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日本法人 最多の年間達成を支えた秘密のレシピ

いきなりお詫びです。まず色々書いたらとてつもない長さになりました。12,000字あります。しかも文字オンリーなので分かりづらいかもしれません。分かりやすいように図解などもしようと思いましたが、そんなことしてると明らかにゴールデンウィークが終わってしまうのでまずはこのバージョンで公開させてください。

そしてタイトルの「日本法人 最多の年間達成」。これはちゃんと調査したわけではございません。ちなみに7年達成してます。もしかしたら私よりも多くの年間達成をしている人が日本法人にいるかもしれません。居たらすいません。

ただそれもあって他チームや他部門の数字に苦しんでいる営業やマネージャーから「1on1してくれないか」とお声がけいただくことが増えてきました。色んな営業やマネージャーと話をして思うのが「ほぼ同じパターンに嵌っている」ということ。なのでアドバイスすること、解決策もほぼ同じです。それなら1人でも暗闇から抜け出すきっかけになればいいなと思いnoteにまとめてみました。ちなみにどちらかというと2,3年目以降の人やマネージャー向けの内容です。最初の1年目は取り敢えず量がボトルネックになってます。けどそういった量を追求したけど数字が上がってこない人は読んでみてください。もちろんここに書かれている事だけが達成できた秘訣ではないです。ただ社内外の協力者やお客さんに恵まれた事などを書いても他の人は再現のしようがないので、そういったことは極力排除して再現できうる内容を書いてます。

全セグメント共通する最大の問題点

Salesforceはお客様の従業員規模に応じて営業チームを分けています。10名程度のスタートアップだけ担当している営業や数万人を超えるエンタープライズ営業まで細かく分かれています。もちろんセグメントによって戦略は変わってきますが、どのセグメントでも共通して数字に苦しんでいる営業やチームは「小さな案件も大きな案件も同じような工数をかけている」というのが最大の問題です。

「そんな事はない。さすがに大きな案件があったらそこに工数を投下している。」と思うかもしれません。けどこれが数字に苦しんでいる個人でもマネージャーでも間違いなく最大の共通点です。ちゃんと大きな案件に工数を投下できているのは全体の半分もいないです。例えば直近1ヶ月のスケジュールを振り返ってみてください。自身のスケジュールの大部分は何で時間を使ってますか?案件規模が大きいTop3に工数をどれだけ寄せて投下してますか?

大きな案件に集中できない5つの理由と対応策

「振り返ると確かに分散してる。大きな案件に集中できていない。よし、じゃあ大きな案件に時間を寄せて集中しよう。」と考えるのは良い事です。ただ少し立ち止まって「そもそも何故こういう状態に陥るのか」という原因を考えて欲しいです。この状況を誘発する要因は色んなことが絡み合って招いています。あげればキリが無いのですが代表的なものはこの5つです。

1、年間目標達成プランを考えてない
2、時間が何に割かれているのか把握してない
3、案件リストの商談経過日数が平均値から大きく超えているものが散見される
4、小さな案件も丁寧に商談メンテしたりForecastに記載している
5、案件発掘目標金額(Pipe Genターゲット)を設定している

年間目標達成プランを考えてない

「年間プラン作ってチームで集まって発表とかするのが普通なのにそんな人いる?」と思われるかもしれません。けどその作ったプランを見返したのはいつですか?そのプランと今日1日の活動はリンクしてますか?ほとんどの場合、期初にプランは作るけど見返すのは早くて3ヶ月後とかです。それではプランは実行されません。だから今日1日の過ごした内容が全く年間プランに入ってない内容で埋め尽くされているという行き当たりばったりな状況になります。日々のプレッシャーが仕事の優先順位を決めてしまいます。例えば「上司から早くしてくれと言われた」「お客さんから電話かかってきて急ぎ対応してくと言われた」みたいなやつです。それを限りなく高速で実行して年間達成できるのなら、それはそれで良いと思います。けどめちゃくちゃ忙しくなりますし、何よりもの問題点は「いま着手している商談が全て受注できても年間達成しない状態」を自分の力で抜け出せないことです。

