見出し画像

「ヒカリと夜の音楽、またはクロノスタシス」がマジで大好きだという話

ご無沙汰してます。僕です。
最近ちょっと日常生活でのやらかしがあり、将来設計にいささかバグが発生する可能性があるという状況ではありますが、そんな中でも僕は気ままにシャニマスをプレイしています。特に三週間ほど前にシリーズ最新作であるシャニソンもリリースされたので、最近はもっぱらそっちの方を熱心にプレイしていました。
とはいえ、シャニマスの魅力と言えばやはり重厚で深みのあるシナリオということで、そこはenza版に軍配が上がるというのが僕含め大多数のシャニマスPの意見だと思います。

そんな訳で(?)今回は僕が愛してやまない、初めて読んだ時から一日たりとも忘れることのなかった生涯ベスト作品である
「ヒカリと夜の音楽、またはクロノスタシス」
について思いの丈をつらつらと述べることにします。評論文とかじゃないんでそういう期待はしないでください。
これは、誰かのためになるのかな。

「それは、あたたかくて、さみしくて、やさしい」←これだけで泣ける



好きなところを一つ一つ見ていかせてくれ


その1「あらすじポエム」

ご存知の通りシャニマスのイベントシナリオには毎回「あらすじポエム(命名俺)」がありまして、特に2020年以降のシナリオはどんどん磨きがかかってきて大変詩的で私的にとても嬉しいんですけど、今回もそれは健在です。

これ

もしも世界の裏にいても、
今は指先ひとつできみにつながる

声が聞ける、姿が見える
ほんとうだ──まるで隣にいるみたい

記憶よりもあざやかに、
写真があの日を残してくれる

もうさよならなんて言葉はいらないね
ずっと ずっと いっしょだね

ほんとうだ──未来にはしあわせしかないんだね

だから……うん
それは、あたたかくて、さみしくて、やさしい

いいよね・・・・・・・・・・・うん・・・すごくいい・・・・

御覧の通り毛ほどもあらすじなど紹介していないわけですが、むしろ僕はこっち系統の方が好きだったりします。「くもりガラスの銀曜日」とか「アンカーボルトソング」のポエムも最高です。
まあ本編を読む前だとなんのこっちゃって感じだと思いますが、読後の今では「もうさよならなんて言葉はいらないね ずっと ずっと いっしょだね」で涙が滲み、「ほんとうだ――未来にはしあわせしかないんだね だから‥‥‥うん」で頬を伝います。それにしても
「あたたかくて、さみしくて、やさしい」
というフレーズがこのシナリオを端的に表していて素晴らしい‥‥‥!


その2「物語&各話タイトル」

オープニング「はじまり、それからまどろみ」
第1話「あしたが、まだ永遠だったころ」
第2話「おとなは、預言者の顔をする」
第3話「となりに、地球の裏側」
第4話「だいすき、本当に大好きだったよ」
第5話「じかんよ、おまえは」
第6話「きのうが、永遠になった」
エンディング「響き渡れ、どこまでも」

ここからは、各話の物語とサブタイトル、それぞれの好きなところについて書いていきます。元々は別のブロックに分けてたんですがそうすると非常に記事が長くなって読みづらいことこの上なかったので合体。少し変な部分もあるかもしれませんが、まあ許してや。


オープニング「はじまり、それからまどろみ」

[タイトル]
ここで言う「はじまり」は、単純に物語のはじまりという意味とイルミネーションスターズとしてのはじまりという二重の意味にかかってると思うんですが、そこに「まどろみ」という言葉を付け加えるのがまたね…。
イルミネの最初の曲である「ヒカリのdestination」の歌い出しに「始まりだって気付かないまま追いかけてた」という歌詞がありまして、このはじまりの回顧に合わせて「まどろみ」は、まだアイドルとして成熟していなかった頃を目が覚めたばかりの姿として表現しているんだと思われますが、これが後のタイトルにどう繋がっていくかということを考えるともう胸が切なくて切なくて…。

