チェロ佐藤晴真さんのコンクール優勝に思うこと

先日開催されたミュンヘン国際音楽コンクールのチェロ部門で、日本の佐藤晴真さんが優勝したとのこと!おめでとうございます!!!

佐藤さんの演奏を初めて聴いたのは、2014年の第83回日本音楽コンクールで一位を獲得された時。テレビ放送で見ました。
この時の印象は…質実剛健というか、哲学的な感じというか、ちょっと地味かな?というか…

正直に言いますと、同じく一位を獲得した森田啓佑さんの演奏が、とても印象強くて。音楽に没入するうら若き青年と、それを支える美しいピアノのお姉様(諸田由里子さん)という画が素敵すぎたし、ドボコン(ドボルザークのチェロ協奏曲の略称)という聴き映えのする選曲も良かった。。

そんな訳で、その時の佐藤さんの印象はそう強くなかったのです。しかし、数年経って録画を見た際に、佐藤さんの音の、情報量の多さに驚きました。すっごい深いところまで考えて弾いてることが感じられる演奏で、一音一音が濃い!わーこれはスゴイ…と思ったことを覚えています。

先日の、ミュンヘン国際音楽コンクール一位を伝えるニュースも見ましたが、本当に鬼気迫るというか、佐藤さん自身が音楽であり楽器であるかのような迫真の演奏で、朝から心臓をギュッと掴まれたような感覚を覚えました。きっとすごい演奏家になる!!!

しかし、第83回の日本音コン・チェロ部門本選出場の四名(先述の二人に加えて、水野優也さん、笹沼樹さん)は、皆が皆、すごい活躍ぶり。それぞれが自分の持ち味を活かして道を歩んでいく姿は、本当に感動的で、少し大げさですが、今の世に生きていて良かったと思うのであります…

そしてここから、クラシック音楽の今後について思ったこと。

佐藤さんは今後どんな音楽家になっていくのか、と考えると、音楽の裾野を広げる活動というよりは、音楽を追求する方向に行くのではないかと思うわけです。表現が難しいですが、「硬派な」音楽活動。

今、TwitterやYouTubeでは、クラシック音楽の魅力を広く伝えようと、色々な活動をされている音楽家さん達がたくさんいます。そういう方々は情報発信も得意だし、マメです。

一方で「硬派な」リサイタルを開催されるような音楽家さん達は、発信というとリサイタルの告知が中心で、更新頻度も高くない傾向があるように思います。(佐藤さんも、2019年9月現在Twitterアカウントはお持ちでないよう。この冬本格デビューされるとのことなので、これから開設するのかな?開設してほしい!)

どちらがいいという事はないんです。ビジネス的にはSNSを活用して集客に繋げましょうという話なのでしょうが、音楽家さんによっては「それよりも音楽を深める方に時間を使いたい」とか、「不特定多数の人とやり取りするのが苦手」なんて方もいるのではないかと思います。
気が進まないことを無理にするよりも、自分に本当に必要だと思うことをして欲しい、すべてはステージ上で表現してもらえたらそれでいい、そう思っています。(でもコンサートの告知はしていただけると助かる!)

とは言え、演奏の実力だけではお客さんが集まらないという現実はあるでしょう。分かりやすく楽しそうなクラシックのコンサートも増えてきた昨今、これでは「硬派な」演奏会が、音楽家さんが、苦境に立たされてしまう。

クラシック音楽の裾野を広げる活動と、音楽を深く追求していく活動、これらはクラシック音楽の両輪であると考えているので、「硬派な」方にも目を向けてもらいたい。

もっと言うと、「硬派な」コンサートをしている人たち=ツマラナイ人、というわけじゃない!!!

これを伝えたい。

音楽家としての姿だけでなく、ひとりの人間としての魅力を伝えることで、「硬派な」活動をされている音楽家さんの方にも、人を呼び込むお手伝いができたら。

そんなことを考えたニュースでした。

長々と書きました。お読みいただきありがとうございました。

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