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『どうする家康』 第29回「伊賀を越えろ!」 感想

概要

放送局:NHK 総合テレビ、NHK BSプレミアム、NHK BS4K
放送日時:2023年7月30日(日曜日) 18時00分~18時45分(BSP、BS4K)
     2023年7月30日(日曜日) 20時00分~20時45分(総合)

脚本:古沢 良太
音楽:稲本 響
語り:寺島 しのぶ

番組公式サイト リンク

感想

 本能寺の変で織田信長が討たれた後、明智光秀に追われる身となった家康。今回は彼にとって人生最大級の危機である"伊賀越え"が描かれています。

 細かい言動からも、家康が「他者に容易く本心を見せなくなった」「人を疑う心を強めた」点がわかります。"逃亡者"という立場がそうさせている面もなくはない…ですが、我々がよく知る"タヌキ親父・徳川家康"のイメージに近づいてきてワクワクするやら少し寂しいやら、悲喜交々です。そもそも今までが「立場の割に危機感が薄い」とも言えるのですが…。
 ただ、それでいて「自分が伊賀を生きて出られるか否かは"己の徳"次第」と語るなど"王道思想"は変わっていないということが伺えるのは安心材料。そこだけでも「そのままの君でいて」と切に願うばかりです。

 描写というか映像技法というか、今回は本作特有の"少年漫画感"が盛り込まれていたように感じました。伊賀を走る一行を上下逆さ(+モノクロ)にすることで「伊賀者に見張られている」感じを出すのとか、本多正信のブラフとかそれに乗じた家康の駆け引きとか。
 …そうです。本多正信(演:松山ケンイチ)の再登場です。最初は伊賀者に与する山伏としての登場。家康への恨み言を一通り述べたうえで彼の首を光秀に献上するよう焚き付けます(ここで「え!?家康これで終わり!?」とメタ事情も忘れてハラハラした人は仲間です)が、そこからが彼の独擅場。「信長は生きているかもしれない」「もし信長が生きていたら、(家康を殺した場合)今度こそ伊賀は滅ぼされる」とハッタリをかまして、百地の刀を握る手を躊躇わせます。論拠として述べた「光秀は信長の首を取っていない」「『もし信長が生きていたら』に備えて各大名は様子見中」は本当なのが性悪。根っからのイカサマ師としか言いようがありません。
 家康もまたこれに便乗。「自分こそ光秀を討ち、天下を取る男」「自分に味方すれば厚遇する」と(彼の中では本気で)語り、危機を脱するのでした。
"恩義"では動かない伊賀者に対しては"損得"をちらつかせて動かす。家康の"タヌキ親父"ポイントです。

 そうして伊賀国を越え、無事岡崎まで帰ってきた一行。なお、伊賀越えで別行動をとっていた酒井忠次、石川数正らは特に大きなトラブルもなかった模様。甲賀者の親切は罠ではなく純然たる親切だったようです。そんな日もある。あんな「罠でーすwww」みたいな空気を出していた甲賀者にも非はあるんじゃないですかね。
 その傍ら、穴山梅雪(演:田辺誠一)が身代わりとして明智勢に討たれていたことが判明。家康はまたしても「生かされた」のでした。それを知った直後「明智を討つ」と決意した家康の眼には「自分の為に散っていった者たちの為にも、必ず天下を取る」という焔が灯っているように見えました。

 一方、信長の敵は豊臣秀吉が取ってしまいました。光秀の首を差し出された時の秀吉、「今までで一番いい顔じゃないですか」って。怖い。どす黒すぎる。ムロツヨシさんがこんな漆黒の闇みたいな演技をするなんて、この眼で見たうえで信じられないです。

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