[内容]

オープニングからこれですよ。イルミネ結成から間もない頃の回想を織り交ぜながらのこれ。過去シナリオの「Lightup the illumination」、「catch the shiny tale」や「star n dew by me」、感謝祭シナリオに「くもりガラスの銀曜日」と積み上げてきたイルミネーションスターズの絆がここで爆発しています。
「BRIGHTEST WHITE」という曲に「もしあの角を右に曲がったなら すれ違う人も違って行く そんな小さな奇跡 無限の可能性が 繋がった愛しい今を抱いて」という歌詞があります。通っている学校も違う3人の少女が出会い、結成したイルミネーションスターズという絆は、少しだけ何かが違えば出会わなかったかもしれないという奇跡を踏まえた絆です。そんな「出会わなかった可能性」を常に前提としてきたイルミネの、とりわけ寂しがり屋であり、異国から来たことで内心に小さな疎外感を感じてきためぐるが言う「一緒に居るのが当たり前で‥‥‥嬉しいな」という言葉。それに対し「ずっと当たり前にする」と返答する灯織と真乃。
この言葉に隠された様々な思いについては後に語られますが、言うなれば永遠の存在である二次元キャラクターの彼女たちがこのような「終わり」を意識したような言葉を発したことで、当たり前に続くと考えていた日々のかけがえのなさに気が付くわけですよ。5thLIVE「If I_wings.」でも主題となった、「アイドル達がアイドルであり続けることは当たり前ではない」というテーマが浮かび上がってきた時、僕は涙が止まらなかったです。


第1話「あしたが、まだ永遠だったころ」

[タイトル]
一緒に居るのが当たり前な人との日常は永遠に思えて、あしたも会って笑い合えることを疑いはしませんよね。この話から登場する卓球部の少女もそう思っていたはずで、きっとイルミネの3人も最初はそう思っていたんじゃないかと想像しています。そんな「絶対」や「永遠」なんてものは無いんだ、ということがこのシナリオのテーマの一つですが、それを明確に表しているタイトルですよね。「まだ永遠だったころ」という言い回しが詩的で素敵ですが、変わってしまった環境と懐かしい思い出を見つめる気持ちが想像できてしまって泣けます。

[内容]

ここの灯織の「そういう想像ができるくらい 近いんです」の言い方を是非とも実際に聞いて欲しいです。人の気持ちが伝わってきて繋がった瞬間はたしかに素晴らしいものでしょうが、人の感情を理解してしまうというのは必ずしも快いものではないはずです。客席の人間を一人一人がリアルな個人として捉え、その眼差しを受け止め、背負うことは喜びであると同時に大きな負担となります。ここの灯織の声音は、そういった「アイドルとしてファンと向き合うこと」の様々な側面について思いを馳せているように聞こえます。

ここやばいよね…….。
中学生の少女2人からの3つの流れ星が描かれた便箋という時点でもうやばいのに、このプロデューサーのモノローグでもう泣きまくりですよ。プロデューサーこそがイルミネ3人の永遠の絆を願っていて、少女たちにその願いをある種託してしまっているこの切なさよ…。しかもその後の
「そうしてしばらく、手紙を捲るやさしい音が響いてたんだよな」ね…!
優しすぎる、目線も表現も何もかも。僕がクロノスタシスが好きな理由のかなり大きめな要素としてこのプロデューサーのモノローグがあります。


第2話「おとなは、預言者の顔をする」

[タイトル]
若さだ…このタイトルを読むとそんなことを思います。こういう風な、子供と大人という対立構造の内の子供側に立てるというのは得難い特権ですよね。子供には子供の世界や関係があって、それは分かった風な顔をする大人たちには決して理解できない領域なのだという意識、大変尊いと思います。それでも、不吉な預言めいたことを言う大人にも子供の時代があり、失われた友情や愛情の先を生きていることを考えるとこのシナリオの味はぐっと増すと思います。

