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「免許証を見せて下さい(怒)」「君たちご苦労。私はGメンの丹波だ」Part 1


日本のテレビドラマは数あれど、海外ロケのあったドラマの中でもっとも香港の比率が高いのは間違いなく「Gメン’75」シリーズですね。
「Gメン’75」は「猛龍特警隊」のタイトルで1976年に香港で放送され、続いて台湾でも放送された人気のドラマです。オープニング&エンディングテーマも広東語・北京語歌詞で多数レコード化されています。

私はこれまで古い香港を愛でる目的のFacebookのグループ、Facebookページなど多数(数えたことがないですがおそらく100以上)参加しているのですが、「猛龍特警隊」は鉄板でウケるネタで、今に至るまで「つまらない」「嫌い」といったネガティブなコメントを見たことがありません。Facebook以外の掲示板などでも同様で、言葉もよくわからないであろう日本のサイトのリンクやYou tubeなどをよく探し出しては貼ってあります。その熱い心を強い意志で包んだ香港人たちには感心するしかありません。

香港で「猛龍特警隊」のどこがウケたのかといえば、何といっても丹波哲郎倉田保昭の存在に負うところが大きいです。

まず丹波哲郎。

「Gメン’75」出演以前に、維多利亞港ロケもあった映画「007は二度死ぬ」(1967年)に出演しており、もちろん香港でも上映されたのですが、おそらくこの作品が彼の香港における銀幕デビューと言えるでしょう。

さらに、TBSで放映されたテレビドラマ「キイハンター」(1968~73年)にも触れなければなりません。「キイハンター」は「Gメン’75」に至るまでの一連のTBSドラマの元祖的な作品であり、「龍虎群英」のタイトルで無綫電視でも放送されています。時期的には日本よりやや遅く、初回の放送は70年代に入ってからです。

野際陽子が唄うテーマソング「非情のライセンス」は、蔣上珠がドラマのテーマと同じく「龍虎群英」のタイトルで広東語版を唄っています。数年前までYou tubeにその主題歌がupされていたのですが、アカウント停止されてしまったのか見られなくなっています。誰か持っていませんかね?(他力本願)

そして倉田保昭。

倉田保昭は70年代初めに香港に渡り、数々の映画に(大概悪役ですが)出演して大いに人気を博しました。カンフー映画には目の肥えた香港人でも、倉田保昭のアクションは「本物」と認識されたからですね。しかも悪役なのにイケメンですし。
日本で出演したドラマでも「闘え!ドラゴン」(1974年)で香港ロケがありました。

「闘え!ドラゴン」の当時の放送は東京12チャンネル(現テレビ東京)で、地方ネット局放送は非常に少数にとどまったため、知名度が少々低いのは残念です。

さて、TBSでは「Gメン’75」の前番組として「バーディー大作戦」(1974~75年)があり、丹波哲郎と倉田保昭が共演しています。さらに言えば「Gメン」初期メンバーの岡本富士太、藤木 悠も出演しています。

この作品は香港でも「神鷹77」というタイトルで麗的電視(亞洲電視の前身)から放送されていたらしいのですが、これまでネットで相当調べたにもかかわらず、資料らしい資料はほとんど出てきません。題名の通り1977年の放送と思われ、「猛龍特警隊」の放送も1976年~であることから時期が一部かぶっているようです。
「猛龍特警隊」は圧倒的な視聴率を誇った無綫電視での放送でしたから、そのあたりの力関係もあって「神鷹77」の人気はいま一つだったのかもしれません。

それでも番組テーマソングはちゃんと広東語版があり、黎小田Michael Laiが唄っています。昔の香港のテレビ局はあまり期待されていないドラマだと日本のテーマ曲をそのまま流したりしますので、それなりに力は入っていたのだろうと察します。

ネットで歌詞を拾いましたので、ここはひとつテーマソングであるしまざき由理 「愛と死のパスポート」を聴きながら歌声を想像しつつお読みください(無茶振り)。

なお、歌詞の正確性については保証できません。

威風, 令捍匪心已喪, 槍杆, 來盡殺奸黨, 對那, 罪惡黑幫劇盜, 盡力掃盪
丈義, 豪俠心志壯, 一心, 憑義勇保家邦, 奮勇, 盡殺奸匪劇盜, 衝宵志揚擊昂
志向永不錯, 奮勇懾服四方, 柔腸俠骨, 熱血滿腔
威風, 令捍匪心已喪, 當急, 無滅赤膽忠肝, 奮勇, 盡殺奸匪劇盜, 憑正義保家邦

そしてGメン’75です。
冒頭に記した通り、香港ではかなりの人気ドラマでした。テーマ曲が多数カバーされていることからも、その人気のほどがうかがえます。

まずオープニングテーマ(エンディングにも少し使われましたが)である「レクィエム」に広東語カバーがありますし。

關菊英Susanna Kwan「人生路上」(1978年)

次にエンディングテーマであるしまざき由理 「面影」のカバーバージョンなんて3言語22曲もありますし。

★《広東語版》
方伊琪Cecilia Fong「愛的願望」(1976年)

石修Bill Chan「猛龍特警隊(盧國沾作詞版)」(1977年)

