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あくまで肌色

「ザクロのように頭が割れた」だなんて普通の言い方をしたくないほど雪絵は特別な女の子で、胸もびっくりするくらい大きくて髪もふざけてんのってくらいさらさらで本当にありえないんだけど、でも実際それはザクロみたいだった。

 友達同士で集まって徹夜で映画を観ようっていうスペシャルな土曜日だった。私は部屋の掃除で、雪絵は料理。シチューを食べきれないくらい作ってよそってこちらに差し出してくる雪絵は、エプロンまでしちゃってて、その構図がなんかもうほんと「絵画」って感じで完成してた。だから私はたまらなく彼女の頭を持ってきた金づちで割ってしまった。時間が停まるくらいの衝撃があって、宙に投げ出されたみたいにそれは凄くて。

「……よし」

 ふわふわした気持ちを切り替える。飛び散った血とシチューをとりあえず掃除しよう。自首とかそういうのは明日考える。そう決めた時、玄関のチャイムが鳴った。なんだろう? 怖い。バレるとかじゃなく、雪絵の家に今日お客様が来るなんて知らない。

 そろっとレンズをのぞくと、トマトとカブが学生服を着て立っている。

三室雪絵さま、契約の時間です

「なんで野菜が喋ってるんですか」

 びっくりして受け答えしてしまう。トマトとカブが口もないのに喋ってる。

三室雪絵さま、契約の時間です

 野菜だから頭が悪いのか同じことを繰り返した。契約って何。明らか人間じゃない相手に契約って、悪魔とか? 雪絵は確かにオカルト趣味なところがあったけど、いや、さすがに意味わからなくて凄い。契約……何か取引したってことだよね。雪絵は何を悪魔に渡すんだろう。

 ちょっと考えて思いついた。玄関を離れ、台所に行く。コンロの横にヤバげな小瓶が置いてある。絶対これ。毒だ毒。雪絵は私を殺して魂的なやつを悪魔に渡そうとしてたんだ。つまりそれって、雪絵も今日私を殺そうとしてたってことで、そんな偶然……なんか運命的で私は嬉しくなってしまう。

【続く】