[内容]

「おばあちゃんになっても、ずーっとイルミネでいたいねって!」

...................ッ!!こんな子供じみた願い事をそんなにまっすぐ言われたらもう愛おしくて愛おしくてたまらない。両の腕で抱きしめたくなるけど僕は部外者なんでそういう訳にもいきません。
いやーこのセリフの破壊力凄くないですか。「おばあちゃんになっても」というのがすごく良くて、安易で想像しやすい未来像といいますか、すごく子供の考えそうな仲良しの未来予想図だと思うんですよね。純新無垢な願いほど胸に迫るものはないし、無邪気な言葉が一番真に迫ってたりするわけです。布石としてずっと一緒にいようのセリフもあった上でこれは相当効きます。そしてそれだけにディレクターのセリフがまあ刺さる…。
そりゃそうなんですけど、そりゃそうなんだろうけども…!!


第3話「となりに、地球の裏側」

[タイトル]
これも比喩が素敵です。隣同士の家に住んでいて、物理的な距離はずっと近いのに、まるで地球の裏側にいるかのように感じられてしまう。前述のポエムにあった「もしも世界の裏にいても、今は指先ひとつできみにつながる」と同じく「世界/地球の裏」という表現を使いながらも真逆の印象を与えるのは上手いですよね。

[内容]

この気持ち、僕はすごくすごく分かります。大好きな人に悲しんでほしくない、心配させたくない、その気持ち自体は決して嘘ではないのだけど、それを盾に取って自分の寂しさや悲しさを隠したり、嫌な現実から目を逸らしてもいて。きっと自分でも気づいてるんじゃないでしょうか。でもあえて見ないふりをして、自分の気持ちに蓋をする少女。
健気じゃありませんか。愛しいじゃないですか。等身大でありながらも、誰もがわが身に置き換えて共感してしまうことだと思うんですよね、これって。ましてや誰かと別れた経験のある人なら尚のこと。


第4話「だいすき、本当に大好きだったよ」

[タイトル]
問題のタイトルです。僕は初読の時にこのタイトルを見て、待ち受ける展開を想像して泣いてました。シャニマスでも屈指の情感たっぷりなテキストだと思います。少女の「大好き」は決して嘘じゃなく、ちょっと気持ちがずれてしまっただけのことで、でもそのずれを戻すのは難しくて。そうしている内に大好きな気持ちが段々日常の中で薄れていって、そんな折、ふと「大好き」を思い出した時に口から出る言葉はこれしかないでしょう。これほど純粋で切ない言葉がありますか?ないよね。

[内容]

このあまりにも些細なきっかけ、というのが非常に共感できます。人と人が離れるというのはこういった場合がほとんどだと思います。生活はそれほど劇的ではなく、出会いも別れもなんとなくで、その時々の人間関係に喜び、悩むのが普通の人だと思いますし、僕も概ねそんな感じです。でもだからこそ、劇的ではない別れは後に引きずると思うんですよね。喧嘩した訳でも嫌いになったわけでもない、何か大きな事故があった訳でもない、ただ「なんとなく、遠くなっただけ」だからこそ、在りし日の楽しかった思い出や友情への憧憬がずっと燻ってしまう。

『また絶対に行くからね 友達と一緒に!』
「それは‥‥‥嘘というより なんとなく、願いごとのように見えた」

ボロ泣きですよ~。心に寄り添って、、、、
正直この辺の感情は筆舌に尽くし難い。文章全体が、言葉の一つ一つが心を打つんですよね。嘘じゃない。嘘じゃないんだ。祈るだけ、願うだけ。でも、やっぱり悲しいじゃないすか‥‥、あんなに仲良しだったのに、本当に大好きだったのに、なんで、ってなるじゃないですか‥‥‥!こんなに切実で、どうしようもなくて、あたたかくて、さみしくて、やさしい想いが、流れ星の便箋に乗って届く、、、、ここに込められた想いに僕はただ涙を流すことしかできない。。。


