2021年に聴いて良かったアルバム

まぁ1年終わったので、昨年買って聴いたものの中で良かったアルバムを書き出してみる。
あくまで「昨年買った」であって「昨年リリースされた」作品ではないので注意。

・Distance/RWYR

https://rwyr.bandcamp.com/album/distance

アイルランドの多分3人組のバンドで、打ち込みを多用したポストロックになるかと思います。これが1stアルバム。
この手の打ち込みポストロックだとダンス寄りかエレクトロニカ寄りかになりますが彼らは後者ではあるんですが要所で前者の要素も取り入れる感じ。音響的な気持ちよさ中心のアプローチを見せつつここぞという場面で轟音ギターをぶちかます、というスタイル。
要は雑多な要素が入り乱れてる、悪く言うと聴き手がフォーカスしづらい散漫とした印象になるのですが、彼らの場合各要素で目指す役割がきっちり差別化されているので上手く楽曲の表情付けとして機能しているかと思います。

・Sound from out the Window/Evan Wright

https://www.youtube.com/watch?v=FLIqF83ztH0

ニューヨークの宅禄で一人で全部の楽器演奏してる人のはず。これもデビューアルバム。
こういうインディらしいローファイなサイケデリック感ってのはニューヨークらしいんですが、この方の音は絶妙にヘロヘロで最高ですね。へんてこな音や-無茶な瞬間もありつつ、でもきっちり染みる音像になっている。素敵な音楽だと思います。

・Renewal/Billy Strings

https://www.youtube.com/watch?v=2ZtB89fvG2w

この方はジャンルとしてはブルーグラスの方です。ブルーグラス、どんな音か説明は難しいのですがカントリーミュージックにも含まれる音で、日本だと多分一番有名なブルーグラスの曲は「走れコウタロー」になるかと思います。イメージとしてはあれでOK。
で、私自身そこまで熱心にブルーグラスを聴いている、とは言い難いのですが、それでもこの方の作る音はちょっとこれまで聴いて来たブルーグラスから一歩深化しているというか、次の段階に進んでいるんじゃないかな、と思いました。
ブルーグラスなんですが、そこに留まらない感じで楽曲によってよりカントリーに依ったり、ブルースを下敷きにしてみたり、かなり多彩なアイデアを持っている方じゃないかと。
それでいて、しっかりメロディも書ける方なので一本調子になりやすいこのジャンルにして一枚のアルバムとしてとても良く出来てる。凄いアルバムだと思います。

・Endless from the Start/Union of Knives

https://www.youtube.com/watch?v=ihBeCMG5nBw

スコットランドの3人組のエレクトロニックロックバンド?とのことなんですけど?なのは海外のwikiだとそう紹介されてるんですけど、聴く限りロック?なのかって思ってしまうからでして。
彼らのサウンドの構成ってちょっと大味な電子音+妙にトライバルなリズム+異様にソウルフルなボーカルで、しかもこれらが合わさることで、奇妙なもっさり感が産まれます。
で、このもっさり感にも妙な味があって、そこが個性になってるっていうなんというか謎な音源です。個人的に大好き。

・Here and Now/Gates

https://www.youtube.com/watch?v=Q29ZHYfX3gQ

イリノイのバンドだったはず。エモ経由のポストロックを鳴らすバンドはそれなりにいるのですが2010年ぐらいに登場して未だに活動できているのは彼らだけなはず。というかこの分野で順当に活動を継続しているのは他にはAppleseed Castぐらいしかいない茨の道ではあります。
で、彼らの音ですが良くも悪くも物凄くポップです。ポップという言葉に悪い意味がある様に受け取られかねないですが、エモ的なメロディとポストロック的な音響感の美味しい所を的確に抽出することができるセンスと技術は凄まじいです。

・Hey What/Low

https://www.youtube.com/watch?v=sebDnwlEnPs

元々はサッドコア界隈でもトップに近い人気がありつつ、淡々と作品を作り続けていた仙人みたいな人たちだったのですが、2010年代中盤辺りから突然電子音とノイズまみれになりまして。
この辺の経緯はちょっと良く分からないのですが、どうやらBon Iverの作品をいたくお気に召した様で、その作品のプロデューサーと組んだ結果こうなったみたいです。
前作のDouble Negativeほど電子音とノイズと静寂が奇跡的なバランスで同居した作品とまではいってないですが、やはり今作も素晴らしい。
少なくともレコードデビュー25年過ぎたベテランが出す音ではないし、長いキャリアがあってさらに攻めていく姿勢は見習いたいものです。

