ストブリでの暗殺標的について
※この記事は文豪ストレイドッグスの考察です。
※小説STORM BRINGERのネタバレを含みます。
ストブリには、当初ヴェルレエヌが予定していた暗殺標的を太宰が変更させたという描写があります。
ヴェルレエヌがもともと考えていた暗殺標的と太宰が書き換えた暗殺標的にはどんな違いがあるのか。
気になったので、考察してみました。
まずは、情報整理からです。
ストブリの時系列
【2日前?】
・ヴェルレエヌがマフィアに潜入し、蘭堂が集めた荒覇吐の資料を閲覧
・ランボオの帽子を手にする
・マフィアの警備員を殺害
・「相棒を殺してくれたことに感謝する」
【1日前】
(マフィア襲撃を知った森が太宰に指示。太宰が作戦を開始)
・太宰とヴェルレエヌが接触
・ヴェルレエヌが太宰を殺そうとする
・太宰がヴェルレエヌにマフィアの内部資料を渡すのを約束。暗殺標的と順序を情報操作によって変更。
・ヴェルレエヌが密入国業者に物資調達を依頼
・アダム着陸
【初日】
・中也が旧世界へ [朝]
・アダムが旧世界訪問
・ヴェルレエヌと接触
・門を開く
・太宰の異能無効化
・旗会の死
【翌日】 (昨日の炎)(遺体を繕うのに8時間)
・朝から密入国業者をアダムが調査、調達物資の情報を入手
・旗会の葬儀 [午前]
・白瀬に会いに行く [昼前]
・刑事に捕まる [昼頃]
・中也が警察署から太宰に電話
・(タイミングを同じくして)太宰とヴェルレエヌが接触。「2日前」の話
・ヴェルレエヌと警察署で戦闘
・刑事の死
・Nからの電話 [午後]
・研究施設を訪問
・拷問と戦闘
・太宰の到着
・ヴェルレエヌがNを連れて脱出 [夕方]
・ヴェルレエヌとNがタワークレーンで会話 [夜]
・列車襲撃
・マフィアとの総力戦
・魔獣ギーヴルvs荒覇吐
・ギーヴル消失
時系列はこんな感じになっているかなと思います。たった一日で刑事暗殺~マフィアとの総力戦までやってのけたヴェル兄がすげえや…
超級異能者の実力、その素早さ、的確さ、戦闘力すべてが異次元だってことがよくわかります。それも1人対組織ですからね。ランボオがいた頃はもうそれはそれは無敵だったんじゃないでしょうか。
時系列からもわかるように、ストブリには存在するはずなのにまったく描かれなかった「1日前」が存在します。
森が太宰に指示を出し、太宰がヴェルレエヌに殺されそうになりながらも情報で吊って、暗殺対象を変えさせたと思われる空白の1日です。
ここが描かれなかったがために、当初の暗殺標的や標的を変更した太宰の意図がわからないままになっていて、私含めみんな煩悶してるんですよね。憎いぜ。
ということで想像力を働かせて推測するしかないので、ここから先は予想です。
ヴェルレエヌが想定していた暗殺標的
まずヴェルレエヌが当初思い描いていた暗殺標的について考えてみましょう。
個人的にヴェルレエヌの判断基準は「中也を利用している人物」だったのではないかなと予想しています。
以下はヴェルレエヌが言った中也への勧誘文句の一部抜粋です。
ヴェルレエヌが思い描いていた標的は、まさにヴェルレエヌにとってのランボオのような存在だったのではないかなと。
ヴェルレエヌはランボオに利用され毒され続けていると考えていた。
そしてヴェルレエヌはそのランボオに長く苦しめられていたと思います。
(参考:過去の考察記事→ヴェルレエヌの感情描写について)
だから自分と同じように弟も、弟にとってのランボオのような存在に苦しめられているに違いない。だから俺が、弟のまわりにいるランボオのようなやつから弟を自由にしてやる。そう思っていた可能性がありそうです。
弟にとってのランボオとは、組織の中で甘い顔をしながら弟を利用しようとする人たち。