第5話「じかんよ、おまえは」

[タイトル]
クロノスタシスとは目の錯覚の一種で、瞬間的な視覚刺激が長く引き伸ばされたように感じることらしく、つまりこのシナリオは「ヒカリと夜の音楽、またはクロノスタシス」というタイトルからしてがっつり時間的なことをテーマとしているわけです。それは前述の通り「永遠」の否定をしていることからも既に明らかですが、この「じかんよ、おまえは」という何やら怨みがこもっているように感じられる表現はここが初めてです。実際時間は勝手なもので、時間があらゆるものを変えてしまって、人はなすすべなく選択を強いられ、色々なものが失われていく。
ですが同時に人と人を繋げるのも時間であり、積み重ねた時間が絆や関係を作っていくわけでもあります。だからこの言葉は単なる恨み言というよりも、もっと複雑な感情が込められているように感じられます。

[内容]

オープニング「はじまり、それからまどろみ」で真乃が言った「ずっとずっと」に続く言葉は「当たり前でいられますように」だったんですね。

お前も願うんかい‥‥‥‥‥‥!
変化を避けられない環境に居て、そのどうしようもなさを少なからず理解しているからこそ「ずっとずっと当たり前でいること」を願う。でも彼女たちは「星」で、願いを託される側なんだよな‥‥‥。


第6話「きのうが、永遠になった」

[タイトル]
第1話の対となるタイトルですね。永遠な時間はないという物語を進めてきておいて、ここで永遠となった時間が出てくるという技巧モリモリな感じがたまらんね。永遠に続く「今日」を願ったのに、気づけばそれは永遠に変わらない「昨日」となり、過去を積み重ねて生きていくしかないというこの矛盾。しかしこれは同時に救いでもありますよね。素晴らしい思い出は永遠となり、私たちの中に息づくのだから。そしてそんな永遠の昨日は、ふとしたきっかけで繋がることがあります。

[内容]

「ひとつひとつ、違うし‥‥‥ 忘れられないよな、全部」

これはね、生きることの肯定ですよ。イルミネのために、綺麗な便箋を選んで、何度も何度も考え直して、丁寧にしたためられた手紙。沢山ある中の一つとして同じものはなくて、そのどれもが想いのこもったもので。一人一人の人生が詰まっていると言ってもいい、その想い一つ一つを忘れずにいてくれることって、すごく救われると思うんですよね。
「好き」の感情を受け止めてくれる人がいること、自分はここにいるってことを忘れずにいてくれる人がいること、それだけで生きることっていうのはずっと楽なものになると思うんです。

『ずっと』がないことも
『絶対』が難しいことも
わかってて、ただ、言わないだけ
言わないだけだったんだ

‥‥‥わかるか?彼女たちの覚悟が。「おばあちゃんになっても」も「ずっと一緒に」も、それが難しいことなんてわかってて。ただ、言わないだけ。彼女たちはただ、ずっと一緒にいるために「ずっと一緒にいよう」と言うだけなんですよ。
想いの力は弱いから、ちゃんと言葉にして伝えなきゃいけないというのは「YOUR/MY Love letter」で唱えられたメッセージですが、シャニマスは度々「言葉の強さ」を提示してくれます。
僕の大好きなシナリオ「はこぶものたち」は、正にこの「想い」と「言葉」の描写という点で最高に好きなので超おすすめです(脱線)。

