見出し画像

香港のこわ~い昔話

こわ~い昔話といっても怪談ではありません。
日々の暮らしの中で最もこわいことといえば、犯罪や事故に巻き込まれることと病気になることです。
殊に海外ともなれば日本の常識は通じませんし、治安も日本より良いところは思いつきません。

昔の香港は同時代の日本より相当治安が悪かったのですが、私の体験と見聞した話を紹介します。

デパートがこわい

ある日の午後、母の買い物につき合わされていたときの話。
銅鑼灣のデパート、大丸か松坂屋かは忘れてしまいましたが、店内を見て回っているといつの間にか見知らぬ男の子が近くにいるんです。私より少し年下か。売り場を移動すると、その子も微妙な距離を取りながらも黙ってついて来る。たまたま近くに他にお客さんもおらず、動きがとても不自然なんです。
どうせ日本語分かんないだろうと踏んで、
「この子さっきから近くにいるよ。」
「えっ?」
「泥棒かもしれないよ。なにか狙っているんじゃないの?」
「まあ気持ち悪い」
そう言って母は半開きになっていたハンドバッグのチャックを締めなおしたのです。
案の定、その子はまたいつの間にかどこかへ消えてしまいました。

それ以前にも、同じく銅鑼灣にある中国系デパート中國國貨公司で買い物中に、いつのまにかバッグを切られて財布を取られたことがあったんです。まったく気がつかない見事な仕事っぷりでした。でも褒めちゃあいけない。

昔の香港はスリ天国でした。あまりにも日本人が被害に遭うので、日本の警察官が香港警察に情報収集に行ったのですが…

スられちゃったんです!
日本警察の面子はどうなる?

バスがこわい

バスの事故はこわいです。横転事故は何年かおきに発生していますし、2003年にはトレーラートラックと衝突して橋から転落する事故が発生しましたが、死傷者も多く香港史上最悪のバス事故と言われています。

事故車のKMB Neoplan Centroliner N4426/3 車番AP69(ナンバーJU4667)は廃車になりました。

でも、重大事故にあう確率はそんなに高いわけではありません。

もっと高確率でこわいのは、ナイフを持ったスリです(またスリですか)。
お客満載の中華巴士(新世界第一巴士の前身)に乗っていた母は、ハンドバッグをナイフで切られました。
たまたま折りたたみ傘が入っていて邪魔で切り開けなかったらしく、3cmくらいの傷でした。おかげで財布は無事でしたが、ハンドバッグは使い物にならなくなりました。その方が痛かったかも。

消防車がこわい

火事もこわいんですが、消防車がもっとこわいんです。

どこかの誰かが火事を起こしたとします。当然999に電話して消防車を呼ぶんですが、消防隊員が慌しくホースを伸ばした後がこわいんです。
手をにゅーっと伸ばして「ちょうだい」するんです。いくらか握らせないと放水してくれません。これはこわいです。
相場は判りませんけど、金の延べ棒を要求されたという話も聞いたことがあります。ホントでしょうか?

警察がこわい

ここ数年の香港は社会不安が増大し、それを抑える警察が過剰防衛でこわいと言われています。市民に親しまれる警察だったのに…と嘆く方もいらっしゃいますが、私から言わせれば警察は昔からこわい存在でした。

70年代くらいまでは警察と言えば「ワイロがないと真剣に仕事をしてくれない」役所だったのです。
下っ端の警官がこっそり小遣い稼ぎ…と思いきや(まあそれも多々ありましたが)、一番のワルはイギリスから来たキャリア組だったのですから救いようがありません。

画像1

おまわりさんこいつです でもこいつもおまわりさん
(写真はWikipediaより)

このワルの起訴をきっかけに、警察犯罪を取り締まる廉政公署ができましたし、事件をモデルにした「廉政風暴」という映画も作られました。

銀行がこわい

昔の銀行は警備員がこわいんです。

ほとんどの銀行では、ターバンを巻いたインド系と思しき警備員が入り口の脇の椅子に鎮座していて、ライフル銃を両手に抱きながら来店したお客をニラむんです。
実際はニラんでいるわけではないのかも知れませんが、あの目付きの鋭さは子供からするとこわいんです。

香港の銃刀法なんてまるで無知なのですが、あれは発砲の許可が出ていたんでしょうか?警備員が銃を構えているということは、実際に武器を持って強盗を企てる奴がいるということですから。
大体本物の銃なんてそれまで見る機会はなかったんです(日本であったらこわい)。銃を撃つシーンなんてテレビの中の絵空事と思っていたんですが、海外ではリアルにあるんだということを認識させられました。

幸い私の滞在中はドンパチのニュースは聞きませんでした。

街歩きがこわい

スリはこわいですが、警戒していればある程度被害に遭う確率は低くなります。
もっとこわいのは、空からの落下物です。
唐樓が多かった頃はクーラーの室外機が壁から大きくせり出し、常にポタポタと水滴を垂らしていました。路面の濡れているところはよけて通ったものです。
でも、水滴ぐらいなら被害と言うほどではありません。

違法増築のベランダから、誤ってものを落とす人がいました。これが植木鉢だったりすると頭に当たったらただでは済みませんが、ずっと上を向いて歩くわけにも行きません。はっきり言って運ですね、これは。
(でも自分も自宅マンション19階からミニカーを落っことしたのは内緒。)

台風の後もこわいです。暴風でボルトの緩んだサビサビの古い看板は、かろうじてくっついているだけだったりして。何かの拍子に落下するかもしれません。今は道路に突き出た看板も激減しましたね。

山歩きがこわい

一人で山歩き、これはこわいです。場所によっては強盗が出たんです。同じマンションに住んでいた日本人の知り合いで、実際に被害に遭った人がいます。

これはプロフェッショナルな強盗ではなく、「人使いの荒い工場でバイト暮らし、給料日まであと3日なのに、ついに財布の中身が$10.-しかなくなって明日からのごはんどうしよ~」、みたいな若者が安易にやっちゃうんです。
相場はきっちり$100.-。刃物を出して「赤いの、赤いの」と要求されますが、断ると出血大サービスすることになります。
$100.-さえ受け取れば強盗はダッシュで消えますから、まず捕まりません。警察に届けても調書を取って終わり、です。

強盗もこわいですが、アフリカマイマイもこわいです。
道路脇の側溝などに、エスカルゴみたいな大きなカタツムリがくっついていることがあります。

画像2

(写真はWikipediaより)

こやつは広東住血線虫という寄生虫の中間宿主なので、絶対に触ってはいけません。広東住血線虫は口か傷から体に入って神経に移動するのですが、最悪の場合は死にます。
口か傷に入れさえしなければ良いので、触ってしまったら可及的速やかに流水で洗うのが一番です。
子供は危ないですね。すぐに口に手をやったりするので。

ちなみに沖縄で過去に食用として導入された経緯がありますが、ヌメリをとる下処理が大変らしく今では食べる人はまずいません。
悪食の香港人でもアフリカマイマイを食べる習慣はありませんが、台湾では食べる人がいるそうです。

九龍城寨がこわい

というのはウソです。もっとも当時は本当にこわかったんですが、実際にはそれほどでもありません。
興味のある方は以前の記事をお読みください。

あ~こわかった。無事に日本に帰れてよかった。

とかなんとか言ってもまた香港に行くんです。
今は格段に治安が良くなりましたね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?