スウドン剣法免許皆伝8

面打ちの際の腕の使い方について細かく考えてみたいと思います。まず初めに、お腹の前で両拳を軽く握って、左拳を下右拳を上重ねてくっつけてみてください。そして左拳をそのまま上へ持ち上げると、右拳には何の力も入れなくても自然に持ち上がります。竹刀を手にした時もまったく同じ感覚で使うべきなのに、右拳を離してしまう感覚、右腕を持ち上げて右拳を上げてしまう感覚、右手で竹刀を持ち上げてしまうやり方は間違いと心得るべきです。このことは次ぎの話につながっていきます。
竹刀は竹の刀と書くように、刀が原点です。刀は重い、重い物をどう扱うかと考えることが、理想の面打ちに近付きます。重い物を何度も何度も右手で持ち上げることを想像してみてください。右腕の筋肉は相当疲れることでしょう。軽い竹刀だからできちゃっているんですね。悪いクセなんだけど。
重たい物は上から落ちるだけで力になります。当たれば痛いです。両手で竹刀という刀を持ち、中段の構えを取ります。この際、次のことに注意をするとムリムダのない構えになります。右手の指は竹刀にピッタリくっついた状態でなく、竹刀と指の間にスキ間のある丸い輪っかがある感じ。竹刀はしっかり握らずとも、輪っかがあるだけで竹刀は下には落ちません。左手の指は、生卵を持っている感覚で保持、力を入れると生卵は割れてしまいます。その状態から左手をスウッと前に出します。その際も、左手の指は握りしめるのでなく、指を開いて、掌根と言われる親指の下の膨らんだ部分と、親指と人差し指でできるV字で押し出す感覚がいいでしょう。押し出した最後の所、右腕が水平になった位の所で、左手を「ウー」と突き出すと剣先は自然と上を向いて少し持ち上がります。この「ウー」の感覚は、柳生新陰流でいう所の、刀をヒョイと放り上げるという教へにもつながると思います。ここまでの動きの中でのポイントは、両手の指には力を入れてないということです。さあここから落ちる刀の力の発揮の手助けです。ウーの後に「ドン」という感覚で左手二本の指(薬指中指)を締めて、手首を返すとともに腕全体で下へ引き落とすと、刀は自分の重みで加速されて振り出されていきます。指三本のイメージがありますが、実は小指の役割はそれほど無いのです。形として側にあるだけで、意識するのは二本の指でいいのです。なお、腕で引き落とすについて、昔の先生方は、下筋で打つと教えています。どこが下筋肉かと考えるより、腕の下側で引き落とすと思えばいいのです。さて、ここまでの所右手は何をしているかというと、何もしていないと言えば言い過ぎですが、添え手という言葉があるように、左手の動きに連動して動いているだけで、ただ一つ落ちる刀の方向付けの手助けをしています。刀が振れ落ちる時には、右手の指の輪っかが開き、親指人差し指のV字が出来ているイメージは大事です。握りしめていると、落ちる刀のブレーキになるからです。この左右の両手のイメージが理解できて刀を振ると、空気を切り裂く
ピュツという風切り音が出るのです。右手に力が入り過ぎていると、刃すじがぶれて音は出ません。右手はそして最後に仕事をするのです。地面まで斬ってしまわないように、振り終わった刀の確保、保持、あるいはブレーキ、そんなイメージです。ドウ打ちの場合は少しイメージが違いますが、それは次ぎの機会にして今日は最高の面打ちの稽古に励みましょう。一緒に稽古しませんか。ではまた。