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台湾の地名

 台湾の地名は元々平地原住民(総称は平埔族)の各言語で呼ばれていたものが台湾語化され、漢字で表記され、それがまた日本植民地時代に日本語発音を元にした漢字表記に変えられ、さらに戦後、中国国民党政権によって統治され、日本語漢字表記が中国語(華語)発音で読まれるようになったケースがけっこうある。日本の北海道の地名の多くがアイヌ語と関係あることに似ている。

 また地名の発音の語源があまり知られていないものもある。基隆がその代表だろう。日本語ではキールンと読まれるが、これは英語表記keelungを日本人的に発音した読み方が定着したものだ。でも、その英語表記は何語を元にしたのかは僕自身もよく知らなかった。

 台湾の地名の由来に詳しい友人に尋ねると、基隆の広東語読みを聞いた欧米人がKeelungと綴ったものが世界的に使われ、それを日本人がキールン(実際の発音はケイロンみたいな感じだと思う)と読むことが定着したのだそうだ。ちょっと調べてみると、基隆という漢字表記は1875年に清朝政府によって雞籠が基隆と改名されたようだ。

 たまたま基隆という漢字表記を客家語ローマ字表記で書くとKi lungになり、日本人的にはキールンと読んでしまうが、実際の発音はキィロン。台湾語ではケェラン(またはコェラン:雞籠)になる。台湾語話者の台湾人は昔から今でも台湾語でケェラン(またはコェラン:雞籠)と呼んでいる。

 ただし、欧米人が広東語だと思っていた言葉、や広東人と思っていた人が現代で言うところの客家語や客家人だった可能性もあると思う。客家という名称や概念、グループ分けされることが広まったのは1930年代以降だからだ。香港でも昔は広東語より、今で言うところの客家語を話す人が多かったらしいし。

 台湾でも日本の植民地時代、現代では客家人、客家語と分類されている名称が広東人、広東語として分類されていた。

 イギリスは香港を統治しやすいように住民の共通語が広東語になるように仕向けていったらしい。その結果、客家語や潮州語や福建語などの母語が話せなくなった人たちも多いのだろう。また、元々先祖は客家人だったという人も多いが、潮州人や福建南部出身だったという人も多いので、台湾人観光客が台湾語で香港人の悪口をこっそり言ったりすると、聞き取れている人も多いと聞いたことがある。また、中国語があまり話せない客家系インドネシア人の友人が香港に行った時、客家語がけっこう役にたったとも言っていた。

 僕自身25年前に香港旅行した時、住民たちが話す会話がたまにところどころ聞いてわかることがあった。台湾語を混ぜて話しているように聞こえたからだ。たぶん潮州語だったんだと思う。

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