例えば自分の手持ち案件が5個あるとしましょう。その5個は全て小さめの商談。だけど手持ちの案件はその5個しか無い。全て受注したとしても年間目標という視点で見たら達成率20%にも満たないとします。こんな時、どうしますか?数字で苦しんでいる営業は「まずはその5個の案件を受注する」ということに全力を注ぎます。数字が作れる営業はその5個は限りなく捨てて、新たな案件を見つけにいきます。だってその5個を受注しても年間目標は達成できないからです。

ではなぜ数字で苦しんでいる営業は「まずはその5個の案件を受注する」という思考になるのか。それは楽だからです。案件レポートを見て、お客さんに連絡して提案書作ってミーティングをする。そうした時間の過ごし方はとても仕事をしている気持ちになれます。それが習慣になってます。習慣を変えるのはとてつもないパワーと意志力が必要です。人間は習慣の奴隷ですから。これ数字に苦しんでいる人と書きましたが、年間達成を連続してできない人もこの力が不足しています。年間達成を連続してできない人は「達成した年度の手持ち案件の5個がたまたま大きかった」だけなのです。

さて長くなりましたがこれを制御するには「年間目標プランを毎日仕事のスタート時に考える」というのがオススメです。厳密に考えなくていいです。ぼんやりと「どうやったら年間達成できるかな」というのをイメージする。「Top3案件を受注できれば年間目標の50%は超える。その他の手持ち案件は小さいので、それを提案していても年間達成はできない。他を探す時間を1時間でも確保しよう」って感じです。できる限り頭の中だけで考えるのではなく文字化してください。私はノートに毎日手書きしてました。毎日2,3行くらいです。年間達成プランを毎日毎日ぼんやりとでいいので書く。そうすると頭の中に年間達成の設計図ができます。何よりも落ち着きます。「ちょっと難しいかもしれないけど、これが実現すれば年間達成できるな」と毎朝感じてみてください。焦りが消えます。未来に希望を持てます。年間達成を連続でできる営業は私のようにノートに文字化してなくとも、この設計図を期初から頭の中で描き続けてます。年間達成できない営業はこのイメージを描くことを放棄して「とりあえず頑張る」という作戦を取ってしまいます。何よりもの注意点は「見込金額の多い順でTop5案件が全て受注できたとしても年間目標の50%に満たない場合」です。この場合、いまある案件に時間を100%使っていてはその先に年間達成は無いです。いまある案件を捨ててでも案件発掘する時間を確保してください。いまある案件を進める心地良さから自分をコントロールして脱出してください。

この設計図を持っているかどうかを確認するテストは簡単です。いま期初から3ヶ月経過しましたが「年間達成できそう?」と質問してみてください。連続で年間達成できる営業は絶対にプランを持ってます。いま数字が全く上がってなくとも、また見込み案件があろうがなかろうが絶対にプランを持ってます。年度が始まったタイミングや手持ち案件が無いとイメージし辛いかもしれません。ただこれをせずに「メールをまず開く」「メールで急ぎ対応があったら実施する」「案件レポート開いて今月のものから対応する」という習慣で仕事をスタートしても浮上できるかどうかは運次第です。

またマネージャーへのオススメはこの設計図を自分のチームの観点で描くとともに、メンバー個々人の設計図を毎日確認してみてください。毎日メンバーが年間達成するにはどういうザックリした構成が必要か、また何がボトルネックになっているのか考えてみてください。そのメンバーの立場に毎朝なったつもりで、今日1日で何を実行すれば年間達成に1番近道かを考えるのです。この確認を実施すると気づきますが、経験の浅いメンバーほど優先順位をミスしてます。昨日の1on1で「この3つが優先順位高いね」と話したはずなのに、1日経って優先順位を見てみると違うもののプライオリティが上がってたりします。1週間単位でそのズレを修正しても行動は変わりません。1日単位でズレを修正する必要があります。

