もうゲームなんてしないなんて言わないよ絶対
私は楽な方に流されやすい性格である。
大河に落ちた一葉の枯葉くらい流されやすい。
楽しんごという名前を見て、はっとするくらい楽が好きである。ドドスコしてしまうくらい楽な方向へ行きがちだ。
そして今週も流された。楽な方へと。
川の流れのようにおだやかにこの身を任せてしまったのである。楽な方へと。
どういうことかというと、今週、私はゲームを始めてしまった。
そもそも私はゲームが大好きで小学生の頃から、ゲームが友達というような生活を送っていた。
大人になってからもプレーステーションやその携帯版であるPSPという機体で、ゲームを楽しんできた。
ただ子どもが産まれてきて、時間がなくなったことと、私はゲームにハマり過ぎる性格で、ゲーム依存みたいになってしまっていることを自覚し、7年前くらいにゲーム断ちをしたのだ。
これが今週まで成功して、7年間くらいゲームをすることはなかった。
ただゲームの実況動画はYouTubeで見ていて、それでゲーム欲をなんとか抑えていたのである。特にとある人気ゲーム実況動画を好んで視聴するようになっていた。
自分でゲームをすることと同様に、ゲームの実況動画もハマってしまうのだが、自分でゲームをするよりはかなり短時間でやめることができるので、それはそれで良しとしていたのである。
ただいい歳をしてゲーム動画というのもなんとなく恥ずかしいので、家族を含めて誰にも見ていることを内緒にしていた。
ただある時、ゲーム動画を見ていることが、職場の後輩にバレてしまったのだ。
その日は職務上のちょっとしたことを調べるために、私は私物のスマホを使った。本来なら私物のスマホは職務では使わないのだが、ほんの些細なことで、コンプライアンス的にも問題がないような事柄であったのでまあいいかなと思い使用した。
その職務に関するページを開いて、後輩に見せようとした時、前に開かれていた私の好きなYouTubeのゲーム動画の画面が一瞬だけ見えてしまったのである。
後輩はそのゲーム動画のファンであったらしく「しろさんも見てるんですか!自分もそれ大好きです!」と興奮気味だ。
その日以来、その後輩は「昨日もアップされてましたね。相変わらず面白かったですね」などと私に積極的にその動画のことについて話しかけてくる。
歳が15歳以上離れていて、あまり共通の話題がなかった後輩なのだが、ゲーム動画仲間がいて嬉しかったようで、私と積極的にコミュニケーションを取ろうとするようになったのである。
そして今週、後輩は「あの動画で取り上げられていたゲームが、24時間限定無料でスマホにダウンロードできるらしいです!」と教えてくれた。
私はゲーム断ちしているので、スマホにゲームをダウンロードしないようにしている。
ただ後輩にそんなことを言うのも野暮である。せっかく良かれと思って伝えてくれた後輩の思いを無駄にするのは、なんか申し訳ない。
だから私はそのゲームをダウンロードしてしまった。
そして、後輩からきっとゲームをやってみてどうだったか聞かれるなと思い、まだやっていないと答えるのもどうかと考え、ついゲームを立ち上げてしまった。
ちょっとだけやってみて感想を後輩に伝えればいい。そんなふうに軽く考えてしまった。
しかしこれが地獄への入り口であった。
久しぶりのゲーム楽しすぎる。
解き放たれた欲望は際限を知らない。
蘇った欲望はどこまでも駆け回る。
私はダウンロードしたゲームに取り憑かれてしまった。
久しぶりに会った元カレとよりを戻すような感覚である。
いろいろあったが、元カレが一番相性が良かった。でもそれは時を経なければ気が付かなかったの。あの頃にはそれがお互い気付けなかったね。二人とも若過ぎたよ。あの頃に戻りたいなんて思わないけど、また出会えて良かった。
そんな感じで私はゲームと再会してしまった。
再び出会うことで燃え上がる恋もある。
私はダウンロードしてわずか二日でクリア直前というところまで、やり尽くしてしまったのだ。
かなりの時間を犠牲にして。
今後ゲームを続けると、日常生活に多大な影響が出ること必至である。
でももうゲームから離れられないかもしれない。
今、私の心の中では、もうゲームなんてしないなんて言わないよ絶対、という言葉が鳴り響いている。
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