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『どうする家康』 第44回「徳川幕府誕生」 感想


概要

放送局:NHK 総合テレビ、NHK BSプレミアム、NHK BS4K
放送日時:2023年11月19日(日曜日) 18時00分~18時45分(BSP、BS4K)
     2023年11月19日(日曜日) 20時00分~20時45分(総合)

脚本:古沢 良太
音楽:稲本 響
語り:寺島 しのぶ

番組公式サイト リンク

感想

"戦なき世"へ、大きな一歩を。

 関ヶ原の戦いで勝利を収め、東軍諸大名への論功や西軍諸大名への処罰と、"戦なき世"を創り治めるための体制(=江戸幕府)を組み立てる、いうなれば"戦後処理"に勤しむ家康。その中でも、上田城攻めに手こずった挙句関ヶ原にはたどり着けなかった息子・徳川秀忠(演:森崎ウィン)に対する態度は終始厳しいもの。そこには「少しでも処遇を甘くしたら陰口をたたかれるのでは…」という世間体もあるにはあるのですが、それ以上に「自分の創る"戦なき世"を継ぐのだから、それ相応にしっかりしてほしい」という親心が強く感じられました。
 とはいえ、公開説教というのはいかがなものかと。時代が時代だからという部分もありますが、この時の家康は「相手の気持ちや立場に立って物事を考える」「褒めるときは皆の前で、叱るときは一対一で」という基本を失念しているように見えます。この時の秀忠は桶狭間の戦いに赴いたときの家康(当時 元康)とさほど変わらぬ若輩者(永禄3年(1560年)の家康は18歳、慶長5年(1600)年の秀忠は21歳)で、さらにいえば関ヶ原の戦いは秀忠にとって初陣。叱るべきところはきちんと叱るべきなのですが、同時に自分の初陣の経験やその時感じた不安なども踏まえてアドバイスやフォローをしても良かったのではないでしょうか。「"親"と"子"」ではなく「"創る者"と"継ぐ者"」として。
 それでも昔なじみの家臣から「自分が秀忠くらいの時はどうだったか」を踏まえるよう釘を刺されたら素直に考え直すあたり、さすが家康ではあるのですが。

 一方、その家康昔なじみの家臣である忠勝(と康政)にとって大事件が。ある日、忠勝が槍の手入れをしている最中に左手にかすり傷を負います。なんと忠勝はこれがもとで引退宣言。本多忠勝を語るうえで外せない名エピソードですが、これにはビックリ…しつつも、考えれば考えるほど納得できる自分がいます。武器は基本的に「戦場で敵を殺し、そうすることで同時に自分の身を守るために使うもの」。その武器の手入れは刃こぼれ一つ、綻び一つ見落とすだけでも戦場での生存率は違ってくる(そしてその差は恐らく、達人であればあるほど大きい)ため、(戦場と同等以上の)極めて高い集中力を要する。その手入れで手元が狂って傷を負ってしまうということは、武器を扱う"腕"はもちろん、それを維持するための集中力が衰えたということ。
 「"武術"が一番の取り柄」である忠勝にとってその"武術"が衰えたというのは"引き際"を意味します。とはいえ、忠勝がすんなり引退できるというのは、それだけ"戦なき世"が近づいたという証。何しろ周りが戦だらけだったら、忠勝レベルの強者は否応なしに戦場に引きずり出されますからね。
 こうして、若き日から家康を支えた"徳川四天王"はまた一人表舞台から去ったのでした。

 さて、次回以降は恐らく"大坂の陣"。家康にとって最後の戦いとなります。果たして家康を取り巻く因縁はどのように幕を引くのか。最後まで楽しみです。

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