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カザマのこと (麻雀)

「カザマが帰ってきたんですよ。出所祝いをしましょう」

しれっと書いているけれど、出所っていうのは
刑期を終えて刑務所から出てきた、っていうことで
帰ってきたっていうのは、フランスから帰ってきた、
っていうことだった。
この組み合わせは、ちょっと珍しいんじゃないかな。
もちろん私の身の回りでもそうそうあることではなくって、
いまだにこんな体験をしてきたっていうのはカザマだけだ。

前科持ちと酒を飲もうって、誘われているのだな、
これは。
ぜひぜひ飲まなくっちゃね。

ガルちゃんからそんな電話が来たのはいつ頃だったかな。
そんな初体験は覚えておけよ、っていう話だが
なにぶん、それが当年50がらみの記憶力、
ということなのかもしれない。

私は麻雀雑誌の仕事をちょこちょこしていた頃だったかな。
ガルちゃんは大学7年目か8年目じゃなかったかな。
もう卒業した後だったか?
大学も9年までいければイッツウ完成なのに、
なんていってたような、そうでもないような。
ガルちゃんは、また面白いおとこなのだが、
ガルちゃんについては、また記すこともあると思う。


昭和っぽいはなしなれど、21世紀にはなっていた頃。
今でもそうではあるんだけれど、
私はあまり生産性のない暮らしをしていて、
あまり一緒にしちゃあいけないかもしれないけれど
ガルちゃんもカザマもそんな感じだったと思う。
カザマは小ばくちが好きで、
働くことがあんまり好きではなかった。
よくいる普通で、さらに自分に正直な男だったってこと。
そして、その頃の雀荘では、そんなやつ珍しくもなかった。
どっかから金を引っ張ってきては安いレートの雀荘で
ごろごろしてるんだよね。
あと、うだうだ、とか、だらだら、してる。
お金は無いけど、時間だけは無限にあるような気がしてた。

ガルちゃんとカザマは同じ雀荘で顔を合わせた間柄だったそうで、
東京に出てきても、ちらちらと顔をあわせていたみたい。
麻雀打ってると、面白いやつらと知り合うことが多かった。
カザマの出所祝いっていうのも、まあ冗談ではなくて
しっかり悪いことしたのが咎められてから、
刑務所で罪をあがなってきたんだそうな。
犯罪、ダメよ。ゼッタイ。わりとちゃんと捕まります。

カザマは日本なんちゃらプロ連盟にいたとか辞めたあとだったかで、
前科がつくと段位が上がるんだったら辞めとかなきゃ
よかったんじゃないか、
なんて悪い冗談いってたっけか。

そんな生産性のない3人が高田馬場の安い焼き肉屋で飯食って
まったく生産性のない話でげらげら笑って
はしごした安い飲み屋でも果てしなく生産性のない将来の展望
などをつまみに、べろんべろんに酔っぱらった挙句。
楽しい時間はあっというまに過ぎ去ってしまうので、
気づかぬところで電車は車庫の中で止まってしまい、
カザマの部屋で時間をつぶすことになった。

まったくどうでもいい話なんだけど、
夜中まで麻雀してて
「電車が無くなるから、これラス半で」
っていうと
「電車は無くならへん。止まってるだけや。もう1本打っておいき」
っていわれて朝まで帰させてもらえなかった、っていうのも
ガルちゃんとカザマが行っていた雀荘の話。関西は面白いよね。

で、夜と朝の間、べろんべろんとぐでんぐでんの間の3人は
早稲田あたりに借りていたカザマの部屋へ。
途中で買った缶酎ハイ片手に、ちゃぶ台のまわりに腰かけると
カザマが嬉しそうに、
「ムラタさん、バカラをやりましょう」

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