見出し画像

台風は容赦ない!

(Cover photo : 香港地下天文台 Facebook page)

ひさびさに台風が来ましたね。
被害に遭われた方には、お見舞い申し上げます。

私が香港暮らしをしていたのは1978年から1980年までだったのですが、1979年の台風ではひどい目に遭いました。なにしろ香港は台風の通り道ですから、イヤでも付き合わなければいけません。

当時は小6で夏休みでしたから、台風が来ようが来るまいが自分には関係ないと思っていたのですが、それは大きな間違いであることに後で気付かされました。前年の1978年には記録に残るほどの台風が来なかったため、はっきり言ってナメてました。

ご承知の通りシグナル8になると交通はほぼストップしますが、家にいる私には関係ないので当初はのん気なものでした。
台風情報を見るためにテレビはつけっぱなしにしていたのですが、シグナルは8になっていました。まあ、そこまでは織り込み済みというか、予想はしていたんですが、数時間たっても風雨がまったく弱まらない。そしていつの間にかシグナルは9に上がっていました。

私の住んでいた家は雲景道で一番古いマンションでした。ベランダだけがアルミサッシで、ほかの窓はすべて鉄枠にガラス窓がはまっていてあまり密閉性のよくないタイプでした。その鉄枠の隙間から、雨が噴水のようにピューピューと吹き上がり始めたのです。

なんじゃこりゃー!(松田優作風でお願いします)

雨は壁を伝って流れ続けるのでカーペットはびしょ濡れになり、古新聞を丸めて壁とカーペットに敷きつめるのですが、間に合わないんです。
壁の結露でさえ不快なのに!
しかもその壁は土壁のようなよく分からない材質で、べろべろとはがれてくるんです。
壁にビニールクロスを貼っている部屋は大丈夫だったのですが、やはりカーペットがびしょ濡れなのは一緒です。
カーペットの端っこを踏むと、雨がじゅわっと滲み出て来ます。

風もめちゃくちゃ強く、風圧でベランダの大きなガラス窓がたわむんです。子供のころの私、ガラスというものは固くてもろいものだとずっと信じていたのですが、たわむのを見たのはこの時が初めてです。
このガラス窓が割れたらえらいことになる、と気が気ではありませんでした。

結局、ベランダのガラス窓は無事だったのですが、洗濯機などが置いてある場所の裏窓が割れました。何か飛んできてぶつかったのかもしれません。

最終的にシグナルは最強の10になっていたそうです。自分では9までの記憶しかありません。心の余裕がなくてテレビを途中で見なくなったんだと思います。

台風が去った後も湿度は高いままなので、カーペットがちゃんと乾くまでには二週間以上(いや、もっとだったかも)かかりました。はがれ落ちた壁の破片がなんとも汚らしかったです。

当時の被害はかなりのものです。ニュース動画を見つけました。

動画の中では、スターフェリー埠頭に貨物船が衝突したことが報じられています。結構激しく破壊されていますね。
当然このままでは乗船できないので、苦肉の策として乗船通路の途中にある鉄格子を外し、そこをゲートにして臨時の乗船場を造り急場をしのぎました。子供心になんだか痛々しかったのを覚えています。

ところで台風のシグナルですが、2と4~7までが欠番になっています。なぜ欠番があるのか、私にとって長い間謎でした。

実は、昔はちゃんと全ての数字が入っていたんです。

画像1

http://paper.wenweipo.com/2017/05/10/ED1705100038.htm

(出典:香港文匯報)

かつて放送のない時代は、風球というのを掲げてシグナルを出していました。もともとは船のオーナーに周知させるためのものです。今と違って水上生活者が多数暮らしていましたから、台風情報は彼らにとって重要だったのです。今でもいくつか残っている「避風塘」はそのなごりですね。

画像2

(Photo : Wikipedia, 1881 Heritage)

記念切手にもなっています。

画像3

(出典:香港特別行政區政府 新聞公報)

香港に住んでいる人なら見慣れていると思いますが、シグナル発令中に表示されるこれら三角マーク、T字マーク、十字マーク(←見たくない!)などは、この風球に由来します。強風にあおられることが前提なので、網状になっていますね。
ちなみにこの風球は、1881 Heritageに飾ってあるので今でも見られます。

なお、風球は夜は見えないので、同時に光の信号(交通信号同様、赤黄緑)の点灯も同時に行っていました。

画像4

(出典:sina新闻中心)

さて、Wikipediaによると、シグナル2と4の風球は1935年にフィリピンとの協議の末廃止した、との事なのですが、理由ははっきりと書かれていません。

シグナル2,3及びシグナル5,6,7,8は風の強さは同じで、風向きが違うだけなのであまり実用的ではなく、結局面倒なのでまとめてしまったようです。
しかし、シグナル4が消えた理由がどうしてもわかりません。

台風とともにどこかへ消し飛んでしまったんでしょうか?


※Cover photoのマグカップは、香港地下天文台のネットショップで買えます。なぜかGoogle Chromeだとうまくいかないようなので、それ以外のブラウザでアクセスしてください。↓





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?