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令和3年司法試験・民法・設問3・解答に挑戦

令和3年司法試験・民法・設問3・解答に挑戦
第3 設問3
【時系列】
15、Aには子FとGがいた。FはAとの交流を絶っていた。
16、Aは妻の治療費を捻出するため、Hと令和4年4月1日、金銭消費貸借契約を締結した。貸付金は500万円、弁済期は令和10年4月1日。(契約②)またGは本件債務につきHに対し書面で連帯保証契約をした。契約②に基づき、HはAに500万円を交付した。
17、Aは令和4年8月9日、Hに対し自己所有の絵画・丙を100万円で買取を要望
18、A・H間で17の売買契約を締結し、同月8月31日に代金を支払う契約を交わし、Aは丙をHに引き渡した。
19、Hは本件債務につき連帯保証人を増やせ、と要求。GはFに依頼し、Fは令和4年8月22日、連帯保証契約を締結(契約③)。GとFとの内部的負担割合は合意はなかった。
20、Aは令和10年6月2日、Hに対し、本件債務の弁済猶予を求める書面を送ったが、Fはこの事実を知らなかった。
21、Hは令和15年5月10日、Fに対し500万円の支払いを求めた。(請求5)
【設問2】
(1)Hは絵画・丙の代金をAに支払っていなかったとする。この場合、Fは令和15年5月11日の時点で、500万円全額又は丙の売買代金100万円分を支払を拒むことができるか。
(2)Hは絵画・丙の代金をAに支払っていたとする。Fは、500万円のうち、300万円をHに支払った。残り200万円は免除。FはAとGに求償できるか。求償額はそれぞれ幾らか。
【解答に挑戦】
第3 設問3
1、小問(1)・500万円全額について
(1)本件債務の弁済期は令和10年4月1日であり、令和15年5月11日はこの弁済期から5年以上、経過している。Fは、本件債務につき消滅時効(166条1項1号)を援用して、保証債務の付従性によってFは、保証債務も消えたとして支払いを拒めるか。
(2)本件債務の弁済期は令和10年4月1日であり、Fはこの弁済期を知っていることから、この弁済期の時点で保証債務を履行できることを知っていることになり、この弁済期は消滅時効の主観的起算点となる。したがって、本件債務の保証人たるFはAの消滅時効を援用できる(145条かっこ書き)。
(3)しかし、Aは令和10年6月2日、Hに対し、本件債務の弁済猶予を求める書面を送った。このことは、Aが本件債務の承認によって、時効の更新(152条1項)が認められることになる。また、主たる債務の事由は、保証人にも及ぶ(457条1項)。とすれば、本件債務の消滅時効の時効の更新はFにも及び、Fは消滅時効の援用はできない。
 したがって、Fは500万円の支払いを拒むことはできない。
2、小問(1)・100万円分の支払いについて
(1)A・H間で丙の売買契約を締結し、Aは丙をHに引き渡した。しかし、AはHから代金の支払いを受けていない。このことは、AはHに対し、100万円の債権を有していることになり、500万円の債務について100万円分を相殺でき、Fは、その限度で支払いを拒むことはできないか。
(2)しかし、Hは、丙の支払債務について消滅時効を援用できる(145条)。なぜなら、丙の売買債務の支払期限は、令和4年8月31日であるが、この時点から既に5年間が経過している。したがってHは消滅時効を援用すれば、Fは100万円分の支払いを拒むことはできないとも思える。
(3)もっとも、508条は時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は相殺できる、と規定している。AのHに対する丙の売買代金債権は、Hの金銭債務との間で相殺適状になてちたことから、Hの消滅時効があっても、Aの丙の売買債権は相殺適状にあったことから、Aは相殺権を有する。したがって、Fは、Aの相殺権を行使できる限度で100万円の支払いを拒むことができる(457条3項)
3、小問(2)・Aに対する求償について
(1)Fは主債務者・Aの委託を受けずにAの債務を保証をしていることから、FはAに対して事後求償できないか。
(2)委託を受けていないが、主債務者の意思に反しない者が保証した場合の求償権は、保証人が保証債務を履行した当時において主債務者が利益を受けた限度で求償できる(462条1項、459条の2第1項)。
(3)確かにFはAの委託を受けずにGに依頼されて、Aの債務につき保証をした。しかし、特にAに反対されるなどAの意思に反して保証した事情はない。
したがって、462条1項、459条の2第1項によって、Fの履行時においてAが受けた利益分、すなわち500万円をAに求償できる。
4、小問(2)・Gに対する求償について
(1)GはFとともに、Aの債務に連帯保証を共同で行っていることから、GはFに対して求償できるのではないか。また、求償できるとしたら、求償額が問題になる。
(2)連帯保証では、各保証人がそれぞれ債務全額を保証していることから、連帯保証人間の求償権は各保証人の負担額を超える債務を支払った場合に求償でき、求償額は負担額を超える部分である(465条1項)。
(3)GとFは各自の負担額について協議して決めていないことから、Aの債務額500万円の半分を各自の負担額と黙示的に合意していると解釈できる。GはHに対し300万円を支払っていることから、Gの負担額250万円を超える50万円をFに求償できる。
(4)もっとも、200万円分についてはGはHから免除(519条)を受けている。この免除はFに影響しないか。連帯保証においては弁済、更改、相殺、混同が絶対効を有するが、免除は相対効でGのみに適用され、Fに影響しない。
(5)以上から、FはGに対し、50万円を求償できる。
以上

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