ちなみにこの設計図は1週間くらいではほとんど変わりません。ほとんどの場合は前日のコピペです。場合によっては2ヶ月くらい一緒ということもあります。けど何か大きな案件で不測の失注とかが起こった翌日などに効果を発揮します。当たり前ですが私たちはマシーンでは無いので、受注できると思ってた案件を失注すると気持ちが落ち込みます。当日はもちろん、翌日も気分はドンヨリ。気付けば何か気持ちの歯車が噛み合ってないモヤモヤしたまま1週間が経過した、ということもあります。この感情の波をコントロールするのは1人だけでは難しいのです。1人でスパッと切り替えられる営業もいますが、それはTop2割の限られた才能。普通の人はできないです。感情をコントロールするための習慣が必要です。

時間が何に割かれているのか把握してない

さて毎朝「どうやったら年間達成できるのか」という設計図を作るようにしました。「よし、じゃあ1番注力すべき案件から連絡して前に進めよう」と考えるのは良いことですが、その前に止めるべき仕事を決めましょう。なぜなら悩んで相談をくれる人は例外なく「既にとてつもなく忙しい」という共通点があります。スケジュールを見たら確かにビッシリ。朝も夜も働いてます。けど数字は上がらない。そんな状態のままでは「1番注力すべき案件から連絡しよう」というプラスαの作業をするとキャパシティオーバーを起こします。

悩んでいる人に「忙しいのは何に時間を使っているの?」と聞いてみると面白い現象が起こります。そこで出た回答、例えば「社内ミーティングに時間使っている」「資料作成に時間かかってる」とかが出てくるのですが実際直近1ヶ月くらいのスケジュールを振り返ると事実と乖離していることがあります。つまり自分自身が何に時間を使っているのか正しく把握できていません。これは特段不思議なことではなく、普通の人はよっぽど意識して記録していないと時間を何に使っているのか把握できません。お金と同じ。家計簿をつけないと「何に使ったか分からないけど金ないなぁ」となりますよね。時間も同じ。

マネージャーならさすがに事実と大きく乖離しているケースは少ないですが、配下のメンバーが何に時間を使っているのか正確に把握していない事が多いです。配下のメンバーのスケジュールを確認したらガラガラ。もっとアポ増やせと言っても増えない。それはなぜかというと配下のメンバーは暇でもサボっているわけでもなく、スケジュールには書いてはいないけど仕事をしているのです。じゃあスケジュールガラガラの営業マンが1週間で何をやってるのか。残念ながら1on1とかで聞いても分かりません。営業マン本人が正確に把握していないのですから、何に時間を使っているのかはイメージで会話することになります。事実と乖離するのです。

まずは時間を何に使っているのか、現状を正しく把握しましょう。2週間限定とかで良いので実際に何に時間を使っているのか記録するのです。注意点がいくつかあります。まず仕事の時間だけではなく24時間つけること。いつ起きているのか、また夜は何をしているのか、いつ寝て睡眠時間はどのくらいなのか把握しましょう。削れる時間は仕事の時間だけではなく、プライベートに問題があるかもしれません。例えば私のチームメンバーで「たまに19時くらいから2-3時間寝て、また起きて仕事して深夜の2時とか3時に寝てる」という営業がいました。このチェックをつけないと気付けません。私がしたアドバイスは睡眠時間が集中力や仕事のパフォーマンスに与える影響を伝えるとともに「19時くらいにうたた寝せず、夜ちゃんと寝ろ」ということです。

