空區地車の力学その86.喪中(もちゅう)に祭りに参加できるのか?地車は曳けるのか?
大切な人が亡くなると喪に服します。喪中は亡くなってから1年間です。この間は、祭りに出られないと言われています。
空區若中でも「喪中で今年の祭りは出られません」と言って棄権する若中がいますが、喪中宣言する若中のほとんどは地車愛が強く、大抵は完全休業ではなく、賄い(まかない=若中への料理や配膳をする人)などの裏方に回るなどして、喪に服しているような、服していないような、妙な立場で祭りに関わりを持ち続けます。
「喪中」とは、そもそも亡くなった方との決別ができず、いわば自主的に喪に服する行為ですから、裏方に回る時点で既にその人は気持ちを整理できており、わざわざ裏方に回らずとも、ちゃんと曳いても良いのではないかと私などは思うのですが。。。とはいえ毎年賄い役は少なく、「喪中」が理由なので大変不謹慎ですが、賄い役増員はありがたいものです。
では「喪中なので祭りには出られません」という方々は何を持って言っているのでしょうか?
本住吉神社例大祭は毎年5月4日〜5日に行なわれます。「喪中」は1年間なので、逆算すると5月6日〜翌年の5月3日の間に近親者が亡くなると祭りには参加はできないという定説があるからです。
ではその定説を見ていきましょう。
まず、仏教と神道では考え方が違います。
「忌中(きちゅう)」は、仏教では亡くなって49日間、つまり四十九日法要まで。神道では50日間です。
さらに「喪中(もちゅう)」は、仏教では亡くなって1年間、神道では13カ月間となります。
期間は仏教も神道もほぼ同じですが、死に対する定義が異なります。
神道では死を穢れ(けがれ)と考えます。したがって「忌中」は、神様を祀る場所に入ってはなりません。穢れを持ち込むと考えられているからです。
一方、仏教では故人を祀ることで子孫を守る神となるので死を忌み嫌いません。ただし仏教では四十九日(忌中)まではまだ故人の魂は成仏しておらず、「忌中」は個人の成仏を祈る時間となります。
よって「忌中」は仏教、神道を問わず祭りには参加できません。仮に裏方としてでも参加はできないということになります。
次に「忌中」から逆算してみましょう。
まず5月4日か5日にお通夜やお葬式では祭りどころではないでしょうし、5月3日に四十九日法要では翌日からの祭りにとても出られないでしょう。忌中=四十九日法要までは、まだ故人は成仏していないので、3月に入って亡くなったとすると、その年の5月の祭りに出るのは仏教でも完全にアウト!
では「忌中」を過ぎた「喪中」の間ではどうなるのでしょうか?
仏教では「忌中」を過ぎればセーフ。祭りの参加はOKです。
しかし、ここで考えなければならないのは、日本の祭りは仏教由来ではなく、ほとんどが神道由来だということです。だんじり祭りもバリバリの神道由来です。となると、神道では亡くなって13カ月間はアウトとなるわけです(仏教よりも喪中は1カ月長い)。しかし、それでは神社経営は成り立たないのか、神社へのお参りは「忌中(50日間)」を過ぎれば穢れは落ちるとされ、基本的には神社参拝は解禁されます。
そうなると、祭りへの参加も問題ないということです。
かっては自宅でお葬式をする方も多く、ご近所さんがお手伝いしたり、参列されるので、亡くなるとすぐに回覧板が回わったものですが、最近は家族葬が多くなり、特にマンション住まいの方の情報は伝わりにくくなっています。実際「喪中なので」と自分で言わない限り、不謹慎といわれるでしょうが祭りに参加してもわかりません。
ここで大切なのは、喪に服するのは誰のためかということです。
喪に服するとは、当事者が故人への強い悲しみのため、祝い事や祭り事から距離を置いて自粛することです。
つまり、悲しみから立ち直るために、あるいは立ち直ったなら、喪に服することはないのです。
「忌中」を過ぎてなお悲しみが癒えなければ癒えるまで喪に服せばよい。いつまでという期間はなく、ましてや外部の人が決めるものでもなく、あくまでも当事者が立ち直るための期間です。従って恐れることなく言えば、立ち直るために祭りに参加しても良いのではないでしょうか。
ただし奥様のご両親がなくなったった場合は、奥様が悲しみにふける中、祭りに参加して良いものなのかは奥様の状態を鑑み、話し合って決めた方がよいでしょう。老後に遺恨を残すと熟年離婚の理由の一つになりかねませんので、愛を持って奥様と接するべきでしょう。
「喪中」の参加については、若中の年寄り連中でも意見はバラバラで「参加は1年間はダメ」という方もおれば、「1〜3月の葬儀ではその年の5月の参加はきびしいが、5〜12月の葬儀なら翌年5月の参加はOK」という方もいます。
しかし「賄い役などの裏方なら喪中でもOK」は共通の見解です。
そこでネットでググってみると、「日常生活を取り戻しておれば、忌中を過ぎれば特に問題はない」というのが祭りバカの見解でした。
あとは個人の判断にお任せするしかないのですが、老婆心ながら、もし祭りに参加するなら「喪中なんですが」と断っての参加はNGです。
なぜなら年季の入った祭りバカほど、生粋の験担ぎでもあるので、くれぐれもご注意ください。
大切な人を失う悲しみや過酷さ。それでも人は前に進むしかありません。立ち止まることはできないのです。もしも地車に参加することで悲しみから立ち直ることができるのであれば、神様も喜んでくださるのではないかと私は思うのです。