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伝説の麻雀プロ・ホウジョウさん(麻雀)

むかしむかし。
平成の御世になって少しした頃。

スーパーファミコンで遊べる麻雀ゲームソフトがありました。
その名も『極』
きわめ、って読みます。
当時はまだ3つだった『麻雀プロ団体』、
プロ連盟、最高位戦、101競技連盟から
多数の麻雀プロが対戦相手のキャラクターとして登場!
プロからのアンケートなどを基にして
CPUキャラクターのアルゴリズムにプロの個性を持たせます、
っていうのが売りだったか、ソフトは結構売れたらしく
どんどんシリーズ化!
会社と社長もウハウハ!?
健全なお仕事で良いギャラをいただけるなんていうのも
『麻雀プロ』には珍しい時代で、喜んだ先輩方も多かったかと。

社長は言いました。
「儲かっちゃったから、雀荘も経営しよう」
鶴の一声で新宿末広亭の並びに店舗は構えられ
「もっと儲かっちゃうんじゃない?」
超・低レートのフリー雀荘が誕生しました。
「『低レート』だけに、『手入れ』も入らんだろ」
社長は面白くない冗談が好きでした。

従業員に最高位戦のプロなど雇い入れ
その中には、今ではMリーガーな人もいたような?

残念ながら雀荘としては短命におわりましたが
その箱は麻雀卓もすっかり取り払われ、
ダーツバーとして生まれ変わった、ある日。

「コーヨー!面白いから早くおいで!!」
巨乳な店長のナオミちゃんの電話で呼び出された私、
バーカウンターの端っこには、コートを羽織ったままの細身の姿。
当時の私より少し年下か? 20代後半のような男が座っていました。

ナオミ店長はいいました。
「紹介するよ、この人って麻雀のプロなんだって!」
どうも、ホウジョウです。男は、ぼそりと名乗ります。
「最高位戦のAリーグなんだって!」
とても楽しそうに教えてくれるナオミちゃん。
カウンターの中を見やると、秋篠宮さまの髪型と口ひげを
少しいかつい輪郭に載せたバーテンの立川さんが
困ったような、面白がっているような顔をして右の口角を上げました。

ええ~!スゴイ!!ボクもね、麻雀好きなんですよぉ~

立川さんの顔を読んだ私は、そう応えます。
人の手牌と顔は読まなくてはね。

Aリーグって、一番上ですもんね?
ホウジョウプロは強いんですね!他にも強い人って誰かいます?

「やっぱり飯田さんと金子さんは手ごわいですよ」

あー!名前とか聞いたことありますよ!!
タイトル獲ってますもんね!
一緒に戦ってるの、スゴイなあ

ナオミちゃんが口をはさみます
「じゃあ、タチカワってプロは知ってます?」

「いやあ、私はすぐに昇級したもんだから、
 その人は良くわからないですねえ」
と、自信満々のホウジョウプロ。
誰それは、まあまあ打てる、
数年前の決勝では惜しいところまで行けた。
などなど華麗なキャリアを教えてくれました。

柱の陰で笑いをこらえている立川さんが目に入ります。

そんな麻雀界トークにも飽きたころ、
そろそろかな。肝心なことを聞かなくっちゃ。

じゃあ、ムラタって知ってます?ムラタコーヨー?

ナオミちゃんも大喜び。
ボインちゃんにも受けているかと、
ホウジョウプロは嬉しそうに目を細め、
「ああ、ムラタならCリーグ昇級の時にボコボコに叩いてやりましたよ!」

ナオミちゃんがたまらず、げらげら笑いだしたので
潮時だね。

ねえ、オレがその村田なんだけど、
こないだのAリーグの会場にいなかったですね、ホウジョウプロ?
ビョーキで休んだのかな?
どっかで会ったことありましたっけ?

わざと、声を荒げて。

顔色がブラッディマリーからブルーハワイへ(イメージ)変わった
ホウジョウプロが残した最後の言葉は
「す、スミマセン、お、お会計っ」
でした。
あの「スミマセン」は、ついた嘘を謝ったのか、
お会計を頼むときのものだったのか謎を残したまま
夜の新宿に消えたホウジョウプロ。
今も、どこかで元気にしておられるだろうか。

バーテンのバイトをしていた立川さんと、
私が最高位戦Aリーグにいた頃、
大先輩でもある立川宏さんが、
第一回・最高位戦クラッシックの栄冠をつかむ数年前のお話でした。

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