そう考えると、標的にはマフィアの中で特に仕事上繋がりの深い人物が入ると思われます。森さんや姉さんのような。
だからこそ1番目の標的は森だったのでしょう。
傍から見れば、ヴェルレエヌが2つ思い違いをしているのは明白です。
ランボオのことを自分を利用しようとしているだけだと思ったこと、そして弟も自分と同じ感情を抱くに違いないと思ったこと。
私はヴェル兄大好きなので、こういう思い違いをしているあたり、すごく人間臭くて好きです。
ストブリの登場人物で一番人間臭いのはヴェルレエヌだと個人的には思っています。
太宰が暗殺標的を変更した意図
さて、次は太宰がヴェルレエヌの暗殺標的をどのような意図をもって変更したのかを考えてみましょう。
手始めに、暗殺標的を決定したのは僕だと太宰が語ったシーンについて、おさらい。
ここで暗殺標的を列挙したときに「旗会」って言わなかったのがずるいですよね。これ中也が聞いてたら、ヴェルレエヌよりも先に太宰を殺してます。
さて、太宰が用意した暗殺標的は①旗会 ②刑事 ③N ④森
彼らに共通する特徴はこちら。
中也を愛する(気にかけ、優しさを向ける)人物。
(※あかね屋さん、ご意見ありがとうございました!!めちゃくちゃ参考になりました。)仕事の繋がりのある人たちではない。部下や同僚としてではなく、中也と個人的な繋がりがある人物。
最後の森は、マフィアとの総力戦に持ち込むための意図的なもの。
ではなぜ太宰は敢えて、中也と個人的な繋がりのある人物を選んだのか。
太宰は森の指示に従って行動を始めたと思います。その狙いは、ヴェルレエヌの逆暗殺、森の保護、中也の保護。
そしてもう一つ、太宰は個人的な狙いも持っていたと思います。それが、かの有名な台詞「僕は人間として中也が苦しむのを見たい」ではないかと。
太宰は中也を人間に押し留めておきたかったようです。(理由はさておき)
そのため、暗殺標的を巡る旅は、同時に中也を人間に押し留めておくための旅である必要があります。
太宰はランボオの手記を読んでいたし、太宰とヴェルレエヌはどこかで共感し合っていました。
ヴェルレエヌが人間であることをやめ、獣として憎しみを追い始めたのは、彼が自分のまわりには自分を利用しようとする人しかいないという考えに至ったからではないか。ヴェルレエヌに必要だったのは、組織や相棒に関係なく、一個人として自分を見てくれる人、利用しようとしてない人だったのではないか。手記を読んで太宰がそう悟った可能性があります。
だとすれば中也が人間であり続けるためには、中也のことを気にかけてくれる人がいること、利用しようとしてない人たちが存在することに気づかせてあげるべきだと思ったのかもしれません。そうすれば中也は自分に自信を持てるようにもなります。
中也を人間に押し留めたまま、彼の中に怒りを呼び起こす、その両方を実現できる選択肢が必要でした。
結果的に太宰の選択は、人間に押し留まった中也の心をぐちゃぐちゃに搔きまわしました。怒りと復讐心に火をつけたことで、無事ヴェルレエヌの撃退と森の保護を達成できたわけですが。
命が燃えてる、と中也は言ったけれど、命が多ければ多いほど燃え盛る炎も大きいわけです。
太宰の選択は「中也を人間として苦しめるため」にふさわしいものであり、残酷で闇が深いものの、効果は絶大だったと思います。
もし殺されていたのが、森さんや姉さんだったら、中也はどうなっていたのか。人間であることをやめ、兄と共に復讐の道を歩んだのか。
まだまだ想像の余地はありそうです。
以上、色々考えてみた結果でした。
真実は...もちろんわかりません...
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