『ブラックペアン シーズン2』 第1話「神に愛された悪魔」 感想
概要
放送局:TBS系列
放送日時:2024年7月7日(日曜日) 21時00分~22時19分
原作:海堂 尊『ブレイズメス1990』『スリジエセンター1991』(講談社文庫)
脚本:槌谷 健
音楽:木村 秀彬
主題歌:小田 和正「その先にあるもの」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
監修:山岸 俊介(イムス東京葛飾総合病院)
プロデュース:伊與田 英徳、武藤 淳、佐久間 晃嗣
演出:西浦 正記
製作著作:TBS
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感想
前作『ブラックペアン』から6年。かつて研修医だった世良雅志(演:竹内涼真)も今では心臓血管外科医。そんな中、東城大学附属病院の病院長となった佐伯清剛先生(演:内野聖陽)から世良先生に「この封筒を天城雪彦という医者に届けてほしい」とオーストラリアで開かれる学会への"お使い"を頼まれて…。というのが本作の幕開けです。
学会で発表を行う垣谷雄次先生(演:内村遥)とオーストラリアに向かった矢先、サーフィンで溺れた少年を手当てする二人。「何か(生物)に刺されたアナフィラキシーショック」という二人の見立ては外れましたが、ふらりと現れた銀髪の男の指摘により"心タンポ"と気づき、無事救命。「判断材料になりそうなものを見つけた途端、"憶測"から"決めつけ"に変えてしまう」という人間の早計さを感じるとともに、銀髪の男が外科医として卓越した技術と精神力を持っていることがワンシーンで伺えます。流石日曜劇場。
完全に余談ですが、垣谷先生が少年に行おうとした「ボールペンを首に突き刺し、気道を確保する」という応急処置法を見た瞬間、「『ジョジョの奇妙な冒険』でやってたやつだ~!!」と進○ゼミのPR漫画みたいなことを思ってしまいました(笑)
※"心タンポナーデ"についての記述はこちら👇
結局、学会に天城先生は現れず、そのままオーストラリアに滞在することになった世良先生と垣谷先生。心臓外科センターや競馬場を探し回ってようやく見つけた天城雪彦先生(演:二宮和也(嵐))は、なんと先日ビーチで的確な診断をした銀髪の男で、前作『ブラックペアン』で世良先生の指導医だった渡海征司郎先生(演:二宮和也(嵐))と瓜二つ同じ人が演じているから当然だけど。
その天城先生がパク・ソヒョン(演:チェ・ジウ)の治療にあたって持ちかけたのは、なんとギャンブル(ルーレット)。曰く「僕の手術を受けるにあたって、それを乗り越えられるだけの"運"が必要」とのこと。前作の渡海先生(手術を失敗しそうな医者に対して「1千万円で揉み消してやる」と持ちかける)しかり、無茶苦茶です。ソヒョンさんの息子で研修医のパク・ミンジェ(演:キム・ムジュン)も「お母さんを治してくれるなら、その人は"いい医者"です」と言っていた通り、患者からすれば病気を治してくれるのが「"いい医者"として唯一絶対の資質」で、そういう意味では卓越した技術と精神力を持つ天城先生は(渡海先生も)間違いなく"いい医者"です。とはいえ、手術を受けるか否かを運否天賦のギャンブルで決めるというのは、少なくとも「医は仁術なり」という価値観を受けて育った僕としては受け入れがたいもの。世良先生が激高するのもうなずけます。
しかし、天城先生からすればそういう考え方こそ「医学が進歩しない根幹」。「オペは芸術」と語る彼からすれば、医療を「金には換えられない」だの「努力と研鑽の結晶」だのと考えているうちは、どの医者も「自分のレベルには一生辿り着けない」。「才能」「天才だから」という言葉で片付けるのは嫌いですが、こればっかりは「天才の言うことだな」と思ってしまいました。同時に「この人もまた、"医術"に対して誠実な人だな」と感じるものがありました。それが言葉ゆえのものなのか、二ノの演技ゆえのものなのかはまだ測りかねますが。
世良先生は「海堂先生の中にある『医者としての理想』」、天城先生は「海堂先生の中にある『医者に降りかかる現実』」を投影した存在なのかな、と感じました(原作とドラマの内容に齟齬がなければの話ですが)。
結果的に、ソヒョンさんは再挑戦で勝利し(天城先生曰く「彼女の"執念"こそが一度自分を見捨てた神を振り向かすことができた」とのこと)、無事天城先生の手術を受けられました。(「心臓しか扱わない」という"ワガママ"こそあれど、)その手術の腕前はまさに"芸術的"。素人目に見ても「美しい手さばき」と表現したくなるもので、世良先生が「これほど"美しい手術"は見たことがなかった」と思うのもごもっともです。
かくして、佐伯先生の"スカウト"通り東城大の桜宮心臓外科センターのセンター長に着任することを決めた天城先生。彼が東城大にもたらすのは"福音"か"厄災"か、この先も見逃せません。
「病院内に閉じこもり、他者に心を閉ざしたような態度の渡海先生(黒髪)」と「競馬場やカジノに出かけ、他者と気安く会話をする天城先生(銀髪)」で(髪の色を含めた)第一印象は180°真逆ですが、「相手に常軌を逸した要求をするが、手術は絶対に失敗しない」「心の中で"他の医者"と"自分"の間に"壁"を設けていそうな言動」「その一方で、"医療"という行為に対してはあくまで誠実」という点は両者共通。この共通点が意味するところとは一体何なのか…?個人的には「何らかの事情で渡海が天城を名乗り、身を隠している」という真相を予想していますが、いずれにせよこの要素の意味が楽しみです。
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