「はこぶものたち」エンディング「運ぶ人」より
同上
同上

クロノスタシスに戻ります。

「あ‥‥‥イルミネ‥‥‥‥‥‥」
「うん‥‥‥好き‥‥‥」
「大好き、だったなあ‥‥‥」

このセリフなんですよね。ぽろっと出たというか、ずっと意識の外にあったのに、すぐに口から名前が出る、このリアリティ。そして一気に脳内に溢れる、一緒に過ごした友達とイルミネの記憶。「大好き、だったなあ‥‥‥」そう呟く彼女はどんな表情をしているんだろう。この体験が彼女の人生を大きく変えるわけではありませんが、日々を生きて、時々過去の記憶に心を浸らせる、そんな繰り返しの中で少しずつ前に進んでいくのが人生なのかな、なんて思います。


エンディング「響き渡れ、どこまでも」

[タイトル]
ここでこのタイトルね…。言うまでもなくこれは「ヒカリのdestination」の「響き渡れ いつまでも」という歌詞を意識していると思われますが、ここで「いつまでも」ではなく「どこまでも」をタイトルを選んだシナリオライターの方に僕は本当に感謝しています。そうなんですよ、これは絶対に「どこまでも」なんですよ!!!

‥‥‥いるよ、絶対!この宇宙のどこかに!
‥‥‥だから‥‥‥歌おう!

歌は人を永遠となった昨日へと戻し、時間を超え、そして人の想いを繋げることができます。彼女たちはファンにとって本当に「星」であり、彼らの想いを繋げ、願いを受け止めるために歌っているんです!!もう離れてしまった人や、もう会えなくなってしまった人のために、誰かの想いのためにこそ歌っているんです!!!「スマイルシンフォニア」に「響け 空の果て あなたのココロへ 響き渡れ!」という歌詞がありますが、イルミネーションスターズというアイドルの在り方を体現している歌詞だと思います。
もちろん僕もそのファンの一人です。

[内容]

イルミネーションスターズは星なんだ、本当に。日々の中で上手くいかないことや悲しいことがあっても、変わらない光を届けてくれる星。いつもそこに居てくれて、時間や関係を繋げてくれる星。「PRISISM」という曲に
「たくさんある星の中で 強く優しい光でいたいね ずっとずっとずっと一緒にいよう」
という歌詞があります。ぴったりですよね。「ずっとイルミネでいること」は、彼女たちのためでもあり、またファンのためでもあるんです。

あの日手が届いた誰かは、もうこの客席にはいないのかもしれない――でも

「‥‥‥いるよ、絶対!」
「この宇宙のどこかに!」
「‥‥‥だから‥‥‥歌おう!」

素晴らしすぎです。本当に。願いなんですよね。歌が誰かの人生の中で生きて、過去と繋げてくれるようにって願い。なんて優しい、途方もなく優しいお話だと思いませんか。「ヒカリと夜の音楽、またはクロノスタシス」は、「前向きに生きろ」とも、「人との繋がりを大切に」とも言わないんです。過去の思い出の中に生きることも、前に進めないことも決して否定せず、ただその悲しみに寄り添ってあげる。ただその生を肯定するだけ、生きることの素晴らしさを描いたお話なんです。
僕はここにシャニマスの根っこが詰まっていると思います。人との別れのやり切れなさも、離れてしまった心も、こうあって欲しいと願う気持ちも、誰かを愛することも、全てを受け止めて肯定する精神がこのシナリオには表れています。思いが伝わる喜び、衝突する悲しみ、そういった人の営みへのとにかく優しい眼差しこそがシャニマスの素晴らしさだと思います。このシーンは是非とも音声付きで見てほしい。


「ずっとイルミネーションスターズでいよう」


その3「タイトル」

そもそもとしてタイトルが良いんですよ、「ヒカリと夜の音楽、またはクロノスタシス」ってタイトルが。ヒカリ、イルミネにとっては象徴的なキーワードですね。始まりの曲である「ヒカリのdestination」に始まり、「トライアングル」や「BRIGHTEST WHITE」にも登場したこの言葉。イルミネーションスターズという星たちは「輝きをみんなに届けよう」を合言葉に活動してますが、星ってそもそも恒星以外は自分から光らずに、当てられた光を反射しているにすぎないじゃないですか。それはイルミネにも言えることだと思うんですね。だからこそこのシナリオはイルミネにとっての必然だと思うんですよ。彼女たちは自分たちの放つ光を与えてるんじゃなくて、光を受け取って、お返ししてるだけなんです。

