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【小説】【漫画】最近読んだアレやコレ(2020.3.7)

 ニンジャスレイヤー222の投稿として、忍殺に絡めたミステリガイドを先日書いたのですが、想像以上に多くのヘッズに読んで頂けたようで大変喜んでおります。昔から222には何かしら投稿したいな~と思っていたのですが、私はテキスト作成以外の行為にあまり興味がなく、かつ二次創作小説は書けないタイプの人間なので、こういう変則的な形での投稿となりました。よくよく考えると七割くらい忍殺関係なくないか?とも思いましたが、各作品からヨロシサン・ミステリを帰納的に読み取ることができるという屁理屈によって疑問を封殺しました。言うて、私のミステリジャンルにおける守備範囲はめちゃくちゃ狭く(海外・国内古典名作や、現代日本のポピュラーな作品は全く読めていない)、その狭い中ですら体系化できるほど大した冊数を読んではいないので、ガイドの体裁で偉そうに紹介するのは不相応もいいとこなのですが……。まあ、自分が持つ、ヘッズの平均からやや外れた特性(ミステリ好き)を活かせたという点では、悪くなかったんじゃないかなと。DHTのRTマガジンに収録されたのも嬉しみが深い。


児玉まりあ文学集成(1巻)/三島芳治

 女子高生版文学部唯野教授って宣伝したらバズりそうだなと思ったけれど、全然文学部唯野教授じゃないし、文学部唯野教授の知名度って言う程高くなさそうだし、そういうのあんまりお行儀がよろしくないのでやめようね。私は、キャラクターの関係性のよさをエンターテイメントの中心に据えた作品の消化酵素を持っておらず、中でも、そのよさを何かしらの専門分野ネタを伴って描く作品が大の苦手なんですが(たとえば、私は『バーナード嬢曰く。』が楽しめない)、これはおもしろかった~。割とノットフォーミードンピシャの作品でありながら楽しめたのは、どちらかと言うと関係性よりも専門分野側に傾いている(本当か?)作品であること、何より第五話で炸裂する大仕掛けがデカいでしょう。あれは本当にびっくりした。「うおっ!これそういう作品だったの!?」ってなった。お勧めです。


斬り介とジョニー四百九十九人斬り/榎本俊二

 ジャンプの目次で藤本タツキ先生がおすすめしてたのを見て買って読んだため、「藤本先生、こういうの好きそ~!」が初読の感想の八割を占めてしまった。なんというバイアスか。二人の侍が賊を斬殺する漫画です。マジでそれだけです。全編、百数ページ、ほぼ丸ごと殺人の画だけで埋まり、台詞すらもほぼ全くなし。似たような作品として、百人の盗を延々殺し続ける『百足』などを思いつきますが、あれは賊側のキャラが個性的で、強烈なドラマ性が殺しに付与されているんですよね。本作はドラマすらもほぼ全く混入しない「殺し」の結晶であり……しかし、それほど純度を高めようとも、「殺し」以外の何かが色々と……たとえば独特のユーモラスさとか……が混入してしまうのが、画という媒体の情報量の多さがなせる技なのだなあと。ところで、主人公二人のどっちがジョニーでどっちが斬り介なんでしょうか。


銀の匙(1~15巻)/荒川弘

 農業高校漫画。完結したのでまとめ読み。あらゆる描写に無駄がなく、徹底的に計算された作劇でありながら、計算づくの人工味や嫌味がなく、紙面の向こうにリアルな世界の広大な奥行きを感じられ、キャラクター一人ひとりの知識や嗜好や認識の差異が彼らに確かな血肉を宿らせ、いくらでもこうして賛辞を書き連ねることができる、とんでもねえ傑作だと改めて。活躍する学生たちは皆飛びぬけて優秀かつ善良で、そういう点ではファンタジーなのかもしれず、ある種の青春RTAとなってしまっている側面もありますが……しかし、それでもそれぞれにできることの限界がしっかり「等身大の高校生」に収まっている(ように見える)のが好きですね。タマコちゃんはアレですが。あと、作中の時間経過速度がガンガン加速してゆくのが、学生時代の体感時間としてすげえリアル。伊坂幸太郎の小説でこういうギミック見たことあるよ。しかし、社会人の立場からすると、本作の教師たちにはちょっと憧れちゃいますね。この激務の中、学生のピザパーティや起業に余裕を見せて(少なくとも大変であることは表に出さず)向かい合い、体系化して今後の糧にしているのが凄すぎる。かっこいい。こうありたいものです。


別式(1~5巻)/TAGRO

 ガールズトーク時代劇。現代的なゆるふわ女の子部活ものを、現代とはほど遠い時代劇な世界観・価値観に落とし込んだことで生まれるもの。それはは必然的なガールズトークからの逸脱であり、するべきでなかった代入がもたらす計算結果は、やはりおおむねが悲劇に辿り着く。五人の主人公の現状認識・背景・思考・心理・技能の組み合わせは、極めて強固な必然性と理を持って彼女たちの人間関係を加熱し続け、やがてはその結合を破壊し、残酷な別れをもたらす温度に達する。濃厚な情のドラマでありながら、徹底した理詰めの作劇が光る作品であり、感情移入からすっと身を引いてみると、ある種のパズルとしても楽しめてしまうと思います。本作は恋愛ものの一言でくくることはできませんが、恋愛ものの作品で私が最も好むタイプの奴であり、ツボでした。ちなみに、友人にスクールデイズのアニメをロジックミステリと紐づけて高く評価している者がおり、これはきっと彼はおもしろかろうと薦めたところ、評判がよろしかったです。参考に。