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ポオの異能と白紙の文学書は似ている(お題箱から)

※この記事は文豪ストレイドッグスの考察です。
※お題箱に頂いたお題への返信です。

頂いたお題はこちら:
ものあしさんこんにちは!
以前の国木田さんの異能力が本の力と似ているという記事があったのですが私は本の力とポオ君の能力が似ているなぁと思い共通点と違う点をまとめてみました!
共通点
・色々な可能世界がある
・その世界から脱出(?)できる
違う点
・記憶がすり替えられない
・書いたときに叶うのではなく他人に見せてから叶う
こんな感じなんですけど...
ものあしさんはどのように考えているか教えていただけると嬉しいです!


お題を頂きありがとうございます!そして返信が遅くなってしまい本当にごめんなさい!!

国木田さんの異能と白紙の文学書が似ているという考察、読んで下さりありがとうございます。これですね。

言われてみれば、ポオの異能も確かに白紙の文学書に似ていますね!お題主様のおっしゃるとおりだと思います!


■ポオの異能力

ポオの能力は「読者を小説の中に引きずり込む」異能ということですが、もう少し分解してみるとこんな感じでしょうか。

・書いた小説を異能空間にする(小説の中に異能空間が展開される)
・読んだ人を現実世界から異能空間に転送し、その中に閉じ込める
・読んだ人はミステリの登場人物として小説の世界に強制参入させられる
・推理して謎を解くことで小説が完結し異能空間が閉じられる⇒脱出可能

言い方を変えてみると、事件編だけが書かれた解決編のないミステリをポオは書いていて、読者は登場人物になって解決編を自分で紡ぎ出さないといけない仕組みになっているような感じかなあと。

ポオの書く小説は本の形になっているときもあれば、携帯の画面に映し出された電子書籍のときもあり、本そのものが異能というよりは「ポオが書いた物語という文字情報から異能空間を展開する」異能に近いものと思われます。そしてその本なり携帯なりが破壊されると二度と出てこれなくなるんでしたよね。異能空間そのものとともに登場人物も破壊されてしまうのかな?

こんな感じのポオの異能力ですが、白紙の文学書のミニチュア版と言っても差し支えないかもしれないなあと個人的にも思いました!

■ポオの異能と白紙の文学書の共通点

白紙の文学書が実際どんなものでどんな機能を持ってるのかよくわからないので、憶測と妄想を混ぜながら私も共通点などを探ってみようと思います。

【前提】
白紙の文学書に書き込むと世界そのものが改変され、記憶も書き換わる。これは小説の書き手が小説の内容を書き換えると物語や登場人物そのものが変化していくのと似たような現象。ということは、白紙の文学書は文スト世界の原稿に近い存在ということになる。

【共通点】
・原稿用紙を持っている限り、物語の書き手はその世界を好きなように書き換えられる。
・ポオの小説はミステリなので白紙の本と同じように物語的な因果整合性が求められそう。(人が死ぬためには殺人事件や犯人が必要etc)
・可能世界=ポオの頭の中に無限に存在しているあらゆる物語の可能性?
・書き手が書いた物語の続きを、登場人物は自分たちで紡いでいくことができる。
・お題主様が言っていた脱出できるという共通点は、頁を破って記憶改変を突破すること=脱出ということかな?白紙の本に書かれた世界が偽物の世界なのだとしたら、本物の世界の上にスクリーンのように覆い被さっている偽物の世界(=洗脳)から脱出することは、確かにポオの異能空間から脱出することと似た構造ですね。

こんな感じですかね?似てる似てる。
ポオの小説はミステリの謎解きがされて完結したら、小説が閉じられて登場人物が外の世界に出ますが、これも文ストの物語が完結したら登場人物たちが外に出てこれる未来を暗示しているような気がしないでもないので、もしかしたら隠された共通点だったりするかもしれないですね!

いやあ、こうやって考えるとポオってめちゃすごい。とんでもなく重要なキーパーソンな気がしてきますね。あんな愛らしいくせにね。

ではなぜポオはこんなにもさりげな〜く重要そうな役割を担わされているのか、というところをちょっとだけ史実に照らし合わせて考えてみようと思います!

■史実のポオってまじすごい

ポオといえばミステリ作家のイメージが強いですよね。実際文ストのポオくんも物奇組に属していて、ミステリ作家のひとりという立ち位置が定着しているように思います。

しかし実際は、様々なジャンルをリミックスさせたことにこそ史実のポオのすごさがあると言われています。
ポオの書く作品はミステリに留まらず、ゴシックロマンス、SF、冒険小説など多岐に亘るジャンルを横断していました。

そのためか、影響を与えた範囲は広大で各ジャンルの大御所たちはこぞってポオを賞賛しています。
SF作家のヴェルヌやHGウェルズ、ミステリ作家のコナンドイルやアガサクリスティ、ご存じドストエフスキー、そしてもちろん江戸川乱歩も。
アガサとドストに影響与えてる時点でこれもうポオくんラスボスを超越してますよね?そう思っちゃいません?

