平成27年司法試験・民法・設問1・解答に挑戦

平成27年司法試験・民法・設問1・解答に挑戦
第1 設問1
1、小問(1)
(1)引渡し請求の根拠
 Aは、Cに対し、Aが材木①20本の所有しているのに、Cが権原なく材木①20本を占有していることから、Aは所有権に基づいてCに対し返還請求できる。
(2)上記(1)の請求の検討
ア、AはBに対し、丸太20本を売却(555条)しており、丸太20本の所有権はBに帰属していないか。この丸太の売買おいては、BがAに対し、代金全額を支払うまで、Aが原木20本の所有権を留保する所有権留保特約がなされている。BはAに代金を支払っていないため、丸太20本の所有権はAに帰属する。
イ、AがBに対し所有権留保の約定で丸太20本を売っているが、Bがこの丸太20本を加工し(246条)、材木①として製材していることから、Aは所有権を喪失していないか。246条但書は、工作によって生じた価格が材料の価格を著しく超えるときは、加工者がその加工物の所有権を取得する旨を規定している。しかし、本問では丸太1本の価格は15万円であり、製材しても材木①1本の20万円に過ぎず、加工によって、材料の価格を著しく超えていないことから、Aは原木を所有権留保によって所有権を維持していることから、材木①の所有権を有している。
ウ、
(ア)上記のように、原木20本の所有権がAに帰属し、Bが無権利者であっても、CはBから製材①を売買で譲渡を受けていることから、Cは製材①を原始取得(192条)していないか。もし、Cが所有権が帰属していた場合、Aの返還請求はできないことになる。そこでCが製材①即時取得しているかどうか、を検討する。
(イ)即時取得の実体法上の要件は、(ⅰ)前主の無権利(ⅱ)有効な取引行為(ⅲ)後主の占有は平穏かつ公然であること(ⅳ)占有開始時に善意かつ過失であること(ⅴ)後主が占有をしていることである。前主のBは上記ア、イで指摘した通り、製材①の所有を有しておらず、(ⅰ)を充たす。B・C間で製材①の売買契約を交わし製材①をBはCに譲渡しており、(ⅱ)を充たす。
Cは、B・C売買によって製材①を占有を開始しており、(ⅴ)を充たす。(ⅲ)の平穏かつ公然と、(ⅳ)のうち善意は186条1項によって推定される。
 しかし、Cは、最近A・B間でBが代金支払前に丸太を製材して売却してトラブルが起きていることを知っていた。このため、今回の製材①についても、Bは製材前の原木の代金をAに支払っていない疑いを持っており、Cはこの点について調査義務を負っていた。また、この調査義務はAに照会するだけで住むことから可能かつ容易であった。それにもかかわらず、Cはこの調査をしておらず、過失があったといえる。したがって、(ⅳ)の無過失の要件を充たしていない。したがって、Cは製材①を即時取得をしておらず、Aの返還請求は認められる。
2 小問(2)
(1)材木②の価額の償還請求の根拠
ア、材木①は、D・C間の請負契約にしたがって、Dの住宅のリフォーム工事で柱に使われた。この柱に使われた材木①は材木②となった。リフォーム工事で材木①が柱としての材木②になったことは、動産が不動産に付合したこと(242条)と評価できる。
イ、242条本文は、不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する旨を規定しており、材木②は不動産に従として付合したといえ、材木②は不動産の所有者たるDに帰属している。ただ、248条は、付合など添付によって所有権を失った者は、その損失額を703条、704条にしたがって償還できる旨を規定しており、Aは248条の規定を根拠に材木②の価額の償還請求ができる。
(2)償還請求の検討
ア、材木①の所有権は、上記(1)で先述した通りにAに属している。しかし、
Cによるリフォーム工事でDの不動産の柱として付合したといえ、この付合でAは材木①の所有権を失う損失を受けており、248条によって材木①の価額の償還請求ができる。
イ、もっとも、248条は703条に従うことを規定している。したがって、
248条の償金請求には703条の要件を充足する必要になる。703条の要件は、(a)他人の財産又は労務によって利益を受けたこと(b)他人の損失を及ぼしたこと(c)利益と損失との間に因果関係があること(d)(a)の利益に法律上の原因がないことである。
ウ、本問においては、Dは、Aの所有物である材木②によってDの不動産の柱になっており、DはAの財産で利益を得ており、(a)を充たす。Aは、材木②の所有権を喪失によっていることから、(b)を充たす。Aの損失でDに受益が生まれていることから、両者には因果関係があり、(c)を充たす。Dの受益は、材木②の所有権を有していないCのリフォーム工事でDの不動産に材木②を付合させたことによって生じており、(d)を充たす。以上から、Aは703条の要件を充たしていることから、Aは損失額の償金請求が可能になる。
エ、では、損失額はいくらか、が問題になる。材木①の1本の価格は20万円であるが、そもそもAがBに対し、原木として売却した価額は1本15万円であろことから、Aの1本あたりの損失額は15万円とするのが妥当である。この原木10本分が材木②として使用されていることから、損失額は150万円である。
オ、以上から、AはDに対し、248条に基づいて、150万円に及ぶAの損失額を償金請求できる。
(平成27年司法試験・民法・設問2関連知識へ)

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