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節分と逸脱

私は日々、目立たず、慎ましやかな人生を送っている。

昼間は与えられた仕事を無難にこなし、夜は子どもたち(6歳娘、4歳息子)の世話を見る。

そんな普通な人生を私は送っている。私は普通が好きだし、普通を維持することは普通に難しいことだと思っているので、それだけで満足している部分はある。

しかしどこかで突き抜けたいという気持ちをもっているということも事実である。

ちょっと世代からずれるが夜の校舎窓ガラス壊してまわりたい気分になることがあるのだ。
盗んだバイクで走りだしてはいけないのだが。

ただちょっとした逸脱はいつだって慈しみがあるしそれによって報われる何かがあると私はいつも信じている。

クリスマスの日にケンタッキーではなく鶏皮ポン酢を食べたり、親リーチを喰いタンで流したり、温泉旅館で大浴場に行かず部屋風呂に入ったり、節分の日に豆ではなくグリーンピースを撒いたり、駅で電車を待っている時にパラパラを踊ったりしたいのだ。

しかし小心者の自分はそんなことはできない。

節分でグリーンピース撒いちゃったら片付けるのが大変だろうなと後先のことを考えて、二の足を踏んでしまうのである。

グリーンピースが破れて、玄関やベランダが緑の中身でぐちゃぐちゃになっている様子が目に浮かんでしまう。
そしてその緑のぐちゃぐちゃを片付けている私の姿も容易に想像できる。

緑のぐちゃぐちゃはどう片付けたらいいだろうか?雑巾で拭くと、その汚い雑巾をさらに洗わなければいけない。緑のぐちゃぐちゃがついた雑巾は洗面所では洗いたくない。風呂場で洗うと風呂場の排水口が緑のぐちゃぐちゃで詰まってしまう。

雑巾はやめておこう。

キッチンペーパーで緑のぐちゃぐちゃを拭きとりそのまま捨ててしまうのがいい。ただ、うまく拭き取らないと玄関やベランダに緑のぐちゃぐちゃの残骸が染み付いてしまう。

そうなると今後、グリーンピースを撒かなきゃうちのベランダや玄関はこんな緑っぽくなかったのになと後悔し続けることになるだろう。

いっそのこと高圧洗浄機ケルヒャーでも買ってしまおうか。自分の記憶が確かならば、ジャパネットたかたで、その恐るべき性能が証明されていた。

高圧洗浄機はベランダには使える。

しかし玄関で使うと水浸しになってしまう。大惨事である。何が悲しくて自宅の玄関をじゃぶじゃぶ池にしなければいけないのか。じゃぶじゃぶ池は夏季の公園に任せておけばよいのだ。どうやら高圧洗浄機を使うのも無理そうだ。

やはり逸脱は困難だ。

節分の日にはグリーンピースではなく、大人しく納豆でも撒いておこうと思う。

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