買い物しすぎる女性たち-1
ずっと音信不通だった親戚とひさびさに話す機会があった。
話題はまさにそれぞれにいまいちばん困り果てている話題、老親のこと。
「明け方になるとゴソゴソ起きだして、テレビショッピングの番組を見ながら電話をかけている。それも代引きだよ。代引き!俺が払わされるんだよ。足が痛いからって、自分は玄関には絶対行かない。自分で荷物は受け取らないんだよ。それなのに、コンビニにはひとりで歩いて行って、甘いものをたくさん買ってくるんだよ。糖尿病がひどいのに。信じられるか?」
うへえええーーーー。そうかそうなのか。深夜早朝にテレビをぼんやりみているような人たちだと、ついつい買っちゃうそうな魔力がありますよな、ああいう番組って。で、代引きなのか。すげーな。部屋でゴロゴロしてるだけでも、いざ自分の強い欲求のためには歩けるのか。人間ってこわいな。
「で、何が届くかって言うとさ、健康グッズ。部屋に入りきらないくらい巨大なボールとか、こないだなんかトランポリンだよ。トランポリン!一日中寝っ転がってて、部屋の中を歩くのも危ないっていうのに、こんなもんどうするんだよ!って怒ったら、だいじょうぶだ。ベッドの脇に置いて踏み台にするって言い張るんだよ。信じられるか?」
うげえええーーーー。あのさ、立ち座りもできないくらい足が痛くて、歩行困難で何度も手術してるんだよね?それでもテレビショッピングでトランポリンのCM見てると、なんだかそれを買ったらからだが軽やかになって、元気になる気がするんだよね?うん。気持ちいいのは買う瞬間だけだ。
やばい。連打されてくるネタがおもしろすぎる。
わたしも、なんかおもしろいこといわなきゃ!
「すごいね。うちはそこまで大きなものはないわー。かなわない!テレビショッピングでも買ってるけど、基本はネットで買う。ITババアだからね。こないだ父がクレジットカードを取り上げろ!って怒ってたけど、ダメだ。物体のカードを取り上げたところで、カードナンバーはしっかり登録されてるから買い物は止められねえ」
げへへへへ。おそろしい。ネットショッピングおそろしい。
「座るとブルブルする骨盤なんちゃらクッションとか、足踏みステッパーとか」「そんなの基本基本。ふつーふつー。うちもある」「あ!あのね、足が痛くて痛くてまともに歩けなかったときに、プラットホームみたいに分厚い厚底で、かかとのないスリッパ買ってた!筋肉を鍛えるんだって!」「わははははーーー。そりゃーねーわ」
よかったよかった。盛ってない実話でちゃんと伝わった。
いやもうまともじゃない世界だよね。
冷蔵庫の中にドロドロで原形のない物体がいっぱいある話とか、なぜか家にある業務用の冷凍庫の蓋が閉まらないくらい満杯になってるとか、缶詰が変形して爆発するとか、いつ頼んだかわからない開けもしないダンボールがいっぱいあるとか、賞味期限が2006年のジュースが大量にあるとか、封を開けたこともない掃除用具だけが引き出しや納戸の奥底に大量に堆積しているとか、なんかそういう話だ。うんざりだ。
なんであんなに買わずにはいられないのか?
わたしたちにはまったくわからない。
使いきれないくらいお金があるわけじゃないのに。
現実を一ミリもみていない。
要するに、心が空虚だからだろうってことはわかる。
でも、安心や満足は、いくら買い物しても満たされないよね。
ほかでもない、その老親同士は姉妹。
つづく。
占い世界でのあなたの探検が、よりよい旅路となりますように!