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「幸せではないが、もういい」

 ペーター・ハントケの「幸せではないが、もういい」を読んだ。
 最初どうにも読みにくくて苦戦したのだが、電車に50分ほど乗る用事があり、その時に思い切って読むことにした。
 途中からなんとか読み進めることができるようになり、最後まで読み通せて、ちょっとホッとした。

 タイトルに心惹かれて借りてみたのですが、内容は、ハントケが自殺した自分の母のことを書いた本で、延々と1人の女性(母)の話だ。
 最後まで読むと、このタイトルの妙に気づくことができる。
 原書のタイトルはまた違ったものだが、同じようなレトリックのタイトルのようだ。この辺りは最後に解説を読むと丁寧に書いてあって面白い。

 母の若い頃から亡くなるまでの生活が淡々と(とはいえ読みにくく)描かれている。それが最後に向けてじわじわと苦しいものになっていくのが苦しい。母の最後もリアルに思えた。最後はきっとそう言う些細なことだと思う。

最後の解説も「望み」について丁寧に書かれていて、この解説は読むのがおすすめ。難解なこの本のことについて少し知ることができる。

 どうにもなかなか感想を書くのが難しい。何者でもない人生を送り、最後に主体的に判断した事が自死というのは、あまりにもつらいところだ。
 余裕のある時に読むとまた違った感じがするのかもしれない。読むタイミングを少し選ぶ本かもしれない。

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