「ヒカリと夜の音楽、またはクロノスタシス」エンディング「響き渡れ、どこまでも」より

星が光を届けるのは夜。夜というのは寂しさや孤独を感じやすい時間でもありますよね。そんな誰かの孤独に寄り添う光がイルミネであり、その手段は歌、音楽であると、このシナリオを読んだ方ならわかると思います。そこに付け加えるように「またはクロノスタシス」っていうのが良いですよね。イルミネというアイドルの在り方と「引き伸ばされた一瞬」を並置する。一瞬の幸せな時間を、イルミネは歌を通して何度でも蘇らせ、永遠の時間へと引き上げてしまう。つまりクロノスタシスとは、イルミネと関わる時間のことだとも解釈できると思います。
読み始める前は何やら珍妙なタイトルだなと面食らいますが、「ヒカリと夜の音楽、またはクロノスタシス」とは徹頭徹尾イルミネについて語ったタイトルであり、読み終えた後にそのことに気が付くというのが良いですよね。


優しいお話

長々と書きましたが、僕がこのシナリオの何が好きか端的に言うとすれば、

優しいんだよね‥‥

これに尽きる。最近色々と「僕はシャニマスのシナリオのどこが好きなんだろう?」と考えまして、もちろんそれは一つの要素で説明できるものではないのだけれど、一番しっくりくる表現はこれかなと思いました。僕はシャニマスのシナリオが持つ優しさに魅了されているんだと思います。

シャニマスの優しさって一体何かと言うと、僕の考えでは、それは世界の豊かさを描くことだと思うんですよね。多様な価値観と視点、というテーマは特に近年何度も繰り返し描かれてきたものだと思うけど、そういう作品にありがちな「色々な立場、価値観を知ることの大切さ」みたいなことはあまり強調されていない感じがしていまして、もちろんそういった要素のあるシナリオもありますが(「はこぶものたち」「かいぶつのうた」など)、シャニマスはどちらかというと「多様な人が生きているからこその世界の温かみやゆるやかさ」を描いているような気がしています。正しく生きられない人の悲しみや、間違ってしまった人への優しい眼差し、ままならない世界の暗い部分を目を逸らさずに見つめながらも、それでも残った温かい何かを拾いあげるという一貫した姿勢、ここにこそシャニマスならではの優しさがあり、僕は心底惚れ込んでいるんだと思います。ちなみに、この方向で素晴らしいなと思うシナリオとして「many screens」「はこぶものたち」「YOUR/MY Love letter」「線たちの12月」、そしてにちかWINGなどが挙げられます。

そして本作「ヒカリと夜の音楽、またはクロノスタシス」はこの観点の下、シャニマスの最高傑作であると僕は思ってます。全ての人間に課せられた、そもそも「永遠」や「絶対」なんて無いという呪い、そのことを理解しながらもそれを求めてしまう人間の哀しさと愛おしさ。それを決して否定せず、そのまま受け止め、肯定する優しさ。少女の悲しみとイルミネ3人の想いをアイドルとしての在り方に結びつける構成。「願い」や「祈り」といったこれまでのシナリオとも結びついてくるキーワード。一人一人の個として生きる人間を見つめる眼差し。どこを取っても隙の無い、イルミネの、シャニマスの集大成のようなシナリオだと思います。


