもまた一興。
わたしの記憶の中で「あんみつ」といえば、缶詰に入ったあんみつを小ぶりなすりガラスの器に移して、祖母が出してくれていたもの。
祖母があんみつが好きだったのか、わたしが喜んだから出していたのか、祖母がこの世を去ってもう確かめようがないが、如何せんよく食べた。
母もおやつによく、缶詰に入ったあんみつを出してくれていた気がする。
久々のあんみつを目の前にして、食べたのはいつぶりだろうか。と頭をひねる。あんみつは「出してもらえるもの」であったので、ファミリーレストランとはいえ、自らお店で注文したことはなかったことに気づいた。
綺麗に器に盛られたあんみつを見て、はっとした。
そうだ、この透明の立方体!!
ふるふるしてそうでいて、思いのほか固めのこの、寒天…!
あんみつと言えばこれがたくさん入っているんだった。
先ほど、メニューの写真の器の下に入っているもの、よく分からないなあなんて思っていたけど、これはこの透明の寒天だったのだ。
一口また一口、とスプーンを進めながら、不思議な気持ちになる。
何度も食べてきたこの寒天の存在を、なぜわたしは忘れていたのだろう。
あんみつには、あって当たり前だと疑わなかったものなのに、久しぶりに食べるまでわたしの中で、その存在をすっかり消してしまっていたのだ。
子どものころ、正直に言うとわたしはこの寒天の存在を、さほどよく思っていなかった。
ちょっと甘いだけのこの四角いふるふるがなんだか味気ないような気がしたのだ。
もっと、サクランボとか白玉がたくさん入っていたら良かったのに、なんて思いながら食べていた。
別添えの黒蜜をかけると、寒天のすっきり淡泊な甘みがコクのあるまろやかでぽってりした黒蜜と絡んで美味しい。
たまにわらび餅にかけて食べたりするけれど、わたし、黒蜜の風味ってとても好きだなあと再確認する。
というか、わたしの記憶の中のあんみつに黒蜜なんてあったっけ?
記憶にない。そもそも「あんみつ」の「みつ」ってそもそも「黒蜜」のことなんだろうか。
果物の甘さと人口的な甘さの調和が懐かしい、果物の缶詰。
アイスも乗っており、賑やかだ。
見た目にもポップで愉しい、あんみつ。
そして同時に小豆でもない、ごろっと大きい豆も、ああこれもあんみつにいたなあ、と思い出した。これは一体何豆なんだろう、ということも今も昔も気になっている。
かつて馴染みのあったものでも、機会がなければこうやってどんどん頭の片隅に追いやられ、しまいには忘れ去ってしまう。
記憶から何が消え去っていたのかも、意識することもできない。記憶ってなんて儚いんだろう。
でも一度忘れたって、機会があればこうやって何度だって出会い直せる。
忘れて、出会い直して、また忘れて。
出会い直したときには、また違う要素が加わっているのかもしれない。
書こうと思っていたテーマのエッセイはどこへやら、こうやって久しぶりのあんみつに、ちょっぴり心の温度を上げつつ、そんなことにぼんやり思いをめぐらせる夜10時前。
また、違う店でもあんみつ、食べてみたいなあ。
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