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川相の魔剣 終節

この剣を抜けば、君は塁上にランナーがいる時は二度と出塁できなくなる

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日本シリーズ第7戦、9回裏2アウト満塁。点差3点。全員の予想に反し、魔剣の川相に代打は出ず。どよめくスタンド、当惑しつつも約束された勝利に口を緩ませる守護神豊田。長嶋のサインは、フルスイングだ。
(誓いを破れば?)(君は死ぬ)マーリンの言葉を思い出す。川相は笑い、大きく構えた。

「どういうことでしょう、魔剣使い川相。バントの構えではありません!何かが起ころうとしている東京ドーム!大変な空気になってまいりました」
ゲッシュ(誓約)により巨人軍入りした一塁上の高橋由だけが、彼の行為の意味を理解した。「川相さん!ダメです!」鋭い牽制球!危うく帰塁!

川相はヘルメットのつばを少し深く直した。口元に微かな笑み。二塁上の松井はなぜか、もう二度と川相には会えないのだと理解し、同じように帽子を目深にした。豊田が振りかぶった。打者勝負。豪速球が空気を切り裂き外角一杯に…落ちる!150km/hに届くフォークが!

カァン

白球が高く上がるのを、三塁上の二岡は見つめていた。二岡が慣れ親しんだ角度と速度。落ちる場所は知っている。
選手も観客もただボールを見ていた。右中間スタンドの最前列でそれが跳ね、少し間があって、怒涛のような歓声が沸き起こった。

崩れ落ちた鈴木健は、いつまで経っても一塁に本日のヒーローがやってこないことに気づき、視線を上げた。
バッターボックスには、持ち主を失った魔剣が突き立っていた。

◆完◆


スペシャルサンクス: お望月さん(@ubmzh)


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