改正民法条文語呂合わせ12

平成29年度司法試験民法設問2
今回は、設問2に進みます。参考図は前回を参照
Ⅱ 【事実】1から11までに加え,以下の【事実】12から16までの経緯があった。
【事実】
12.平成27年11月10日,Aは,Bから,甲1部分及び甲2部分を買い受けた。同日,甲土地を甲1部分,甲2部分及びその余の部分に分筆する旨の登記がされ(以下では,甲1部分を「甲1土地」,甲2部分を「甲2土地」といい,乙土地,甲1土地及び甲2土地を「本件土地」という。),甲1土地と甲2土地のそれぞれにつきBからAへの所有権移転登記がされた。Bは,これを受けて,【事実】11の訴えを取り下げた。Aは,Cに対し,これらの事実を伝えるとともに,本件土地賃貸借契約については従来と何も変わらない旨を述べた。また,同月20日に,丙建物につき,その所在する土地の地番を,「乙土地の地番」から「乙土地の地番及び甲1土地の地番」に更正する旨の登記がされた。
13.平成28年1月に,Cは,友人Dから,勤務医を辞めて開業したいと考えているが,良い物件を知らないかと相談を受けた。Cは,健康上の理由で廃業を考えていたところであったため,Dに対し,丙建物を貸すので,そこで診療所を営むことにしてはどうか,と提案した。Dは,この提案を受け入れることにした。
14.CとDは,平成28年5月1日,丙建物について,賃貸人をC,賃借人をD,契約期間を同日から5年間,賃料を月額60万円,使用目的を診療所の経営とする賃貸借契約(以下「丙賃貸借契約」という。)を締結した。その際,CとDは,専らCの診療所の患者用駐車場として利用されてきた甲2土地について,以後は専らDの診療所の患者用駐車場として利用することを確認した。
15.平成28年5月1日以降,Dは,丙建物で診療所を営んでいる。丙建物の出入りは専ら甲1土地上にある出入口で行われ,甲2土地は,従前と同様,診療所の患者用駐車場として利用されており,3台の駐車スペースのうち1台は救急患者専用のものとして利用されている。
16.平成28年9月3日,Aは,CD間で丙賃貸借契約が締結されたこと,Dが丙建物で診療所を営み,甲2土地を診療所の患者用駐車場として使っていることを知った。同月5日に,Aは,Cに対し,事前に了解を得ることなく,①「Cが丙建物をDに賃貸し,そこでDに診療所を営ませていること,」②「Cが甲2土地を診療所の患者用駐車場としてDに使用させていること」について抗議をした。
〔設問2〕 【事実】1から16までを前提として,次の問いに答えなさい。
Aは,本件土地賃貸借契約を解除することができるか,【事実】16の①及び②の「」部分の事実がのそれぞれ法律上の意義を有するかどうかを検討した上で,理由を付して解答しなさい。

【問われていること】
1、本件土地賃貸借契約の解除について可否
2、①「Cが丙建物をDに賃貸し,そこでDに診療所を営ませていること」の法律上の意義
3、②「Cが甲2土地を診療所の患者用駐車場としてDに使用させていること」の法律上の意義

【論点】
1、土地の賃借人Cが丙建物をD賃貸したことが土地の無断転貸に当たるか。仮に、当たれば612条の無断転貸にあたり、解除原因としての法律上の意義を持つになる。
→語呂=無理に(612)譲渡・転貸はダメヨ。解除ができるから。
2、患者用駐車場としての甲2土地は、CD間の賃貸借契約の範囲内にあたるか。換言すれば、診療所の敷地に入るのか、入らないのか。仮に入らないとすれば、賃貸契約の範囲を超えるものとなり、解除原因としての法律上の意義を持つになる。

【突破口1】
1、借地人が借地上の建物を第三者に賃貸することは借地も無断転貸になるか。
何か判例があったなあ。そう、大判昭和8年12月11日。
 地上の建物の賃貸は、「土地賃借人が賃借地上に建設した建物を第三者に賃貸しても、賃借人は建物所有のため自ら土地を使用しているものであり、賃借地を第三者に転貸したとは言えない。」との判例が出た以降、借地人は建物を自由に第三者に貸すことができ、賃貸人は契約の解除ができないことは定説となっています。
2、理由は、判例が「土地賃借人が賃借地上に建設した建物を第三者に賃貸しても、賃借人は建物所有のため自ら土地を使用(占有)している」ものであるからであるからだ。また、賃借人が地主から賃借しているのはあくまで土地であり、その土地上の建物は借地人の所有物であり、自由に使用収益することができる。借地契約は、賃借人に建物を所有させることを目的とする契約であり、借地人が所有建物を貸して収益を上げることは土地賃貸借契約の目的に反するものではなく、土地の転貸にはならない。
3、土地賃貸人の承諾を得ない場合に、土地賃貸人が契約を解除できるのは、賃借物である土地の「賃借権そのもの」を第三者に譲渡又は賃貸借土地を転貸する場合であり(612条)、土地賃借人が、建物を賃貸することは、土地の賃借権の譲渡又は転貸にはあたらないと言える。
 とすれば、土地の賃借人Cが丙建物をD賃貸したことが土地の無断転貸に当たらない。したがって、612条2項による解除できるという法律上の意義はないことになる。
【ここで条文の確認】
612条=(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
1項「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃貸借を転貸することができない」
2項「賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。」
【突破口2】
1、問題は、②「Cが甲2土地を診療所の患者用駐車場としてDに使用させていること」の法律上の意義だ。
 確かにC・D間の賃貸借契約の対象は、丙建物である。駐車場が丙建物の敷地に含まれているとすれば、敷地の無断転貸にならない。しかし、甲2土地が丙建物を敷地に含まれないとすれば、甲2については無断転貸となる。
 さあ、この問題をどう解決すれば、いいのか。ここで、改正民法の大きな方向性を意識してみる。契約の合理的解釈。つまり、C・D間の賃貸借契約についてCとDがどのような意思で契約を交わしたのか。ただ、客観的事実は無視できない。客観的事実を踏まえて、契約の合理的解釈をするべきだ。
2、丙建物の地番
 丙建物の土地は以前、「乙土地の地番」ということになっていたが、「乙土地の地番及び甲1土地の地番」から更正する旨の登記がなされている。こうした事実からは、甲2土地は丙建物に属さないとも思われる。しかし、丙建物を診療所に使用する目的で借りるということなので、その診療所を利用する患者の駐車場はC・D間の賃貸借契約に入っていなかったのだろうか。素人の考え。
3、契約の合理的解釈
 まず、問題文中から客観的事実を拾う。乙土地、甲1土地、甲2土地の3土地を含めた土地は「本件土地」とされている。また。「本件土地」の外周(公道部分を除く)には柵が覆われている。
 また、CDは、丙建物の賃貸借の目的は、「建物を診療所に使用すること」から、その診療所の患者が使う駐車場は、診療所の患者の便宜にかなう。さらに、この駐車場には救急患者用の駐車分も含まれている。このような事実から、CとDは、駐車場を診療所の敷地に入れて賃貸借契約を締結したのが通常と考えるべきだろう。
 このように考えれば、駐車場は、CD間で交わされた賃貸借契約に含まれていることから、無断賃貸にはならない。
【関係条例―語呂合わせによるまとめ】
605条(不動産賃貸借の対抗力)
「不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他第三者に対抗することができる。」
→語呂=老後(605)は海外のマンションを賃貸借
612条=(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
1項「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃貸借を転貸することができない」
2項「賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。」
→語呂=無理に(612)譲渡・転貸はダメヨ。解除もできるから。
以上

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?