『どうする家康』 第35回「欲望の怪物」 感想
概要
放送局:NHK 総合テレビ、NHK BSプレミアム、NHK BS4K
放送日時:2023年9月17日(日曜日) 18時00分~18時45分(BSP、BS4K)
2023年9月17日(日曜日) 20時00分~20時45分(総合)
脚本:古沢 良太
音楽:稲本 響
語り:寺島 しのぶ
番組公式サイト リンク
感想
さすが"猿"と呼ばれた男
秀吉がかつて弟・秀長に言っていたという「人は"下に見た相手"に本性を顕す」という言葉。月並みな言葉ではありますが、つくづく人間の真理をついた言葉であると思いました。前々から「この秀吉は『内心、他者を信用していない』『最終的な勝者が自分でなければ気が済まない』という点では織田信長と一緒だな」と思っていましたが、今回で自身から確信に変わりました。
そしてその"本性"を見るための猿芝居。表向きは見ているこっちが痛々しくなるくらいひょうきんで軽薄な言動ですが、個人的には「9の嘘に1の本心を混ぜている」と感じました。徳川方との豪勢な宴で見せた"秀吉節"がまさにそれ(もっとも、家康が返した言葉もそんなものですが)。「今はもう敵ではないから仲良くしよう」というのは心にもないでしょう。しかし、「酒井も、本多も、鳥居も、みんなみんな儂の家臣じゃーwww」という言葉はある意味で彼の本心。全てを自分のものにしないと気が済まない。まさに"欲望の怪物"です。
そしてその猿芝居はどうやら血継限界親譲りの模様。秀吉の母であり、三河に人質として送られた大政所・仲(演:高畑淳子)。井伊直政に一目惚れしてからの彼女もまた、痛い露骨な猛アタックを仕掛けていました。その一方、家族間でも互いに恐怖心を抱くほどの深い闇が豊臣家にはありました。特に秀吉に対して。仲は「あれは私の息子なのか?」「私はとんでもない怪物を生んだのかもしれない」と母親であるにもかかわらず怯える始末。まさに「権力は人を変える」の典型例…でしょう。
そして家康は、大坂で"豊臣一の切れ者"石田三成と出会いました。その人となりは知的でいて気さく。自分史上トップクラスに好感度の高い三成になりそうです。『真田丸』のオフ会ゼロ人とは大違い。
家康と星座について楽し気に語り合い、南蛮から仕入れた知識をもとに「古い価値観に縛られていてはいけない」という価値観で意気投合した両者。とても後に天下分け目の大戦で戦うとは思えませんでした。…というか、第一印象をここまでバツグンにしたのが、大河ドラマの十八番である"曇らせ展開"の布石にしか見えない…です。
一方、秀吉から任された「真田家との交渉」は大苦戦。真田昌幸(演:佐藤浩市)から「『人のものを勝手に第三者にあげる』というのは横暴」「あまり"関白殿下"の名を借りてばかりだと小物めいて見える」などぐうの音も出ない正論を浴びせられる始末です。…実際、関白(秀吉)の命だとしても「真田の所領を北条に渡せ」というのは横暴にも程がありますからね。
挙句の果てに、「領地は渡すが、代わりに徳川重臣の娘を嫁によこせ」という要求までされてしまいました。言うまでもないですが、ていのいい人質です。本多忠勝の娘で、今回やたらクローズアップされていた稲(演:鳴海唯)に白羽の矢が立つ予感がプンプンしますが…その辺りはのちほど。
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