拾ひては零し 銀化の俳人003 潮田幸司
俳句結社『銀化』に集う個性ある優れた俳人たちの秀句を鑑賞していきます。第3回となる今回は『銀化』編集長・潮田幸司の一句を鑑賞します。
作者のお子さんだろうか。あるいは親戚の幼子が遊びに来ているところだろうか。居間には、近頃では珍しくなった段飾りのお雛さまが置かれ、その側で幼い女の子が雛あられを食べている。
幾粒かを摑んで口へ運ぼうとするたびに、その小さな手と口の間から零れ落ちる雛あられ。零れたあられを拾おうとして体を屈めると、持っていた雛あられの幾粒かがまた零れ落ちてしまう。本人にとっては深刻なジレンマに違いないが、傍で見守っている大人たちには、まとこに微笑ましい一齣である。
そんな他愛ない子どもの動作を「二つ拾い五つ零しぬ」とユーモラスに表現したことで、幼子の愛らしさが際立って読み手にイメージされる。子も孫もおらず、雛祭にも縁遠い私には、この描写の妙がとても眩しく感じられた。(了)
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