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【小説】【漫画】最近読んだアレやコレ(19.12.25)

 メリー・クリスマス!クリスマスいいですね~。正月もそうですけど、こういうハレの日は無根拠にウキウキワクワクします。スーパーで鶏肉買って焼いちゃう。気分がいいので「ニンジャスレイヤー:秘密結社アマクダリ・セクト」「太陽の塔(漫画版)」「クリスマス・テロル」あたりをアレやコレしてクリスマススペシャルにしようかと思ったんですが、クリスマスを題材にした漫画がもう一冊見つからなかったし、そもそも最近読んだアレやコレでもなんでもないのでやめました。あと、ポケモンまだちまちまやってるんですけど、楽しいですね。私は対戦に全く興味ないのですが、電気技を全て忘れさせアイデンティティを喪失したライボルトくんに火を噴かせたり、ゴミ袋三匹とアブ三匹をキャンプに集めてドガース級カレーを作ったり、邪悪な一人遊びに励んでいます。

大ダーク(1巻)/林田球

 髑髏の意匠に、有機的な建造物、マスクを被った連中はオゾく、幼い顔立ちの男性(今回は実際少年ですけど)とガタイのごつい巨乳が暴れ、ゴアにゴアにゴアにゴア。すなわち林田球が林田球だけを林田球でやっている林田球であり、つまり最高の漫画だということです。「宇宙というどこまでも広がる黒い暗闇のどこか。」という冒頭モノローグの時点でもう百二十点!って感じであり、そのバシバシに決まったスタート地点が、何が何だかよくわからない混沌の脚本をよくわからないままにまとめあげてしまうマジック。ポップでキュートでグロテスク、バイオレンスにクレイジーなコズミックに一本筋を通すのは、少年めいたか細く繊細な針金。つまり、この世界の全ては……暗黒の中。それが……ドロヘドロ!じゃなくて、大ダーク!


地獄の楽しみ方 17歳の特別教室/京極夏彦

 妖怪小説家・京極夏彦さんの中高生向け講演会の記録。なかなかマニアックな一冊なのですが、内容としては、京極作品全テーマ・全作品の総まとめと言った趣があり(具体的な作品名は全然出ませんけど)、ファンとしてはどちゃくそ嬉しい一冊でした。言語呪術によって地獄みてえな現実をなんとか楽しくやっていこうぜ!という内容なんですが、小説、特に推理小説を読む楽しみをレベルアップさせるヒント集として読むこともでき、より一層狭い範囲での話をするならば、『ニンジャスレイヤー』をより楽しく読むガイドにもなると思います。京極作品とモーゼス&ボンド作品は、多くの点で共通のおもしろさがあると思うんですよね。あと、私の普段のニンジャスレイヤー感想文は、七割が京極夏彦作品からの引用だと改めて自覚しました。(残りの三割は森博嗣作品です)


ワールドトリガー(21巻)/葦原大介

 世界一おもしろい漫画の最新刊なので、当然、世界一おもしろい最新刊です。つまり読者数は77億人と見て間違いなく、今更私が感想を書くまでもないと言えるでしょう。そもそも、一コマあたりに超密度で込められた情報量が、ドラマ、テーマ、バトル、キャラの全てを語りつくし切っているこの作品に対して、語れる余地なんて大して残っているはずがなく(感想を読んだり書いたりする暇があるなら再読しろ)、すげえ~とか頭いい~とかやべ~くらいしか言えないのですが、強いていうなら本作のハイライトはロジカルに展開されるチカちゃんの情ドラマだったかなと。葦原先生こういうのも書けるのかという衝撃と共に、こういうの書いてもどうしようもなく葦原先生だコレという納得が襲いくる。情のドラマを経てもなお、チカちゃんの言葉の正誤をユーマの真偽判定にゆだねるドライさも素晴らしい。


スズメバチの黄色/ブラッドレー・ボンド、フィリップ・N・モーゼズ、本兌有、杉ライカ

 中華風ヤクザサイバーパンク小説にして、ニンジャスレイヤーの外伝作。読むのはおそらく今年入って四回目。偉大なる先行作品のイメージをパッチワークで継ぎ合わせ、神話めいた物語原型で叩きに叩きに鍛えに鍛え磨き磨きぬいた果てに出来上がった「本物」にして「最新」のサイバーパンク。本作と共通するイメージを持つ作品は2019年末現在、他にも多くあると思いますが、おそらくこの作品が、現在時系列における頂点だと思います。大して類似作を読んでいない私がこんなことを言うべきではないでしょうが、それほどまでに、この作品は、凄まじく美事に仕上がっています。こうして、上から偉そうに感想を書くことすら嫌気がさすほどに、輝いてます。ニンジャスレイヤーには他にもおもしろい作品、熱い作品、様々ありますが、「エンターテイメントとしての強度」というシンプルな指標だけで見た時、『スズメバチの黄色』が最強だと私は思います。