『るろうに剣心 ─明治剣客浪漫譚─』 巻之一 感想
概要
著者:和月 伸宏
初版発行:1994年
デジタル版発行:2012年
発行所:集英社
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発行者による作品情報
感想
主人公が所謂"不殺主義"を貫く作品としてはおそらく最も有名な本作。
後々の平和を築くためとはいえ、「人斬り抜刀斎」として剣を振るい、多くの者を手に掛けた剣心だからこそ、重みが出る上記の台詞です。
前半部分で「人斬り抜刀斎」として見てきた"真実"を端的に語り、活人剣が"今現在は"浮ついた理想論でしかないということを突き付ける。そのうえで、後半部分で「緋村剣心」としての"理想"はむしろ活人剣側にあり、それを叶えていきたいという想いを明かす。さらにその後の破落戸(ごろつき)や比留間伍兵衛との大立ち回りで「人斬り抜刀斎」としての圧倒的実力と「緋村剣心」としての不殺主義が本物であることを見せつける。物語開始時点で既に実力と暗い過去を有するタイプの主人公としては、上々の幕開けだと思います。
その後も、立て続けにトラブルに巻き込まれる剣心。その都度圧倒的な強さで降りかかる火の粉を払う剣心。その中でも一番グッときたのは第四幕「活心流・再始動」。騒動が片付いた後で、責任を感じて落ち込む神谷薫に剣心が言葉を掛けます。
上記の台詞を実感する場面(特に前者)は、実生活でも多いです。されど、誠心誠意頑張って生きていれば、それは決して無駄にはならない。剣心自身そう感じた経験は少なくない(ある意味では第二幕「流浪人・街へ行く」で目にした剣客警官隊の専横ぶりもそれかもしれない)んだろうなというのが伺えます。
それまで反抗的だった明神弥彦が、騒動の中で彼女の活人剣にかける想いや責任感の強さを感じ取り、門下生になることを決めたことも含め、剣心の"理想"へ小さいながらも一歩ずつ進んでいるんだなと感じました。
ちなみに、本作でよく出てくる「流浪人(るろうに)」という単語は作中オリジナルの造語だそうです。ごく自然に使われているので、明治時代にはそういう言葉があるものだとばかり思っていました。
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