改正民法条文語呂合わせ5

「改正民法条文語呂合わせ4」で受領遅滞関連条文を掲載しました。
そこで、今回は平成30年度司法試験民法第1問関連でまとめます。
この問題は、民法改正後は、改正条文だけで解けるようになりました。それも解法は2種類ありますが、まずは、債権総論の受領遅滞の条文を使う方法を解法1として書いてみます。しかし、1受験生として書いているので、正解かどうかは保証の限りではありません。みなさまのご判断で読んでください。
【問題要旨】
1、買主Aと売主Bとの間で、松茸5キログラムを50万円で売る売買契約を結ぶ。
2、上記契約では松茸の引渡しは、9月21日に売主Bの倉庫において代金支払と引き換えと行う旨が定められました。いわゆる取立債権ですね。
3、売主Aは、松茸5キログラムを分離、準備した後、その旨を買主Bに対し、通知しました。すなわち、松茸5キログラムの特定がなされ、買主Aに対する口頭の履行があった。
4、ところが、買主Aは、売主Bの倉庫に行こうとしたところ、トラックがなく、売主Bの倉庫に行けないことになり、そのことを理由に松茸の受領を拒絶した。
5、この受領遅滞中に、倉庫に保管されていた松茸など全農作物がごっそりと盗まれた。このため、履行ができなくなった。
6、売主Aは、履行補助人Cに倉庫の鍵を二重にしろ、と命じたが、Cは1つの鍵しか使わなかった。これは、盗難にあった原因の一つにもなった。
7、売主Bは、買主Aの受領遅滞中に盗まれたとして、松茸の代金支払いを求めた。
【設問1】
売主Bの本件売買契約に基づく代金支払請求を認められるか、理由を付して解答せよ
【解法1】
第1の解法=債権総論の中の受領遅滞の条文
1、危険負担
(1)第536条1項 
→当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
語呂合わせ
→小寒い日は(こさむ=536、日=1は)、双方に危険負担なし。
(2)もっとも、536条2項は、債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならないと規定。
語呂合わせ
→小寒い日に(こさむ=536、日に=2)であっても、暖房費支払いを拒めない。
2、売主Bに帰責事由があるか。
 債権者(買主)の受領遅滞中であるとき、双方の責めに帰することができない事由にあたるかどうかは、まず、債務者に帰責事由がないことが必要です。
 本問の場合、履行補助人Cと売主Bと同視できることから、上記6の履行補助人Cが二重の鍵では一つの鍵しか使わなかったことが売主の帰責事由とも思えます。
 しかし、受領遅滞中には、債務者(売主)の注意義務は軽減されます。なぜなら、受領遅滞を規定した413条1項は、「債務者は引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その物を保管すれば足りる。」と規定し、注意義務を軽減しています。
 413条1項の語呂合わせは、→じいさん(413)が認知症で受領遅滞しても、よいさ(413)。これを使えば、試験六法でも413条が引けます。
 上記のように、注意義務が軽減されていれば、倉庫の鍵は一つであっても、自己の財産に対する注意義務の範囲に含まれるので、売主には帰責事由はないことになります。
3、買主Aに帰責事由はあるのか。
 本問では、まず、買主Aはトラックが盗まれた不運があるが、売主Bの倉庫に行くには他のトラックを借りることができた。また、引渡し期日を延期することを申し出ることもできたと思います。このような事情がなく、ただの受領遅滞に陥っています。また、売主から履行の提供を受けているかどうかも認定しなければならないことから、まず、413条2項が問題になります。次に、債権者に責任があった場合の規定である536条2項も問題になります。
(1)413条2項の該当性
 第413条の2第2項は、以下のように規定しています。
 「債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。」
 要件は①債権者の受領遅滞②履行の提供があったことです。要件①については、買主Aは松茸の受け取りを拒絶しているので、要件①を充たします。要件②については、売主Aは、松茸5キログラムを分離、準備した後、その旨を買主Bに対し、通知しました。すなわち、松茸5キログラムの特定がなされ、買主Aに対する口頭の履行があったことから、②の要件を充たします。したがって、松茸の引渡しという履行の不能は、買主Aの責めに帰すべき事由になります。
(2)536条2項の該当性
 536条2項は
 「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。」と規定しています。
 語呂合わせは、小寒い日に(こさむ=536、日に=2)であっても、暖房費支払いを拒めない。
 買主Aには、受領遅滞という帰責性があることから、反対給付の拒むことはできない。すなわち、松茸5キログラムの代金支払いを拒むことはできない。
4、結論
 以上から、売主Bの本件売買契約に基づく代金支払請求を認められる。
以上

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