もう一つの注意点は極力リアルタイムにつけるということ。30分刻みでOKです。ですので10時〜10時30分の記録は10時30分になった瞬間につける。この30分を振り返って何をしていたのか記録する。資料作成していたのか、調べ物をしていたのか記録する。なぜリアルタイムかというと1日の終わりにまとめて記載すると、それだけでも事実と乖離するからです。記憶は都合よく1日のスケジュールを歪めます。また30分の中に作業内容が混在している事があります。メールも電話も資料も作る。そんな時はその中でも1番時間を使ったものを書きましょう。まぁそもそもこういう「30分の中で色んな作業が混在している」という時間の過ごし方が多い人ほどパラレルに仕事をしているようで何も前に進んでいない事が多いです。価格プランを考えてたのにメールを見る。提案書作ってたのに電話に出る。これでは何も終わりません。30分でできることなど所詮そう多くはないです。記録をつけるとともにパラレル作業状態を減らし「コレをやる」と決めて集中してみてください。

また私の部下の例です。ある営業のスケジュールがガラガラで「1週間で最も時間使ってるのは何?」と聞いたら「資料作成です」とのことでした。「じゃあ1週間でどのくらいの時間をかけて資料作成しているの?」と聞くと把握していません。試しに時間を記録させて驚きました。1週間で20時間も資料を作成していたのです。1週間で20時間!!5営業日あったら3日は資料作成。そりゃ数字も上がらない。本人も記録をつけて初めて「これはさすがに時間かけ過ぎですね。。。」と理解してました。

2週間くらい記録をつけたら全体を振り返り、その中で本当に自分も同席が必要なミーティングだったのか、そもそもこの作業は自分がやらなければならなかったのか考えてみてください。それがNoなのであれば、今度同じような仕事が来た時は自分の時間を投下しないように制御してください。また明らかに成果につながらない、もしくは浪費しているような時間はないか。先ほどの1週間で20時間資料作成しているようなやつです。こういったものは可能な限り削る。この時間チェックを通じて自分の時間の使い方を正確に把握する、そして無駄なものがあれば廃棄する。そうして余力を作る。年間達成の設計図を実行するための時間枠を作るのです。このサイクルは私自身1年に1回くらいは必ず実施してます。そうでないと普通に仕事をしていると気付かないうちに時間を浪費させる仕事は溜まってくるのです。

案件リストの商談経過日数が平均値から大きく超えているものが散見される

さて時間チェックをしました。そこで色んな浪費が見つかるはず。1年目とかまだ右も左も分からない新人なら「資料作成、調べ物、事前準備」が最大の削りポイントになります。けどそれ以上の経験値があって「資料作成、調べ物、事前準備」あたりにそこまで時間を割いていないのに苦労している場合。その場合の最大の削りポイントは「取れない案件に時間をかけている」ということです。これは営業担当だけではなくマネージャーも同じです。取れない案件を見極められれば苦労はしないと思われるかもしれませんが、最もその見極めに効くのは「商談経過日数」です。

商談経過日数とは営業が「これは案件だ」と判定して案件登録してから何日経過しているのかという数字です。各セグメントで必要な商談日数は異なります。スタートアップだと早いですし、エンタープライズだと長くなります。

自身の案件レポートに商談日数がなければ絶対に追加してください。その上で重要なのは自分の属している組織で大きな案件はスタートしてからどのくらいの日数で受注しているのか、という平均値を把握することです。数字で苦しんでいる営業やチームの案件リスト(Pipeline)はこの商談日数が平均値をすでにオーバーしているものが沢山あるはずです。

仮に平均値が100日だとすると、自分の案件リストの商談日数が100日を超えたら限りなく強制的にDeadにして案件リストから消してみてください。マネージャーも気づいたら「Deadにして新しいところに行こう」とアドバイスしてあげてください。そういうコミュニケーションをすると「あと1回だけ連絡して見極めさせてください!」みたいなことがあります。そんな時も問答無用でDeadにしてください。「あと1回だけ連絡して見極めさせてください!」から復活して受注したケースってほぼ無いですよね。いまDeadにして本当にもう1度チャンスが出てきたら再度案件登録する、そしてそこから商談平均日数までに受注できるように時間軸を設定するようにしましょう。

