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台湾人は台湾語や客家語で東南アジアからの外国人労働者と話が通じることがある。

 日本人には殆ど知られていないことだと思うが、台湾で働くフィリピン人労働者、インドネシア人労働者と台湾人は台湾語で話が通じることがある。またインドネシア人とは客家語でも話が通じることがある。それはインドネシアやフィリピンからの外国人労働者は母国の華僑や華人住民の間で使われている福建語や 客家語、潮州語などを話せる人もいるからだ。

 華人系で華人人口の多い地域からきた人なら福建語(閩南語)や客家語、潮州語(閩南語系)を話せる可能性はかなり高い。 華人の血が濃く、また華人としてのアイデンティティーの強い人は外国人労働者として台湾へ来ることはほとんどないと思う。おそらく観光旅行や留学、ビジネス、移民目的で来る場合が非常に多いのだが、本人が華人としてのアイデンティティーはなく、労働者として、工場や病院で働いたり、老人介護の仕事で台湾に来ている人たちの中にも華人との混血であったり、華人の言語が話せる人もいる。

 もちろん同じ閩南系言語 ( 福建語と潮州語 )、客家系言語といっても台湾側との方言差もかなり大きいのだが、コミュニケーション上の一番の障害は台湾側は日本語からの借用語(外来語)が混ざり、東南アジア諸国側もインドネシア語やタガログ語など現地語からの借用語が混ざることだろう。

 昔付き合ったインドネシア人女性(インドネシア、カリマンタンのポンティアナッ出身で潮州人と客家人の血を引いていた)は台北に来たばかりの頃は中国語が全くできなかった。それで、タクシーに乗った時や買い物をする時に潮州語をそのまま使っていたが、台湾人に通じていた。客家語も話せたので客家系台湾人の大家さんから部屋を借りていた。また、そのアパートの他の部屋の住民も全員インドネシアの客家系や潮州系の華人だった。そういうアパートに住む若い華人系インドネシア人たちは店主と客家語が通じるような店でよくアルバイトをしていた。ガイドブックで必ず紹介されるような台湾大学の脇にある有名なかき氷屋などはかなり長い時期、アルバイト店員の殆どが華人系インドネシア人だったことがある。

 そして、台北市内の師大路にある有名なパン屋 ( 台北市内のあちこちに支店がある ) も長い間アルバイト店員は華人系インドネシア人ばかりだった。中国語にあまり訛がないと接客を任されていたが、中国語の訛が強い場合は店の奥での仕込みや後片付けの仕事をさせられていた。

 デパートやショッピングモールの地下のフードコートでアルバイトをする華人系インドネシア人も多かった。僕の当時の彼女もフードコートや台北近郊の工場でアルバイトをしていた。インドネシアでは長い間、中国語の教育が禁止されていたので、共通中国語、つまり華語やマンダリン、中国では普通話、日本や台湾では俗に北京語と呼ばれる中国語が話せないし、漢字の読み書きが全くできない華人が多かった。台北に来てから語学学校で中国語を学ぶのだが、元々中国華南地域の地域言語である福建語や潮州語、客家語を家庭内で使っていた人なら、漢字は自分の名前ぐらいしか書けなくても、簡単な中国語会話はすぐに身に付いていた。

 僕の彼女は複雑な中国語は話せなくても、発音に変な訛りはなかったし、客家語で客家系台湾人と会話が成り立ったので、客家系台湾人のふりをして、デパートのフードコートで飲食物の販売と接客のアルバイトをしていた。

 また昔、日系企業の工場で日本語を教えていた時に台湾人の工場長になぜここの工場ではフィリピン人労働者ばかり雇っているのかと聞いたら、フィリピン人には英語が通じるので、日本人駐在員とのコミュニケーションがとれるし、中にはフィリピンの華僑や華人の間で広く使われている福建語 ( 閩南語=台湾語と同系統 ) がかなり話せる人もいるので、台湾人スタッフとも直接話が通じる。また、時には台湾人と福建語が話せないフィリピン人との間の通訳を頼むこともできるからだと言っていた。

 僕がずっと籍を置いている語学学校で一時期、掃除や雑用をしていた女性がインドネシア人だった。顔つきがちょっと台湾人のようだったので、華人かどうか聞いたことがある。彼女は自分は華人だとは思っていないけれど、お祖父さんが客家系華人で、自分も客家語は少し話せると言っていた。

 台北で東南アジアから来ていた人たちの生活が垣間見れたのも当時、僕の中国語自体もカタコトだったけれど、台湾語も少しできたことで、インドネシア華人たちと繋がりや交流が持てたからだと思う。インドネシア人の彼女ができたのも、彼女がまだ中国語を覚える前に台湾語で接していたからだ。彼女は潮州語話者だったので、同系統の言語、台湾語が聞いてわかった。僕の台湾語を聞いて、僕に英語で返していた。でも、付き合って半年ぐらい経った頃には彼女の中国語レベルの方が僕の中国語レベルより上になってしまっていた。

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