改正民法条文語呂合わせ11

平成29年度民法設問1について
今回は前回アップした条文や判例を使って解いてみたいです。
一受験生の答案ですので、出題趣旨や市販解答集などで確認してください。

参考図                      北
                         ↑
   ――――――――――――――――――――――――  
   |          甲土地         |
   |   ―――――――――――――――――― |                    |   | 甲 |         |甲 | |
   |   | 2 |         |1 | |
   |   |   |         |  | |
   |   |   |  乙土地    |  | |
   |   |   |         |  | |
  ――――――――――――――――――――――――――――
              公道

【事実】番号は問題文と一致していますが、内容は一部省略しています。
1、甲土地、乙土地は平成14年3月31日以前はいずれも更地。
Aが所有する乙土地は南側は公道に面するほかは、B所有の甲土地
に囲まれた長方形。乙土地の実際の面積は、登記簿の記載された地積
より小さかった。甲土地と乙土地の境界には排水溝があった。
2、平成14年4月1日、Aは登記簿記載の地積にほぼ合致するように
乙土地の東側と西側それぞれ5メートル広げる形で柵を立てた。この柵と
公道に囲まれた土地全体を「本件土地」といい、東側に隣接する甲土地の一部を「甲1部分」と、西側に隣接する甲土地の一部「甲2部分」という。すなわち本件土地は、乙土地+甲1土地+甲2土地という関係にある。上図参照。本件土地の東側、北側、西側の外側に柵が立てれている。
3、医師Cは、本件土地に診療所用の建物を計画。Cは乙土地の登記簿を閲覧、Aとともに本件土地を実地に調査。またCは本件土地の測量を行い、登記簿記載の地積とほぼ合致することを確認した。
4、AとCは平成16年9月15日、本件土地につき、賃貸借契約(本件土地賃貸借契約)を締結。契約期間を同年10月1日から30年間、賃料を月額20万円、使用目的を診療所の建物の所有とされた。
5、Cは平成16年10月上旬、建築業者との間で診療所用の建物を建築する請負契約を締結。建築する工事は本件工事という。
6、Aは平成16年10月1日、Cに対し、賃貸借契約に基づき本件土地を引き渡した。Cは約定通り、Aに対し、賃料を払い込んでいた。
7、本件工事の着工は大幅に遅れ、本件土地は更地のままであった。
8、本件工事は平成17年6月1日、本件工事が開始。本件工事は乙土地と甲1部分で行われ、Cは、同日以降、甲2部分は工事関係者の駐車場や資材置き場と利用させた。
9、本件工事は平成18年2月15日に終了。乙土地と甲1部分に建築された建物は丙建物といい、C名義で所有権保存登記。甲2部分は患者用駐車場として利用。
10、Bは平成26年8月になって、甲土地に建物を建設することを計画。Bはその際、丙建物が甲1部分に越境して建築されていること、甲2部分が駐車場として利用されていることを気づく。
11、そこで、Bは、平成27年4月20日、Cに対し、所有権に基づき、甲1部分を明け渡すことを求める訴えを起こした。

