見出し画像

逆噴射小説大賞感想戦(後編)

 いやー大盛況の内に終わりましたね逆噴射小説大賞! あと二日ある? 残り二日分の投稿作を書き終えちゃったからもうやることがねーんだよ! そんなわけで忘れない内に後半六作分のライナーノーツを残しておこうと思います。投稿期間中はバイアスがかからないよう他の参加者の投稿作は読まないようにしていたので、これからガンガン読んでいきたい。噂によると相撲ジャンルが流行っていたとか……。相撲小説と言えば、私は筒井康隆の相撲ホラー「走る取的」が大好きなので、投稿作でおすすめの相撲ホラーがあったら教えて欲しい。

◆◆◆◆◆◆

【H30.10.26】さよならエニグマまたいつか

 暗号誤読ミステリー。リンカーン・ライムシリーズ、岡嶋二人作品色々特に殺人者志願、荻原浩のお仕事小説をリスペクトしました。我ながらよくこんなおもしろそうなネタ思いついたなという個人的なスマッシュヒット。奇の衒い方がほどほどで、喉越しがなめらか、いやらしさがないと自画自賛しております。暗号解読もの、ダイイングメッセージものは下手をすればただのなぞなぞになってしまうという難しいところがありまして、じゃあ、暗号の正解を探るのではなく、暗号を誤読させるためにあれやこれや苦労するシチュエーションコメディみたいなのにしたらどうだろうと考えたのが大元です。推理小説の推理って偶に外れルートの方がおもしろい時があるよね! あと「安号解読」というタイトルを投稿ギリギリに変えたという秘密があります。変えてよかった。


【H30.10.27】二人の寸刻みシアター:邦画編

 映画紹介スプラッター。邦キチ!映子さん、シネマこんぷれっくす!、怒りのロードショー、そしてネズミ君と怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男をリスペクトしました。最近、映画鑑賞人漫画にハマっておりまして「好きなものを楽しそうに語る人を見るのはいいなあ」という気持ちだったのですが、それが後者二つのリスペクト先と悪魔合体した結果、最悪の形で出力されてしまいました。どうして、どうしてこんなことに……。この作品、逆噴射小説大賞投稿作としては大きな欠陥がありまして、映画レビューしてると400字がそれだけで埋まるんですよね。結果、最も大切な「映画を語る」様が全く書けてない。本末転倒! あと「興味のない映画を無理矢理観させられるのは拷問」に対してフェアであるために、言及する映画はあえて私の大々々好きな映画にしました。『ジャズ大名』はいいぞ。荻上直子監督映画もいいぞ。


【H30.10.28】歯抜けの犬は肉を噛めない

 老々スラッシャー。ローレンス・ブロックの殺し屋、trash.、AX、日の出通り商店街いきいきデー、そして言うまでもないですが銀齢の果てとニンジャスレイヤーをリスペクトしました。投稿文で書いた通りのシンプルなコンセプトの作品なんで、ライナーノーツに書くことが特に何もないですね! 中島らもの酒気帯び車椅子よろしく、武装車椅子とか出したいですけど、たぶんそんな見栄えのいい派手なバトルにはならないと思う。あと紹介ツイートで書いた「八十にして心の欲する所に従って矩をめちゃくちゃ越えまくる」ってコピーが個人的にとても気に入ってるのでここに書き残しておきます。


【H30.10.29】完璧なディストピアの作り方

 新本格ディストピアSF。メフィスト賞受賞作色々、バベル崩壊、そして20世紀少年のともだちさんと鉄鼠の檻の小坂了稔さんをリスペクトしました。私、推理小説の文脈を知った上で登場人物が推理小説に参加している推理小説がとても好きでして……わかりにくいですね……極端な例を挙げると「推理小説みたいな密室殺人を起こすために密室を作った」とかそういう歪なのです。そんなミステリが「新本格」の土俵でやっていることを(まあ、新本格以前からこういう作品ありますが)、他のジャンルに適用したらおもしろいんじゃないかなとそういう感じです。ネオサイタマはクソだしアマクダリもクソだけど、僕はネオサイタマもアマクダリも大好きなんだ。


【H30.10.30】緋色の改竄

 特殊道具ミステリー。虚構推理、トリモノート、SCP財団をリスペクトしました。怪奇現象を誤魔化すためのカバーストーリーの構築を「筋の通った推理の組み立て」という形で探偵役の仕事に持ってきたら楽しいだろうなという発想が核となっています。それもうほぼ虚構推理のパクりでは? タイトルは緋色の盗用の方がいいのでは? ともう一人の自分が囁きましたが聞かなかったことにしました。あとここまでの投稿作がどれも会話文に乏しいものだったので、今回はほぼ会話のみでやったろうというチャレンジをしました。さらにもう一つ、説明なく固有名詞を大量に出したろうというチャレンジをしました。チャレンジ+チャレンジ+特殊な設定の三重苦でそうとうわかりにくい代物になっているのではないかと危惧してますが、はてさて。


【H30.10.31】温泉街の怪人

 温泉ヤクザノワール。函館の湯の川温泉、きつねのはなし、エリア51をリスペクトしました。函館の湯の川温泉の何がすばらしいかって、路面電車が街中を走っているところですよ。雪国×温泉街×路面電車という高濃度叙情と高濃度叙情と高濃度叙情をかけあわせたその情景の味わい深さたるや凄まじく、ちょっとした異世界に迷い込んだ気分になります。その強烈にイメージにアクセントとして落とすならば、やっぱり黒と赤かなあということで怪人さんにご登場願い、400字のイメージポスターとなりました。今回の投稿作では、唯一、ストーリー先行ではなく、ビジュアル先行で作った作品であり、この先どうなるか全く予想がつきません。未来へ……。