なぜここまで半ば強制的にDeadにするかというと「Deadにするのは心理的に極めて難しいから」なのです。サンクコストバイアスという言葉知らなければググってみてください。つまり自分のこれまで実施してきた営業活動を過大評価している可能性が高いのです。その過去の自分の活動を過大評価していることで「何かすれば前に進むのではないか」と現在の状況をポジティブに捉え過ぎている可能性があります。営業ならみんな理解できると思いますが「案件を消す」よりも「受注予定日をズラす」方が心理的なハードルは低いはず。けどそういった積み重ねが「案件リストの商談経過日数が平均値から大きく超えているものが散見される」という状態を招きます。

もちろん商談確度を見る上で他にも色んな数字や観点があります。けど最もシンプルに見極めに使えるのは商談経過日数だと考えています。これを実際のデータで見てみると事実とイメージが乖離していることがあります。特にエンタープライズ。エンタープライズの大規模商談は年跨ぎ(つまり1年以上)が常識だと言う人が多いです。けど私はむしろ1年以内に決まる確率の方が多いと感じてます。それはSalesforceだけではなく前職のERP提案も含めて。何となく「予算取ってもらって数年がかりで受注した」というのが正義だと思い込みしている人が多いなと感じます。当たり前ですが3年かけての1件よりも、1年以内に1件受注した方が効率が良いです。たまに受注発表会とかで「3年がかりで受注しました!」みたいなのがありますが、そんなものを称賛しては駄目なのです。「のんびり提案してはったんですねぇ」と京都弁でdisるくらいがちょうどいいです。

いずれにせよ自身の組織の商談平均日数を把握し、自身の商談リストで平均値を超過しているものはサンクコストバイアスに打ち勝ってDeadにしてください。

小さな案件も丁寧に商談メンテしたりForecastに記載している

数字で苦しんでいるなら「受注件数」を売れてる人やチームと比較してみてください。「額」ではなく「件数」です。どうでしょう。売上高では大敗してるものの、意外と案件数で見ると大差ない人もいませんか?Topと比べると「件数」でも負けると思いますが、上位の人でも意外と「件数」が多く無いということに気づくはずです。じゃあ件数がイーブンなのに額でなぜ負けてるかというと、当たり前ですが1件あたりの案件平均金額が低いのです。

それは結果論?いえ、違います。案件平均金額が低い営業やチームのForecastを見てください。絶対に小さな案件もForecastにビッシリ記載しているはずです。小さな案件をForecastに書くとどうなるか。営業担当から部長、部長から役員と各レイヤーで「この案件ってどうなの?」というコミュニケーションが発生します。そしてForecastに書くからには商談に内容を記載しないといけないというプレッシャーが発生します。それは1件あたり数分だったとしても掛け算で莫大な時間になります。さらにそこで何かしらのアクションプランを思いついたとします。そうすると営業やSEはそこに工数を投下します。仕事をしてる気分になるのです。

何よりもの弊害は「小さな案件に気を取られ、肝心の大きな案件への集中力が削がれる」ということです。冒頭に書いた「意外と案件数に変わりはない」ということ。これは結局「小さな案件は受注できたけど、大きな案件を失注 or Slipしてしまった」ということです。神は細部に宿ると言いますが、残念ながら小さな案件をいかに丁寧に進めようが神は宿りません。そこに宿るのは忙しさです。100万円の案件を9件受注するよりも、1,000万円の案件を1件受注する方が良いのです。

