ジェンダーリビールの葛藤と結末。
妊娠6か月を迎え、エコーで性別がわかる時期になった頃の話。
次の健診くらいでわかるんだろうか…?
と、健診に行く前からわたしはそわそわしていた。
正直、男の子、女の子どっちでもいい。
どっちでも同じくらいうれしい。
はっきり性別がわかると、より具体的にまめちゃん(わたしが名付けた赤ちゃんの愛称)に関する想像がはかどって楽しいに違いない。
健診のエコー中、
「性別、概ね分かったけど伝えようか?」
そうお医者さんに確認され
「お願いします!!」
食い気味に答えるわたし。
聞いた性別は、何となくそうかな…?と予想していた通り。そうかあ…まめちゃんは○○なのね。頬の緩みが止まらない。
さて、問題は夫にどうやって伝えよう。
わたしが、マタニティ関係の記事をよく目にしているからだろう、わたしのスマホには、ジェンダーリビール関連の情報がすでに次から次へと、飛び込んできていた。
ちなみに、ジェンダーリビールとは、ぱかっとケーキや風船を開けて、飛び出す果物やその色で、パートナーや両親に子どもの性別をお披露目するという、一種のイベントである。
女の子なら苺で、男の子ならブルーベリーやキウイ。女の子ならピンクの飾りで、男の子なら青の飾り。
でも、うーん、なんだかなあ…。
感じる、小さな違和感たち。
わたしは、小学校で先生として働いている。性別による区別がどうしても必要なときを除き、子どもたちへの言葉がけとして、
○色だから、女の子。○色だから、男の子。
男の子だから〜。女の子だから〜。
男っ子っぽい。女の子っぽい。
などの言葉は意識的に避けるなど、性別による固定概念を植えつけないように、心を砕いてきた。
ジェンダーリビールでは、ぱっと見て女の子、男の子と判断できることが必要なのだから、仕方ない。それは、理解している。
もちろん、実際にこういった方法でジェンダーリビールをやっているお母さんたちを批判する気持ちは全くない。
けれど、いざわたしがやるとなったときは、普段から心がけていることとちょっと矛盾することになり、小さな違和感のくすぶりが否めない。
その気持ちを以前夫に伝えたら、
「それじゃあさ、晩御飯のメニューとかを天津炒飯が男の子で、唐揚げが女の子とかにするとか?」
と返ってきた。
…チョイスがもはや王将!!というか、それ夫が食べたいだけでは…?!
え、天津炒飯は女の子やっけ?それとも男の子?絶対にどっちがどっちやったっけ、
となること間違いない。
「ジェンダーリビール」と検索してみても、世間のママたちが行ったものは、やっぱり、どれもこれもピンクと水色。赤と青。
ほかに、どんなやり方があるんだろう。
いろいろ悩んだ末に、産後すぐに使えるまめちゃんグッズを用意し、それを見て、性別を判断してもらうことにした。
健診後、その足でそのままデパートへ。
今まで、赤ちゃん用の洋服をじっくり見たことがなかったから少し驚いたのが、いずれも男女どちらのものかはっきり、売り場もデザインも色も分かれているということ。
女の子用はフリフリしたレースやリボン、可愛いらしいお花などの装飾。
男の子用は装飾がほぼなく、シンプル、柄は乗り物や恐竜。
少し成長した子ども用の服となると、水色や青といった寒色系の女の子のワンピースも、はっきりした赤色の男の子用のTシャツもあったけど、乳幼児用の服となるとこうもはっきり分かれてるんだなあ、と意外だった。
…うーん、ぱっと見てどちらか分からない色が理想なんだけどなあ。
そう思いながら、店内を見渡すと淡い黄色のお洋服が目に入る。装飾もいかにも、なデザインや柄ではなく、胸元に控えめに飾りがついたデザイン。
…よし、これに決めた!!!
「お箱は、いかがしましょう?」
と店員さん。
普段は人への贈り物でない限りは、箱代がもったいないし、後からゴミになるだけの箱なんて、絶対に付けてもらわない。
しかし、これはジェンダーリビール用とはいえ、わたしが買った我が子への人生初のプレゼントである。
200円なんて、全く惜しくないぜ…!
箱の包装紙やリボンも選ぶことができたので、黄色にゴールドのリボンにしてもらった。これなら、ぱっと箱を見ただけで性別も分かるまい。
帰宅していつ夫に「ジェンダーリビール」を仕掛けようかと、にやにやと目論みながら晩御飯を用意する。
晩御飯の後はいつもわたしと夫は、各々スマホを見たり、テレビを見たり、しばしののんびりリラックスタイムだ。
わたしは、スマホのLINEをスクロールしながら、最近妊娠を報告した友人に、性別のことも言っちゃおうかなあ、と考えていた。
さあ、そろそろあの黄色くラッピングした箱を持ってこようか、と夫をちらりと見やる。
彼はソファーに寄り掛かりながら、「たまひよ」の附属本である名付け本を見つめて、
「あい、あいか、あかり、あゆみ、あやか…
いや、しほちゃんとかも可愛いな…」
などど、ぶつぶつ呟いている。
いや、ちょっと待ってよ…!
なんで女の子前提なんよ!!!
とつっこむわたし。
夫「え、さっき言ってたよ?」
わたし「え?え?どういうこと?」
夫「今さっきケータイ見ながら、『女の子だったよ〜!』っていろんな人に言いたい〜!うへへ〜って独り言言ってたよ。」
膝から崩れ落ちた。
ねえ、夫の反応を楽しみにしてた、ジェンダーリビールは?!
悩みに悩んで買った、淡い黄色のお洋服は?!
わざわざ箱に黄色のリボンをかけてもらった意味は…?!
こうして我が家は、折角のジェンダーリビールの機会をわたしのうっかりにより逃してしまったのである…。
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