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『王様戦隊キングオージャー』 第44話「王の証!真の六王国同盟」 感想


概要

放送局:テレビ朝日系列
放送日時:2024年1月14日(日曜日) 9時30分~10時00分

脚本:高野 水登
監督:茶谷 和行
アクション監督:渡辺 淳
特撮監督:佛田 洋 (特撮研究所)

番組公式サイト リンク

感想

ラクレス、何やってんだお前。

 冒頭、なぜか昔ながらなロボットのコスプレをして雑用(歯車の仕分け)をするラクレス。「王様戦隊の道具となって」ってそういうこと…なわけがない。完全にヤンマの私怨、行間もクソもない私怨です。確かにラクレスは(宇蟲王を欺くためとはいえ)ヤンマ、ひいてはンコソパに対して結構なことをしたけれど…。「さ、さすがにここまでさせられる謂れはないよ!?」と突っぱねてもいいレベル。まあ、その辺の負い目とか罪滅ぼしとかもあるのでしょう。どこまでも誠実なラクレスです。

 そんなラクレスの口から"王の証"について聞かされた王様戦隊。それがあればダグデドを倒す悲願が叶う…一方で、そのレベルの力ともなれば当然、使い方一つでかなり危うい。「王が一つとなる時、宇宙を貫く力となる」の言い伝えに則り、(主にハスティー兄弟が)なんとか一致団結を画策する…ものの上手くいくわけがない。
 結局、いつも通り最終勝者の総取り形式で"簡易決闘裁判"(ピコピコハンマー合戦)をすることに。ここまで「案の定である」と「どうしてそうなった!?」が同時に来る展開は、前作『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』でも中々見なかったレベル。そして事態はプロレスからのガチ決闘裁判に。そして"王の証"を解析したヤンマはさらなる暴走さすがにこれはドンブラでも見ない。これを本心からでやっているなら、さすがに呆れるレベルです。

 …そう、"本心から"なら。
 街に落ちたギラが見たのは、まるで誰かに"洗脳"されているかのように、王様たち同様殴り合う民。勘のいい方ならわかると思いますが、全てはヒルビルの仕業。復活したダグデドの八つ当たりによってパワーアップした彼女は、囁かずとも広範囲を同時に洗脳させられるように。サラッと描写していますが、かなり厄介な強化です。何しろ「対象の耳元で囁かなくてはいけない」という弱点こそ、洗脳が効かないギラ、カグラギ以外が彼女と渡り合うためのポイント。それがなくなったということは、気づかないうちに"詰み"になっている危険性がある、ということは今回が証明しています。むしろ元々効かない相手には効かないままで良かったとすら感じるレベルです。
 カグラギがヒルビルを足止めしている間に、ヤンマの洗脳を解こうとするギラ。渾身のパンチと「痛いだろ!?僕だって痛い!これが力だ!!」「ヤンマは王様だろ!だったら民を守るためにしか力を使っちゃダメだ!!」という説得によって洗脳解除。あのヤンマですらこうなる…という描写によって"洗脳"の恐ろしさ、「力に溺れる」ことの恐ろしさを描いたのはわかりますが、この時のヤンマはさすがに引くレベルの厨二っぷり。まあ、だからこそ解除されて「今のは効いたぜ…」と言った彼のかっこよさが際立つんですけれどね。
 "王の証"を解析したことによって強化されたキングオージャー。自己暗示によって巨大化(と言っても、一般怪人のそれと同程度の巨大化ですが)したヒルビル相手に完封勝利。"王の証"の力を受けたキングオージャーからすれば初陣、ヤンマからすれば因縁深い相手へのリベンジマッチは、見事な勝利で幕を閉じました…とさ。ここに関しては結構かっこいい。(玩具販促という視点ではアレですが)巨大ロボを要所のみで出し、きちんと見せ場を作る本作の作風がベストマッチした回だと思いました。

 …とまあ、(ヒルビルのせいで)色々とカオスなことになった今回ですが、戦いの後のヤンマとラクレスの会話は見物。「"正義感"は"罪悪感"を塗りつぶし、簡単に"人"を"化け物"に変える」「だから"権力"は"最悪"なんだ」という台詞は、ラクレスだからこそ言葉に"説得力"が出るものだと思います。特に前者については、「(『ダグデドの支配から宇宙を解放する』という正義感によって、『民が犠牲になった』という罪悪感を)塗りつぶさざるを得なかった」立場、言い換えれば「自分ごとにもかかわらず、塗りつぶされる様を客観視できた」からこそ、"後輩"にはそうならないよう諭せたし、ヤンマ自身も頭を冷やした後でそんな自分を客観視できて、"反面教師"にできたんだなと感じました。今回の件でヤンマとラクレスの間には"奇妙な絆"が生まれたと思っています。お互い浅からぬ因縁と罪悪感のせいでその辺素直になれないでしょうが…。
 そしてラクレスの真の狙いは、「自分の言葉を素直に聞かないことを逆手にとって、六王国同盟を締結させること」。まるで問題児だらけの部活を指導する顧問です。その立ち回りやあくまで影に徹する姿勢に感心すると同時に、「今でも、ラクレスにとってギラたちは"手のかかる(でもそれ以上に愛しい)子たち"なんだな」ってちょっと感動してウルッときました。

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