【設問1】
Cは、Bが甲1部分を所有することを認めた上でBの請求の棄却を求める場合、①どのような反論をすることが考えられるか、②その根拠及び③その反論は認められるために必要な 要件を説明した上で、④その反論が認められるかを検討せよ。問いは4点。
【突破口1】
1、Cの反論の根拠は、不動産の賃借権の10年の時効取得
不動産の賃借権は、所有権以外の財産権になります。
そこで、→語呂=「ヒーロー(16)になった、財産(3)で」を思い出す。
163条を引く。
(所有権以外の財産権の時効取得)
163条は「所有権以外の財産権を、自己のためにする意思を持って、平穏に、かつ、公然と行使する者は、前条の区別に従い20年又は10年を経過した後、その権利を取得する。」と規定する。
2、本問は10年の取得時効だから、
→語呂=10年で2位のヒーローに(162条2項)
162条2項「10年間、所有の意思をもって、平穏に、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失はなかったときは、その所有権を取得する。」
3、要件は、条文から以下の通り
①所有の意思
②平穏かつ公然
③10年間占有
④占有開始時に善意かつ無過失
⑤時効援用の意思表示
→語呂=「10年前に独り占めした昔からジェントルマンというのはもう閉口。」
  10年、占有開始時 昔から(無過失) ジェントルマン(善意)、閉口(平穏かつ公然)
4、問題点
条文、要件は分かったが、ここで、問題となるのは占有開始時期だ。以下の時期が候補になる。
ⅰ、A・C間で賃貸借契約が成立した平成16年9月15日?理由は、賃貸借契約を結んでいるし、翌月からはCは賃料も払っている。そうであれば、であれば10年以上、経過し取得時効が成立する。
ⅱ、本件工事が開始された平成17年6月1日?理由は。Cが診療所建築という形態で本件土地を利用(収益)しているから。この時点なら、10年未満で取得時効は不成立になる。
ⅲ、本件工事が終了した平成18年2月15日?理由は丙建物はC名義で所有権保存登記されている。甲2部分は患者用駐車場として利用している。この時点も10年未満なので、取得時効は不成立。
5、本問は、ここを聞いているので、以上の点を頑張って書くべきだ。ただ、いつまでも悩みを見せるだけではアカンわなあ。開始日を決める切り札は何だ?
【突破口2】
6、一つは、「所有の意思」という要件だろう。所有権以外だから「自己のためにする意思」というのが正確だろう。この「自己のためにする意思」は占有者が内心だけに秘めてこっそり占有するのは、外部からは分からない。外部から見える形で行うことが必要だろう。すなわち、外形的に客観的に賃借という意思が判断できることが必要だ。なぜなら、土地を時効で取得されてしまう真の所有権者に時効完成を阻止するチャンスをあたえなければならない。そうでなければ、不公平というべきだ。
 また、賃貸借は「使用、収益」(601条)して、初めて実効性が認められる。
 そうだとすれば、Cの「自己のためにする意思」が客観的に外部から認識できるの開始時期は、ⅱとなる。
7、また、次の判例もある。

【文献種別】 判決/最高裁判所第三小法廷(上告審)
【裁判年月日】 昭和43年10月 8日
【事件番号】 昭和42年(オ)第954号
【事件名】 借地権確認等請求上告事件
【審級関係】 第一審 27201795
名古屋地方裁判所 昭和40年(ワ)第76号
昭和41年 3月25日 判決
控訴審 27201796
名古屋高等裁判所 昭和41年(ネ)第253号
昭和42年 4月28日 判決
【判示事項】 〔最高裁判所民事判例集〕
土地賃借権の時効取得
【要旨】 〔最高裁判所民事判例集〕
土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているときは、土地賃借権を時効により取得することができる。
【事案の概要】
 第1審が提起されたのは、終戦の翌年の昭和21年。天皇が人間宣言をし、新憲法が発布された。この年3月ごろ、原告・K氏は、被告・Y氏に対し、A県O町内の4件の土地(宅地や果樹園用農地など)を賃貸借した。原告はこの賃貸借契約の確認と、予備的主張は同契約が認められないときは、賃借権の時効取得したことに確認を求めた。
 1審は一部勝訴だったことから、双方が控訴。二審も一部土地の賃貸借を認めたが、残りの土地は賃貸借契約はないと判示。原告が上告。
 最高裁では、①賃貸借の時効取得が可能か。②可能であるならば、その判断基準は何かが問題になった。これらについて、土地賃借権の時効取得については、土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているときは、民法163条に従い土地賃借権の時効取得が可能であると判示した。
 原告は果樹園では柿、ミカン、オリーブなど多彩な果樹を栽培していた。最高裁は特に、この点などは触れていないが、1、2審の流れを読むと、このような果樹栽培が「土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているとき」と判示したのかも。
(文責・芹沢)
【結論】
以上から、BがCに甲1部分の明渡しを請求した平成27年4月20日の時点では、Cによる賃借権の行使は、10年間を経過していない。したがって、Cは甲1部分の時効取得ができず、Cの反論は認められない。
以上

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