平成28年司法試験・民法・設問2・解答に挑戦

平成28年司法試験・民法・設問2・解答に挑戦
第2 設問2
1、小問(1)
(1)Mの請求の根拠と内容
 根拠は、Mが、HのEに対する500万円の貸金債権をHから債権譲渡を受けたことである。この債権譲渡の内容には、貸金債権のほか、利息と遅延損害金も含まれる。
(2)請求の当否
ア、MがHから債権譲渡を受けたことについては、当該債権が譲渡を許さない性質を有していないことから、有効である。
イ、では、HのEに対する500万円の貸金債権は消費貸借として有効か。Eは、この500円を賭博に充てる目的を有しており、不法原因給付(708条)としてHはEに対して返還を請求できなくなることにはならないか。ただ、Hは賭博による直接的な利益を得ることを約定していない。708条但書は、受益者にのみ不法原因がある場合は不法原因給付にならない。しかし、本問の場合、EはHからの借入金で賭博に使うことを告げており、Hもそれを了承している。このような消費貸借は公序良俗(90条)に反しており、社会的保護に値せず無効と考える。とすれば、HのEに対する貸金債権の返還請求権は成立していない。
ウ、EはMに対し、債権譲渡に異議なき承諾をしているが、債権譲渡において債務者は譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗できる(468条1項)ことから、EはHとの消費貸借契約で、2021年7月31日
平成28年司法試験・民法・設問2・解答に挑戦
第2 設問2
1、小問(1)
(1)Mの請求の根拠と内容
 根拠は、Mが、HのEに対する500万円の貸金債権をHから債権譲渡を受けたことである。この債権譲渡の内容には、貸金債権のほか、利息と遅延損害金も含まれる。
(2)請求の当否
ア、MがHから債権譲渡を受けたことについては、当該債権が譲渡を許さない性質を有していないことから、有効である。
イ、では、HのEに対する500万円の貸金債権は消費貸借として有効か。Eは、この500円を賭博に充てる目的を有しており、不法原因給付(708条)としてHはEに対して返還を請求できなくなることにはならないか。ただ、Hは賭博による直接的な利益を得ることを約定していない。708条但書は、受益者にのみ不法原因がある場合は不法原因給付にならない。しかし、本問の場合、EはHからの借入金で賭博に使うことを告げており、Hもそれを了承している。このような消費貸借は公序良俗(90条)に反しており、社会的保護に値せず無効と考える。とすれば、HのEに対する貸金債権の返還請求権は成立していない。
ウ、EはMに対し、債権譲渡に異議なき承諾をしているが、債権譲渡において債務者は譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗できる(468条1項)ことから、EはMとの消費貸借契約で、Eは不法原因給付を理由に借入金債権を支払う責任はないことをHに対抗できる。
エ、したがって、H・M間の債権譲渡が有効であっても、HのEに対する返還請求権が成立していないことから、同債権の譲渡を受けたMはEに対して債権の元本、金利、遅延損害金は請求できないことになる。
2、小問(2)
(1)Mの請求の根拠と内容
 確かにE・H間の金銭消費貸借契約は90条違反で無効であるが、HはEに対して500万円を貸し与えている。このため、Hは不当利益(703)条を理由に500万円の返還請求権を有している。この返還請求権は法定債権である。H・M間の債権譲渡契約に、この返還請求権が含まれていることをMは請求の根拠とする。この返還請求権の内容は貸金元本500万円、利息、遅延損害金が含まれる。
(2)請求の当否
 不当利益の要件は、①損失の発生②利益の発生③損失と利益の間での因果関係④利益の発生に法律上の原因がないことである。E・Hの金銭消費貸借契約において、Hが500万円の損失が発生しており、①を充たす。Eには500万円の利益が発生しており、②を充たす。Hの損失とEの利益は金銭貸借契約締結で発生しており、両者に因果関係があり、③を充たす。Eの利益は、90条違反で無効であり、法律上の原因がないといえ、④を充たす。不当利益の要件をすべて充たすことから、HのEに対する500万円の不当利益による返還請求権が成立する。この返還請求権は703条により成立している法定債権である。この法定債権がHに成立している限り、M・H間の債権譲渡の範囲内にあるといえ、Mはこの法定債権をEに対して請求できる。
3、小問(3)
(1)Lの請求の根拠
 EはLに対し、H・Eの金銭貸借契約締結に際し、同契約について連帯保証を依頼した。この依頼にLは同意した。したがって、Lは、委託を受けて保証した者の事後求償権(459条)を根拠に、Eに求償を請求している。
(2)請求の当否
ア、459条の要件は(ⅰ)保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合であること(ⅱ)主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させたことである。Lは主債務者Eの委託を受けて保証しており、(ⅰ)を充たす。また、Lは元本500万円、利息75万円、遅延損害金9万円の計584万円をKに対して支払っており、(ⅱ)を充たす。以上から、LはEに対し、459条の求償権を有する。
イ、459条の効果は、保証人は、主債務者に対し、そのために支出した財産の額(その財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合にあっては、その消滅した額)の求償権を有する。すなわち、元本だけではなく、利息、遅延損害金を含む、保証人が支出した全額を指す。Lは元本500万円、利息75万円、遅延損害金9万円の計584万円をKに対して支払っており、584万円全額をEに対し求償できる。
(以上、平成27年司法試験・民法・設問1関連基礎知識へ)

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