アイドルのグッズマーケティング

【四半世紀のアイドルファンが想うこと★V6★ vol.145】


私の推しの三宅健くんが、来月からソロコンサートツアーを行う。もちろんグッズもある。グループの時と同じくらい、いやそれ以上に種類がある。

その中で一番高いのはTシャツだ。お値段は1000…3000…5000円、いや8000円だ!ううーん、人生で8000円のTシャツを買ったことがない。


先日、料理をしながら、健くんのラジオ(「三宅健のラヂオ」bayfm78)を聞いていた。すると、この超高額のTシャツを熱く説明していた。

 やれ注目の若手デザイナーに自ら声をかけただの、
 やれそのデザイナーが健くんの人生の話を聞きながらかつての愛犬たちをデザインしただの、
 やれ全部日本で作っているだの、
 やれ素材がいいからかえってプリントが難しいものだっただの、
などなど。

普段なら、いくら推しのグッズでも、8000円のTシャツと言われたら相当に迷うだろう。

その上、これはラジオだ。実物なんて見れやしない。

しかし、かえって私の想像は膨らんでいく。

アート好きな健くんが若手デザイナーを抜擢している、今どきTシャツ全部日本製なんて珍しい、プリント大変なんてそんなに質がいいものなのか…。

そして、このラジオを聞き終わった時は、料理でながら聞きだったにも関わらず、私の中ではTシャツ買う方がいいかな、いや買うぞ、という気持ちにすっかり支配されていた。

そして、ネットに向かった私は(コンサート前にネット販売がある)、迷いもせず、Tシャツをポチったのである。どうしたものか熱気につつまれていた私は、そのままその他の買えるアイテムも全てカートに入れて、買ってしまっていたのだ。

ちょいと冷静になってみれば、健くんのマーケティング能力がとてつもなく上がっている気がする。デビューしたての頃とは違うぞこれは。


というわけで、本棚にあるマーケティングの本をめくってみる。『シュガーマンのマーケティング30の法則』という名著だ。探したら、そこにシンプルだが本質的なことが載っていた。

自分が売ろうとしている商品を熟知することだ。
商品について可能な限り勉強すること。製造方法や使用法、さらには特殊な用途があるかもしれない。商品やサービスがお客の心や感覚をどうくすぐるか考えることだ。

ジョセフ・シュガーマン著『シュガーマンのマーケティング30の法則』(フォレスト出版2019年)


私は健くんのこれにやられた。健くんは商品開発段階からアーティストを選んで、綿密な打ち合わせをしてデザインを決めており、当然商品を熟知している。製造方法についても日本製で手間がかかるなどなど。また健くんの愛犬がプリントされており、それを推しである健くん自らが思い入れたっぷりに説明するので、お客であるファンの心はもちろんくすぐられる。


この法則は極めてシンプルだ。
でも実はすごく難しい。
なぜなら、商品が本当に良い物でないと意味がないからだ。
粗悪品をあの手この手で説明しても見透かされてお客の心はくすぐられない。一時騙せてもすぐにバレてしまうだろう。

健くんがデザイン、素材、製造方法にこだわって本当に良い物を作ったのは間違いない。そして、商品を熟知した推しから熱い説明を受けた私の中からはむくむくと購買意欲が湧いてきた。


健くんは意図してマーケティングの法則を使ったわけではなく、いい商品なので高くなっちゃった、でも値段だけで買うのを躊躇しないでほしいという思いからの熱い説明だったと思う。

私は健くんのこの無意識のマーケティングにやられたのである。アイドル界を生き抜く者として腕を上げたな健くん。私の健くんのイメージがデビューしたての頃で止まっていたんだな。
そして推しにやられるのならまあいいやと思ってしまうのがファンの心境である。

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