見出し画像

【映画】犬と車

 勿論、ジョン・ウィックの話です。先日、映画館に観に行ったニンジャバットマンが抜群におもしろく、久しぶりに映画欲がもりもり湧いてきてしまい、それが「キアヌが人をぶち殺す映画が観たい」という欲望に具体化したのでアマゾンビデオ致しました。すっかり忘れていたのですが逆噴射映画祭の対象作品でもあったのですねこれ。なるほど道理で超おもしろいわけだ。やはり逆噴射先生のプレイリストは信用がおける。あ、以降ネタバレありです。

 くたびれたキアヌと犬の組み合わせの時点で勝ったようなもんですが、その上、犬を殺されキレたキアヌがマフィアを銃でバンバン撃ち殺すんだからそんなんもう百点満点じゃんって感じですよね。感情を煮詰めた結果、話の通じない災害のような存在になってしまったキャラクターが大暴れするのってなんでこんなに心が躍るのか。キアヌが絶対無敵の超人でないところがいいんですよ。いや十分に超人なんですけども、なんというか普通にピンチになるじゃないですかこのキアヌ。たぶん、立ちふさがる扉を一撃で打ち破る怪物よりも、腕を血みどろにしながら万発殴って打ち破る怪物の方が好きなんですね。怪物性を宿した精神に引きずられ、肉体と行動が正常を逸脱するのが好きなんです。

 復讐の動機が「奥さんからもらった犬」だけでなく「自分の愛する車」にあるところもよかった。復讐鬼の物語としては、それは不要なゆらぎなのかもしれませんが、でもやっぱり車も大事なんですよ。うまく言葉にできないんですけども、犬だけじゃあ人間やっていけないよなあって思いました(ふわふわ)。なので、この映画、最後は奥さんからもらった犬と別れ、自分で選んだ犬を拾うという完璧なラストカットで終わるわけなんですが、車を取り戻すシーンも欲しかったなあって思いました。いや、もしかしたら見逃しただけで取り戻してたかもしれないですね……。どうでしたっけ? 続編のあらすじには車を取り戻したって書いてますね……。

 主人公の話ばっかりしちゃいましたが、敵方であるマフィアの親父も大変魅力的で。このおっさん、自分で息子を見捨てる判断をしておきながら、いざ息子が殺されるとその計算がどっかにぶっとんじゃって、ぶちギレてキアヌを殺しにかかるんですね。当然ですよ。犬を殺し車を盗んだクソ野郎は殺さねばならない。だったら、息子を殺したクソ野郎も殺さねばならないんです。そうしなければ一歩も進めない。己が立ち行かない。そのことに気が付いてしまう。気が付いてしまった。理の檻をぶち破り人間の中から感情のバケモノが解き放たれる。檻の中に戻り、再び人間になるには、もう一頭の怪物を食い殺すしかない。犬と車に決着をつけるしかないんです。