この「ジャンルごちゃまぜ」なポオの姿は文ストでも見ることができて、それが漫画32話アニメ22話の『ポオと乱歩』。
乱歩がポオの小説の謎解きをしたときに明かされた小説の設定はなかなかぶっとんだものでした。
「小説の舞台は2050年。宇宙へと続く軌道エレベーターに付設された休憩施設」「自動機械による殺人」「犯人と作者が共犯であるメタミステリ」
なんかこれ、非現実的すぎてやべえ話だな…こんなミステリありなのか?と私は思ってしまったのですが「読者を惹きつけたり度肝を抜いたりするために効果的なことならなんだってする!どんな題材のものでも使ってやる!この独創性を見よ!」という姿勢は史実のポオと共通するところがあるように感じます。

[23.08.22追記] 
この件に関して史実に詳しい相互様から貴重な情報を提供頂きましたのでご紹介します。

ポオのSF小説『メロンタ・タウタ』は、2848年が舞台、科学技術が発展した世界で軽気球の高速昇降と大容量積載が可能になった未来の話です。メインは哲学的論考で世界観はサブ要素なのですが、ややあの異能メタミステリと似通っていると思いませんか?ポオ氏の多彩さの右に出る作家は世界のどこを探してもなかなかいないんじゃないかと思っています。(相互様より)

ポオはもともとは雑誌の編集者をしていたので、読者の関心事や読者の望むものが何かということを常に意識していたと言われています。読者の興味を惹きつけて、いかに飽きさせずに最初から最後までちゃんと楽しませることができるか、それを何よりも大切にしていたようです。そのために必要なものはなんでもかんでも作品に投入する、その結果として多くのジャンルにまたがる作品群が出来ていったということかなと思っています。

そんなポオは恐怖心という感情が持つ引力がすさまじいことに気づいていました。恐怖心というのは読者を作品にぐいっと入り込ませるための便利な道具でありながら、ときにスパイスとなって感情の強いドライバーとして機能する。そういう背景から、怪しさや不気味さに満ちたゴシックロマンスをポオは好んで書いていたと言われています。

ポオが発見した感情のドライバーは恐怖心だけでなく、謎解きや推理による精神的な高揚感も読者を強く惹きつけることにいち早く気づいていました。
そうして生み出されたのが「名探偵」という存在であり、密室殺人や謎解き、推理といったものが組み合わさった「推理小説」という存在でした。
名探偵も密室殺人も推理や謎解きも、現存するミステリに必要な要素はすべてポオがたったひとりで編み出したものなんですって。
そんなポオは紛れもなくミステリの創始者。とんでもなく偉大な功績を成し遂げたその原点にあったのは「読者が夢中になれるものを書きたい」という純粋な想いと、人間心理を徹底して観察したポオ本人の実直な姿勢だったのかなと思います。

青空文庫さんにもポオの作品は沢山掲載されていますので、文豪界の巨人たちがこぞって名前を挙げる"始祖"ポオの実力を、未読の方にもぜひ堪能してほしいなあと思ってます。

いくつか影響力の大きかった代表的な作品をご紹介しておきます。
・ミステリ⇒『モルグ街の殺人』
・SF冒険小説⇒『アーサー・ゴードン・ピムの物語』
・恐怖小説⇒『アッシャー家の崩壊』『黒猫』
・謎解き⇒『黄金虫』

ポオの書く言葉には、もわ〜っとした煙を生み出す作用があるなあと個人的には感じています。文章から煙が立ち込めて一文読むごとにその煙の波が襲い掛かってくる、そういうものすごい空気感がある。次第に煙は濃密に絡みついてきて、いつの間にか自分自身がすっぽりとポオの世界の空気に包み込まれてしまう。そこは紛れもなく「ポオの異能空間」。小説を読み終わるまで身動きが取れなくなり、ポオの煙で充満した異空間からなかなか出ることができません。

読者の視点をとても大切にしていたポオの小説には、最後まで一息で読ませてしまう魔力がありますので、文豪の作品は長くて難しくて苦手だと思っている方にこそ、ぜひおすすめしたいなあと思っています。

ということで、こんだけすごいポオなんだから文ストポオくんが物語の根幹に関わるような重要な役割を担っていても、なーんにも不思議ではないですね!ポオくんのこれからの活躍、楽しみです。
新鮮な視点のお題を頂き、ありがとうございました!

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