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【徹底検証】「横浜を出る喜び」を検証する

 今日10月18日(現地時間17日)、タンパベイ・レイズがアストロズとの試合を制して2度目のリーグ優勝を決めた。今年レイズに入った筒香嘉智はポストシーズンでなかなか出番に恵まれず、この優勝決定戦でも出場はならなかったが、ベイスターズで果たせなかったリーグ優勝を経験できたということになる。
 去年まで筒香のバットに祈り続け、メジャー挑戦を表明した時に心の底からエールを送った身としては、彼の夢が1つ叶ったということが嬉しい。

 が、その一方で思うのである。「また横浜から出た選手が優勝した……」と。

 思い出すのは2017年、下克上を果たして出場した日本シリーズ。ソフトバンクに3連敗を喫してからのハマスタ2連勝で巻き返し、福岡に取って返してさあ逆転だ!というところで王者に屈したあの時だ。目を閉じれば、内川聖一のトドメの一撃のシーンが今でもよみがえる。日本一はやはり遠かった。

 いやいや、ソフトバンクの工藤公康監督も内川も、かつては横浜戦士。彼らが大喜びしているんだから、これは実質 \横浜優勝/ なのではないか!?
 そんな思いでいた時にも、ふと思った。内川、山口俊、村田修一、吉村裕基、藤田一也……各々事情は異なれど、横浜から出て行った選手たちはみんな新天地で優勝していないか?
 やばい、これじゃあ「横浜を出る喜び」なんて言われても何も言えなくなる……。いったい、今までどれほどの人がこの「横浜を出る喜び」を味わったのだろう。
 何人の選手が横浜を去り、そのうちの何人が優勝したのか。今回はそれを検証してみた。

(データは2019年シーズン終了時点でのものを参考にしている)

この10年間で、49人。そのうち22人が喜んでいる

 さすがに70年間の統計を取るなど私1人の力では到底無理なので、今回は2009~2018年の10年間のうちに横浜から何らかの理由で移籍した選手に絞ってまとめてみる。『ホエールズ&ベイスターズ 70年の航跡』(ベースボールマガジン社、2019)(と、Wikipedia)を参考にこの10年間で横浜から移籍した選手をまとめた。それが以下の表だ。

横浜を出る喜びリスト

 FA、人的補償、トレード、戦力外や自由契約など一切まとめて横浜からNPBのいずれかの球団に移籍した選手の総数は49人。なお、NPBに限ったため独立リーグや海外への移籍は考慮しない。横浜以降の球歴も、独立リーグや海外を挟んでNPB復帰を果たした選手のものもNPBの球団名のみを記した。育成契約もリストには含まれている。
 その中でも、名前が黄緑色に塗られた選手が、横浜から移籍した先の球団でリーグ優勝か日本一を経験している。その数22人。実に44%以上の選手が「横浜を出る喜び」を感じているということが炙り出されてしまった…………。この数字が多いのか少ないのか、他球団のデータがないためよくわからないが、それでもなんだかなぁ。
 なお、今回は少々強引かもしれないが「在籍している間にその球団が優勝したら優勝経験している」とみなすことにした。そのため、例えば那須野や大西宏明など、優勝した年に一軍出場していない選手も含まれている。また、北方悠誠などは移籍とはいえ育成契約だった。

 とはいえ、こんなに優勝しているのかあ……。ウチは他球団の優勝戦士育成所じゃあないんだぞ!

やはりかつての戦略はおかしかった?

 リストをもう少し詳しく見てみると、優勝時にもレギュラーレベルの活躍をしていたのは内川、村田、山口などやはりFA組が目立つ。そもそも権利を取得できるほど長く一軍にいて、なおかつ自信があるから宣言しているのだろうしこれは当然といえば当然か。
 それ以上に目を引くのは、石井裕也、寺原隼人、藤田一也などのトレード組だ。なんでこんなにバリバリ活躍している選手が横浜に長居できなかったのだろう……。佐伯貴弘に至っては、彼がいなくなったことにより「生え抜きで優勝の立役者」という概念がこの年から三浦大輔のみになってしまっている。
 2010年に手放した選手の半分以上が優勝していることといい、やはりかつての横浜には編成や戦略に問題があったのではないだろうか……。

 ちなみに、多村仁志の名前が黄緑色に塗られていないのは中日移籍後に優勝していないからだが、彼もソフトバンクで優勝を経験している(移籍は2006年オフ、寺原とのトレード)。ベイスターズ、ソフトバンク、そしてWBCと優勝に愛されまくった人生であった。

 そして2020年、筒香がア・リーグ優勝を果たしたことにより、また1人横浜(出身)の優勝経験者が増えたことになる。前述のデータに加味すると、50人中23人の優勝で、優勝率は46%になる。

 もっとも、悲しいことばかりではない。横浜で満足できなかった選手たちが他チームに求められ、新天地で優勝を経験できているということは選手にとってもプロ野球全体にとって良いことでもある
 もう1つポジティブなことを言えば、最近は横浜から放出される選手の母数が少なくなっていることだ。やはりフロントもチームの環境も変わったのが大きかったのだろう。

 横浜以外のファンの皆さま、今後もしウチから移籍する選手が出たらぜひ温かい声援をお願いします。もしかしたら、その選手があなたの推しチームの優勝請負人になってくれるかもしれません。

 あと筒香にはこのまま世界一まで突っ走ってもらいたい。ワールドシリーズで豪快なアーチをかけること、期待しているぞ!

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