解決策に入る前に。そもそも何故小さな案件が多くなってしまうかというと2つの大きな原因があります。

まずは「大きな案件のパターンを把握してない」ということ。同じ部署や似たようなセグメントで大きな案件が受注されたらそのデータを隅々まで見る。提案書も見る。営業担当本人に話を聞く。そうやって疑似体験を積み重ねまくる。そうしないと大きな案件のパターンは自分の経験からしか得られなくなります。それではスピードが遅過ぎます。他人の成功体験を自分の経験に変える。そうしてパターンを再現できるようにすること。大きな案件のイメージを明確に持てていないから小さな案件しか作れないのです。

次に2つ目。これは少し根深い問題です。「追い込まれた末の安易な作戦」です。これはどちらかというとマネージャーが犯しやすいミス。例えば直近でCommitしていた大きな案件で予想外のDeadやSlipが起こったとします。そんな時「少しでもリカバリーするぞ!全ての顧客にCallして少しでも追加お願いしようぜ!」「オラに力を」みたいな元気玉作戦を行いがちです。これはもうとにかくマイナスしか無い。当たり前ですが時間は有限なのでこの作戦を実行するということは「他の何かを実行できない状況」に強制的になります。それは「大きな案件を作って、その提案を進める」ということです。この最重要事項をおざなりにし、少しでも積み上げる活動に時間をかけてしまいます。この元気玉作戦の最悪な点は仕事してるぜアピールになるということです。そんなつもりは無いと願ってますが、深呼吸して冷静になって考えてみてください。どうですか?追い込まれたら「とりあえず全ての顧客にCallします!」「少しでも積み上げします!」「少しだけですが追加になりました!!」みたいなことやってませんか?そこに「大きな案件がslipしてしまったから、許してもらうために必死に動いてる感出そう」みたいな後ろめたい気持ちは無いですか?この元気玉作戦に当てる時間は本来大きな案件を作って、その提案を進めるための時間を犠牲にしてるのです。ここを制御するのは個人レベルでは不可能。組織全体で考えるべき問題です。営業担当だけが「大きな案件がslipしてしまったけど、年間達成という中長期の視点で活動しよう」と考えても上司が「少しでもリカバリーで積み上げろ」と言った瞬間にこの地獄の車輪が回り始めます。何故こういった指示がマネージャーから出るかというと「Commit is Commit」を個人レベルで求め過ぎているのです。Commit is Commit。要はForecastした数字でここまではやります、やれますと宣言した数字ですね。これはどんな事情があろうが下回るな。あと極力上振れもなし。宣言通りに着地すべし。というやつです。冷静に振り返って欲しいのですがCommit is Commitを継続的に実現できている営業って全体の何割でしょうか?私はTop 2割だと思います。Commit is Commitは普通の営業ではできません。Top 2割だけです。求めないといつまでもできないと言うかもしれませんが、Top 2割しかできないことを求めること自体が私は無茶だと思ってます。もっとみんなができることを求めるべきです。ということで元気玉作戦の温床となるCommit is Commitは止めようぜということになります。そして大きな案件をSlipしたら、それはもうしょうがない。その四半期は諦める。無責任のように聞こえるかもしれないけど、だからといって元気玉スイッチ押してたらいつまで経っても地獄の車輪から抜け出せません。「ごめんなさい。けど次の四半期で取り返します」くらいに個人レベルだけではなく組織レベルでも統一しましょう。

さぁ、長くなりましたが「小さな案件も丁寧に商談メンテしたりForecastに記載している」の解決策。これはとてもシンプルですが「小さな案件をForecastに書かない、商談の項目や更新も一切しない」ということです。小さな案件の基準をいくらに設定するのかは担当するセグメントによって上下しますが、割と思い切って基準を高めに設定してみてください。私たちのチームでは高めに設定しているので個人レベルのForecastがスカスカです。RunRateと呼ばれる「まだ商談は存在しないけど既存のお客さんからこのくらいは追加あるだろう」みたいなヨミも記載させない。しかも先ほど書いた「商談経過日数が基準をオーバーしているのは限りなくDeadにする」というのも並行してます。なのでもう本当にForecastにポツポツしか商談がない。けどそのポツポツしか無い商談こそが何がなんでも受注すべき商談です。他のノイズは一切ない。そして小さな案件の商談項目も更新しない。少額でもNext Stepだけは更新してる事が大半ですが、それさえもしない。当たり前ですが商談項目をメンテするのは商談を受注するためです。書いて更新する事が目的ではない。そしてマネージャーForecastも小さいものは無視。小さいものまでじっくりみてForecastを組み立てることは無駄。大きい案件が取れるかどうかでチームは成功か失敗か分かれます。小さな案件を積み上げて成功する個人もチームもいません。いたとしても死ぬほどハードワークです。