結論:マジで大好き

いや〜本当に本当に素晴らしいシナリオですね!僕は割とシャニマスは箱推しと言いますか、特定アイドル・ユニットの担当を自負し入れ込むようなことはしてなかったんですが、このシナリオを読んだことで晴れてイルミネ担当Pとなりました。
あまりにもあたたかくて、さみしくて、やさしいこのウェットな質感。この質感を持つシナリオは他のどのユニットにもなくて、イルミネだからこそ出せた質感なのかなと思います。つらつらと述べてきましたが、結局この記事は僕がクロノスタシスがどんだけ好きでどこが好きなんだいということを感情的に書きなぐるだけのものなので、そういう意味では大成功だったかなと思います。皆さんもクロ活していきましょう。そしてイルミネPの輪を広げていきましょう。


おまけ:副聴曲

「ヒカリと夜の音楽、またはクロノスタシス」を読む上で、この曲を聴くと更に曲もシナリオも楽しめるよと個人的に思っている曲を紹介するコーナーです。副読本ならぬ副聴曲。

1.「ヒカリのdestination」

瞳のillumination
輝く無限の可能性
私たちの キ・セ・キ
繋がってく ヒカリの束
その先へ
あの空へと 響き渡れ
いつまでも

やはり最初の曲は外せないよねということで。無限の可能性、ヒカリの束、原点が故に後のエッセンスが詰まってますね~。
「響き渡れ いつまでも」なんて、最初はなんてことないフレーズだったかもしれませんが、今となってはこれも一つの願いだなあ‥‥と思わされます。何回聴いても良い曲だね。

2.「PRISISM」

たくさんある星の中で
強く優しい光でいたいね
ずっとずっとずっと一緒にいよう

重ねてきた日々の中で
集めてきた光を放つよ
ずっとずっとずっと
ずっとずっとずっと変わらないよ

これが一番合うと思います。
前々から良い曲だとは思ってましたが、「ヒカリと夜の~」を読み終わった後に改めて歌詞を噛みしめながら聴くと大号泣でした。「強く優しい光でいたいね」「ずっとずっとずっと一緒にいよう」「ずっとずっとずっと変わらないよ」等々、もう願いしかないんですよ。しかもすごく明るい曲なんですよね‥‥。それだけに余計切なくて‥‥屈託なく元気に歌うめぐるの声がね‥‥。


3.「星が流れて」

心は楽しい時間を
追いかけて夜空を駆ける
昨日まで戻れたら
もう一度 今日がいいのに

「楽しい時」と「寂しい気持ち」はいつでも
隣にいて離れられないの
なんだかあなたと私みたいだから
きっとそれでいいよね

これは分かりやすく合う曲ですね。何ならイメージソング的な立ち位置に置かれてるんじゃないかと思ってます。「PRISISM」がシナリオ中のイルミネ像を描いているとすれば、この曲は描かれていないイルミネの内面と言いますか、「永遠も絶対もない」ということの覚悟までの心情を描いている風に思えます。


4.「BRIGHTEST WHITE」

もしあの角を右に曲がったなら
すれ違う人も違って行く
そんな小さな奇跡 無限の可能性が
繋がった愛しい今を抱いて

最新アルバムの最終曲ということで、これまでのイルミネの集大成のような曲になっています。過去と未来を見つめて、今という瞬間の奇跡とかけがえのなさを歌う、これぞイルミネだという感じのエモさ前回の曲です。最後に3人で歌う「色彩を束ねて 無限に光れ」という歌詞にこれまでのすべてのイルミネをぶつけていると思います。


5.「虹の行方」

たとえ 遠く離れても どんな風の世界でも
君を呼び覚ます 翼の歌

安定。あらゆるシナリオに合う万能副聴曲こと虹の行方です。素晴らしいシナリオが追加されるごとにどんどん強化されていくという評価の上がり方が僕の中で類を見ない曲なんですが、もちろん「ヒカリと夜の~」にも最高に合います。「たとえ 遠く離れても 君を呼び覚ます 翼の歌」とかこのシナリオのために作りましたと言ってもおかしくない、全体曲だってのにこの親和性は恐ろしい‥‥‥。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?