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アナログ・レコードが好きな理由

今更ですがアナログ・レコードがブームですね。欧米ではレコードの売り上げがCDを超えたなんていうニュースも良く見かけました。

僕も、ここ数年、CDはほぼ買わず、レコードばかり中古、新譜問わずネットや店舗で日々漁っていて、日に日に部屋がレコードで埋まっていっておりこのままだと自分の部屋なのかレコード倉庫なのか分からなくあるかもしれません。

ブームの理由は音楽がデータになってしまい手元に物として置いておきたいから、サブスクで簡単に音楽が聞けるようになってしまったので,逆に手間をかけてレコードで聴くと特別な感じがする。というような事が説明されていますが、僕の場合は単純に音が良い(というか聞いていてしっくりくる)と感じるからです。

当時82年レコード会社入社試験の最終の社長面接で「これからCDという物が発売されるのだけれど、君たちはどう思うか?」と聞かれて、僕の前の人は「でも大きなジャケット出ないと持ってる気がしないと先輩とも話しました」と発言したんですね。僕はしめしめと思って「これからはCDの時代になると思います!」言いました。そして、その彼は落ち僕は無事に入社できたわけです。

でもCDの音には騙されましたね。当時はトレース音がしない、ホコリでの音飛びがしない。それだけで感動して、音が悪いとは思っていませんでした。持っているアナログを売りCDを買うというような今思えば愚の極みという事も行いました。

当時マスタリングもデジタルにトランスファーするだけでした。あるミックス・ダウンの作業で結構有名なエンジニアから最初からデジタルの当時、弁当箱と言われたテープにCDマスター直接、落とした方が手間が省けると言われました。今思うと信じられない雑な作業ですね。エンジニアでもミュージシャンでも音の悪さを指摘する人はおらず、こういう物だと思って作業をしていました。

メディアでもCDは音がイマイチなのではないかという発言は見た事はありませんでした。

音の悪さが気にならなかったのは80年代は旧譜を聴き直すという文化は今よりなく、常に新しい音と音楽を探していました。さらにサンプラー、デジタル・エフェクターなど機材の進化が著しく、日々、新しい音が生まれていた時代なので、そもそもが、そういう音なんだと思い込んでいたという気がします。

90年代に入って過去の名盤のCD再発がされるようになってきましたが、当時アナログ・プレイヤーは日本では驚くほど早く駆逐されてしまい、同じソフトをアナログとCDで聴き比べる事など酔狂な事はしなかったので、気づかなかったのと「CDの方が音が良いに決まっている」と洗脳されていたとも思います。

僕もレコード・プレイヤーを片付けた事はないのですが、1年に1回も使わないなんて事もあったと思います。

レコードの魅力を再発見したのは、キャプテン・ビヨンドというバンドがあります。ディープ・パープルとアイアン・バタフライのメンバーが結成した当時、スーパー・グループと呼ばれました。中学生の時にこのバンドの72年に発売されたファースト・アルバムがなぜかディープ・パープル、レッド・ツェッペリンといったビッグ・グループより好きで悶絶しながら聞いてました。(僕の偏愛ぶりは下記のブログをご覧ください)

https://blog.goo.ne.jp/peaceboat1/e/9097ec08e0fc0bc31d26305e3bd79210

CDで再発されたので久しぶりに聞いてみたのですが「まぁ、こんなもんか、年取れば音楽の趣味も変わるし、俺も若かったし」という感想でした。さらにリマスター盤も出て、これも聞いたのですが「音よくなってるなぁ」というくらいの印象でした。

2013年にアナログで再発されていたので、どんなもんだろうと久しぶりにレコードを買いました。そして、これを聞いたら、なんと中学生の時に、このアルバムを聴いていた感覚が蘇ったんです!

それから色々レコードで買い直して聴いてみたら「レコードの方が全然良い」という事に気がついたんです。感覚的にいうと目の前で演奏、歌唱をしてくれているように感じるという事かもしれません。

レコード店に行ってお目当のレコードを探す楽しみも蘇りました。レコードの魅力はオーディオ機器を揃えると音が良くなるという楽しみもあります。

さすがにマイ電柱を建てたいというほどではありませんが、僕もレコード・プレイヤーを買い換え、スピーカーをオーディオ・ショップに行って色々比べ倒し店員に聞き倒して選んだり、5,1chのマルチ・アンプだったのですが、5,1chといっても映画を大きな音で見たりする訳ではなければ、あまり意味がないという事に気がつき、真空管アンプに買い換えました。アンプの真空管を変えたら音が変わったのも面白かったです。レコード針も奥が深いです。

テクノロジーが過去に遡登って、「こっちの方が良いじゃん」というのは滅多におきていないと思います(映画をフィルムでしか撮らないというクリストファー・ノーランみたいな監督はいますが)CDもサブスクも発明されず、1981年でオーディオのテクノロジーの進化が全てストップしたらどうなったのだろうと妄想しています。

閉話休題

CDの音の悪さに気づき、多分世界で最初にリマスターという概念を思いついたファーストマンであるのは大瀧詠一さんかと思います。日本で一番最初のCDはその「ロング・バケーション」なのですが、CDのサンプルが出来て大瀧さんは聴いて「レベルが低すぎる」と言われ、ディレクターがやり直したら「レベルが高すぎる」とやり直し、その中間で一応、OKが出たそうです。なのでロンバケの最初のCD(35-DH-1)は音が違うものが3種類、品番は同じで存在するそうです。さすが音楽マエストロです。









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