・Observer/Human Factor

https://humanfactor.bandcamp.com/album/observer

ロシアのポストロック系のバンド。ロシアはここ数年急速にあらゆるジャンルで面白い若手のバンドが登場している土地で、その結果ジャンルの垣根が非常に曖昧な所が良い方向に作用している、というのがあります。
彼らに関してはポストロックの音ではあるのですが随所にプログレ魂が顔を出してくるのです。ここぞという所で鳴るリードシンセは完全にプログレというかELPですし。
ここ数年、欧米ではポストメタルな動きが激しく、エッジの立った激しさのある音が強くなってきていたり、またプログレ側からポストロックに接近する例は多数あったのですが、ポストロックを軸にそこにプログレが加味されていく音像というのは珍しい音で、とても楽しめました。

・Rare Symmetry / Fade Into You /American Football

https://www.youtube.com/watch?v=1HA0yNt46jo

12月に滑り込んできた名作。2曲入りEPですが気にしない。
エモ/ポストロックのレジェンドバンドの最新作になります。
彼らの場合作品を経る毎に音に余裕が出来、シカゴ音響派的なサウンドに近づいているのですがそれがバンドの成長物語として実に自然に鳴らされているのが素晴らしいと思います。
今作も、肩の力が抜けてリラックスしつつ制作したような伸び伸びとした作風できっと長く聴いていくのだろうなぁ、と思います。

・And Find About Kind/To Life

https://tolifeofficialmusic.bandcamp.com/album/and-find-about-kind

ロンドンのポストロック系のバンドなんだけど、どちらかというとこの人たちはフュージョンになるんじゃないかなぁ。
ここ最近の激しい音やドローンなお彼岸に向かいがちなポストロック界隈の中では、軽やかで爽やかだったり優しい音に向かっていて、良い意味でトレンドから外れています。
結果的に、ポスト感が薄い普遍的な表現とも言えますが、良い音です。

・Cavalcade/Black Midi

https://www.youtube.com/watch?v=GT0nSp8lUws

いやあ、やっぱりこれは外せません。
1stはポストパンクとポストロックの中間というかトーキングヘッズを新解釈でのアプローチという感じだったのが、ギターが脱退した結果、サポートメンバーだったサックスとピアノの人をフィーチャーして創造の斜め上にかっ飛んでいきました。
元々、前衛音楽的な雰囲気はあったのですが、それが絶妙にポップミュージックとしても成立するギリギリを攻めてる感じ、凄い好き。

・How Long Do You Think Its Gonna Last?/Big Red Machine

https://www.youtube.com/watch?v=h_wr-9X47ao

The Nationalの人とBon Iverのユニットという時点で悪かろうはずがない組み合わせなのですが、そんなオルタナカントリー界隈の最高峰の二人に留まらず、参加者的にもその界隈における北米オールスターみたいな感じになった2ndアルバム。
この作品聴くと、オルタナカントリーってジャンルの奥深さというかアプローチの幅を感じます。ユニットという点がやはり押し出されてるのか音がバンドサウンドではなく歌に寄ってる。穏やかながらも的確で無駄な音がないのが凄いです。

・Sex, Death & The Infinite Void/Creeper

https://www.youtube.com/watch?v=sHhqRP-HdIw

20年に聴きそびれていた作品。
元々はゴスの入ったポップパンクとかエモの要素のある感じの人たち。マイケミとかA.F.I.とかの流れのバンドで実際1stは良いものの間違いなくその範疇の音。
それが、この2ndで大成長しました。音が完全にポップパンクとかエモって枠に留まらないというか、もっと普遍的なロックに向かっていってまして、またそれが凄くよくできている。それでいて古さもない、っていう割と奇跡的なバランスの音だと思います。

・S-T/Working Mens Club

https://www.youtube.com/watch?v=pzkfcLzUYYg

これも20年に聴きそびれたやつ。
ポストパンク的な音ってのは00年代以降定期的に新しい人が出てきますし、ばんばん高性能な音を出してくるので、この手のアプローチで図抜けた評価を得るってのはそれだけで物凄く個性が立っていることになるのですが、彼らの場合バンド編成でありながら徹底的に情緒を排除している点が凄いです。徹底して無機質な音に徹してるというかバンド編成っていう有機的な構成に対してここまで鋭角的な音のぶつけ合いになるのか、っていう。
あれです、イメージとしてはSucideを現代的な解釈でやろうとしたらこうなった。という感じの音。

こんな感じで。

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