徐雲雄Tsui Wan hung「猛龍特警隊(盧國沾作詞版)」(1977年)

鄭中基Ronald Cheng「猛龍特警隊(盧國沾作詞版)」(2003年)

朱咪咪Mimi Choo「猛龍特警隊(盧國沾作詞版)」(2008年コンサートでのライブ録音)

※いわゆる「持ち歌」ではなくコンサートでの単発歌唱のみです。

馮偉棠James Fung「猛龍特警隊(葉紹德作詞版)」(1977年)

甄秀儀Amy Ying「望夫山上」(1977年)

陳麗斯Grace Chan「願你」(1977年)

華娃Wah Wa「願你」(1977年)

劉鳳屏Pancy Lau「願你」(1977年)

茵茵Jessica Yan Yan「夢化煙」(1977年)(マレーシア)

Gメン’75がマレーシアで放送されたという話は聞きませんが、なぜかカバーされています。この曲の入っているアルバムのタイトルは「郭炳堅 茵茵 旅港專輯」なので、香港旅行をモチーフにしたとものと思われます。

陳良忠Chan Leung Chung「銀錢女人」(1977年)(16曲目30:00から)

この作品は、言うなれば音声だけで構成される現代版オペレッタのようなものです。香港ではテレビの普及が遅かったためなのか、この手のレコードは70年代まではよく作られていました。

★《広東語版+日本語版(1番のみ)+広東語版》
汪明荃Elizabeth "Liza" Wang「猛龍特警隊(盧國沾作詞版)」(1977年)

★《広東語版+日本語版(1番のみ)》
尹光Jackson Wan「猛龍特警隊(盧國沾作詞版)」(2013年コンサートでのライブ録音)

※いわゆる「持ち歌」ではなくコンサートでの単発歌唱のみです。

★《日本語版(1、2番)+北京語版》
徐小鳳Paula Tsui「猛龍特警隊(心影)」(1976年)

この曲は香港ロケ回第294話のエンディングテーマで放送され、「おおっ!」と思いました。(でも個人的には広東語のほうがよかった…)

★《北京語版》
甄妮Jenny Tseng「猛龍特警隊(心影)」(1976年)

陳和美Chan Wo Mei「心影」(歌詞は「猛龍特警隊」と同じ)(1976年)

甄秀儀Amy Ying「誰能知道我的情」(1977年)

甄秀儀は広東語版と北京語版の両方を唄っているんですね。

江鷺Jiang Lu「面影」
※動画なし

★《日本語版》
黄愷欣Tomi Wong「面影」(1、2番)(1977年)

陳汝佳Jeffrey Chen「猛龍特警隊」(中国)
※動画なし

尹光Jackson Wan「猛龍特警隊」(1番のみ)(2008年コンサートでのライブ録音)
※動画なし、いわゆる「持ち歌」ではなくコンサートでの単発歌唱のみです。

香港ではカバーソングが一曲当たると我も我もと後に続く傾向があるとは言え、22曲も唄われているのはかなり多いです。

さらに第59~144話のエンディングテーマ、しまざき由理「追想」にも広東語カバーがありますし。

薰妮Fanny Wang「回頭望」
(1977年)

麥大成Mak Dai-Shing「與你同行」(1978年)

さらにはこんなのも。

「猛虎特警隊」

(出典:昔日香港, Facebook)
昔の無綫電視のバラエティ番組です。しかし「原是大色郎」ってパロディにしてもひどい名前ですね。

さて、Gメン’75をモチーフとした香港映画が2本あります。

1つ目は「猛龍 Dragon Squad」(2005年)。邦題は「ドラゴン・スクワッド」
この映画は「猛龍」という題名の通り、Gメン’75へのオマージュを込めて作られたのですが、リメイクとはちょっと言い難いかもしれません。とはいえ完成度は高く、丹波哲郎の評価も上々だったようです。

You tubeで全編見られます(17/07/21現在)が、リンクは自粛します…。

もう1つは日本未公開の「龍咁威2003 Dragon Loaded 2003」(2003年)。ただし警察ドラマとはいえかなりコメディタッチなので、テーマソングが広東語版「面影」というだけの全く別の映画と見るべきでしょうね。
タイトルが「龍咁威」なのは、テーマソング「猛龍特警隊」の歌詞の出だしが「龍咁威、特種警衛」だからです。

こちらもYou tubeで全編見られます(17/07/21現在)が、リンクは自粛します…。

Gメンのような警察ドラマではないのですが、「西遊·降魔篇」(2013年)(邦題「西遊記〜はじまりのはじまり〜」)も紹介しておきましょう。
監督のチャウ・シンチーがGメン’75のファンということで、挿入歌(エンディングテーマ)に「レクィエム」をそのまま使っています。さらに全く関係ないのですが、ドラマ「柔道一直線」のBGMも使われています。

やっぱりこちらもYou tubeで全編見られます(17/07/21現在)が、リンクは自粛します…。
You tubeなんでもありだな…。

「他們都是以熱誠的態度和堅強的意志為人群服務」(熱い心を強い意志で包んだ人間たち)のドラマは次回へと続く…。






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