令和3年司法試験・商法設問3・解答に挑戦

令和3年司法試験・商法設問3・解答に挑戦
第3 設問3
1、Aの主張について
 Aは、本件決議に対して、株主総会決議取消しの訴え(831条1項)を提起することになる。Aは株主であり、訴訟提起が総会から3カ月以内であることから、訴訟要件は充たす。取消事由は、①弁護士Gを株主・Dの代理人として総会に出席を拒んだこと②丙社の議決権行使についてFは独断で本件修正議案を提出し、投票したこと③Cは、取締役の各候補者を議案ごとに一人ずつ採決するのではなく、AとCのいずれかを記載する方法を採用したことは、いずれも「決議の方法」について「法令」上の違反があることが挙げる。
2、①弁護士Gを株主・Dの代理人として総会に出席を拒んだことについて
(1)会社が定款に、株主の代理人として、他の株主1人に限定することは有効か。議決権を行使する株主の代理人の資格を当該会社の株主に制限する趣旨は、総会が、株主ではない者によって不当に荒らされることを防止する趣旨と考えられることから、有効である。
(2)もっとも、上記のような定款があったとしても、株主の代理人たる弁護士は通常、株主の意向に沿って行動し、株主総会を混乱させるようなことはしないと見られ定款の趣旨に反しない。そのような弁護士の株主総会への入場を拒絶したというのであるから、代理人に議決権行使を許す310条1項違反があったと考える。
(3)弁護士Gは株主Dの委任状を持参しており、あくまでもDの意向に従って議決権の代理行使をするつもりであり、本件総会を荒らすような事情は認められない。したがって、CがGを退場させた行為は、310条1項に違反し、「決議の方法」について「法令」上の違反がある。
3、②丙社の議決権行使についてFは独断で本件修正議案を提出し、投票したことについて
ア、甲社の株主総会において、丙社のEは、丙社の内規に従い、例年同様、議決権行使は甲社代表取締役に委任する包括委任状を甲社に送付しており、丙社の議決権行使は当該包括委任状を従っておこなわれることが丙社の意思であった。それにもかかわらず、Fは独断でCを取締役に選任する旨の本件修正議案を提出し、同議案に賛成する投票を行ったことは無権代理行為であり、310条1項違反である。
イ、また、Cは包括委任状を採用せず、Fの本件修正議案の提出と議決権行使を認めたことは、「決議の方法」について「法令」上の違反がある。
4、③Cは、各候補者を一人づつ採決するのではなく、AとCのいずれかを記載する方法を採用したこと

ア、同一の議題について、内容が異なる議案がそれぞれ、別個に提出された場合、議案提出者の意向を尊重して各議案は一つずつ別個に決議を採ることが会議一般のルールである。各議案を一つの議案として、まとめて議決を採ることはルール違反で無効と考える。
イ、本件総会では、Aを代表取締役に選任する旨の議案と、Cを代表取締役に選任する旨の議案はそれぞれ独立した議案であることから、各議案についてそれぞれ決議を取るのが、通常の議事を進め方である。それにもかかわらず、AとCのいずれかを記載する方法をCが採用したことは、「決議の方法」について「法令」上の違反がある。
5、以上の「決議の方法」について「法令」上の違反があったとしても、裁量棄却(831条2項)にならないか。
(1)株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令又は定款に違反するときであっても、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、同項の規定による請求を棄却することができる。
(2)本件株主総会において、CはAを取締役から退任させる目的で、友人のFと相談してFに丙社の権限行使について無権代理行為をさせている。また、丙社の包括委任状に従って、得票数を集計すれば、Aは取締役に選任されることになり、決議の内容に重大な変化を及ぼす。
(3)したがって、裁量棄却は認められない。
6、以上の事実から、株主総会決議取消しの訴えは認められる。
以上

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