案件発掘目標金額(Pipe Genターゲット)を設定している

年間目標が1億円だとしたら、受注率から逆算して見込み案件を倍の2億円は積む。そのために毎月の案件発掘金額は3,000万円に設定する。これが案件発掘目標金額、PipeGenターゲットです。これはとても普通に行われています。これまでとは違って絶対に駄目とは言いません。それで個人も組織もうまく回っているならそのまま続けてください。けど上手くいってないとしたら1度やめて違う方法を取りませんか?

これも元気玉と同じようにマネージャーが安易に指示しがちな作戦です。現在、見込み案件が少ない。じゃあPipeGenターゲット設定しよう。1名あたり月3,000万円。みたいに。繰り返しになりますがコレで上手くいってるなら文句は無いです。そのまま続けてください。

ただ私は考えて欲しいのです。案件発掘目標金額をクリアしながら結果の数字を継続的に出せている営業がどれだけいるか、ということを。厳密にカウントしたことはないです。これも感覚値ですが半分は絶対にいません。小さい子供がいるなど時間に制約がある営業にこの手段は向いてません。Commit is Commitほどの難易度とは言いませんが、案件発掘目標金額をクリアしながら結果数字も出すということを普通に求めては駄目だと思ってます。特に経験の浅い営業は目の前の案件1つ進める事が精一杯かもしれません。そんな営業に「案件発掘せよ」と指示すると目の前の案件でやるべき事があるのに、それを放置して新しい案件を発掘しにいきます。「案件の提案できてないじゃ無いか」とマネージャーは怒るかもしれませんが、それを誘発してるのは「案件発掘せよ」と指示です。営業担当の個別のキャパシティを考えて指示しましょう。1名あたり月3,000万円、というのは楽なんです。何も考えなくていい。個別のキャパシティを考えなくても「1名あたり月3,000万円」をトラッキングすれば終わりですから。

またこの「年間目標の倍くらい見込み案件を積む」という方法は「案件を消さずに残す」という温床になります。見込み案件の総量が減ると指摘されるますから、可能性が低くても残すことになります。そうして気付けば案件経過日数が基準値を超えてるものだらけのPipelineになります。

「年間目標に対して何倍のPipelineが積まれているか」という視点が機能するのは配下に結構な人数の営業マンがいないと必要ないKPIです。感覚値ですが30人くらいの営業マンを統括する人なら見ても一定の意味があると思います。けど10人未満なら見る意味はないです。むしろここに書いたようなデメリットの方が大きくなります。

最後に

「SFAを導入すれば売上は上がるのか?」。これはずっと議論されているテーマです。世界で最もSalesforceを使いこなしているSalesforce社でさえ、個人やチームによって相当な成果の開きがあります。SFAはSalesforceを導入していて、定着化も問題ないくらい使いこなしている。では何が成否を分けているか。それはこれまで書いてきたようなポイントが影響しています。じゃあSFAは意味がないのかというと決してそういうわけではないです。ここに書いたポイントの多くはSFAが無いと気付けません。商談経過日数はエクセルでは分からないです。小さな案件に活動が分散していないか把握することもできません。SFAは使い方を間違えなければ確実に売上を上げるツールとして機能します。

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