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隠れ家のような場所  (吃音通級指導)

3番目の子、ミコは吃音指導のために、週に1回通級指導教室に通っている。

私の懸案だった「抜けた分の授業はフォローがあるのか」という点においては、1年生はまだ授業時間が短い上に、通級の先生も午後に空きが会ったため、帰りの会を省略する程度の早退で済んでおり、これは大変ありがたい。

学年があがると、徐々に授業時間も長くなっていくので、今後もずっと、というわけにはいかないかもしれないけれど、まあほんの少し授業に出られなくても良いではないかという気持ちがすでにあったので、そもそも(私としては)クリア済でもある。

通級指導教室は、一対一で指導があり、時には他校の吃音のある児童と交流もある。行く前はあれやこれやと心配していたものの、来てみればこんなに適切で温かい場所だったのかと、いろいろと不安や文句を言っていたことが申し訳ない。

ミコの担当の先生は、いつもにこにこと穏やかで、ゆっくりとしたペースでお話をする。そういえば、保育園や幼稚園はいつもこうであったものよ、と思う。

こちらでお仕事をされているということは、この地区の教員免許を持っている方で、おそらく普通級クラスの担任をされていたこともあるのだろう。小学校は大人数であるし、やらねばいけないカリキュラムがどっさりあって、一人ひとりに合った声かけや指導などは、とても難しいと思われる環境だ。

こういう場所でお会いすると、通級の先生が、あの現場(小学校)で働いていたことが想像出来ないくらい、ここは、穏やかで静かな場所である。

つくづく、小学校の先生は大変だなと思うし、そこで生活する小学生も大変だなと思う。もちろん自分も小学生だったことはあるけれど、私は学校が嫌いではなかった。大変なのが当たり前であったし、ぎゅう詰めの行事も楽しんでいた。

でももう時代が違う。近頃の子には選択肢があって、そこであえて義務教育を選ぶという、意識の違いがある気がする。

通級指導に話を戻す。通級指導では、発声の仕組みや吃音について積極的に学んでいく。ミコも自分の吃音について知りたいと思っている年頃なので、きちんとした知識とフォローさえあれば、妥当だと思う。

吃音の出やすい環境について「急な発声と、ゆるやかな発声の違い」について学んだ日のこと。(突然の発声は吃音が出やすい)。

ミコが「クイズでさー、ピンポン!『〇〇!』みたいな時は、急な発声ってこと!?」と言うので、先生が「言い換えや理解の表現がとっても上手!」と褒めてくださった。

私もミコの理解力と言語化する力はとても高いと思う。褒めてもらったので本人の前で否定はしないが、その代わり、自分の考えを話し切らないと気が済まないところがあり、急いでいる場面でもそれは変わらない。

言いたいことが頭に思いつくと、言わずにいられない、というのは、発達段階によっては本人の生きづらさにつながると思うので、少し心配がないわけではない。しかしそれもどうやら場面場面で使い分けているようなので、家の中や通級など、安心出来る場所ならではのマシンガントークなのだろう。

週に一度、吃音について学んでいるので、家でも吃音についての会話が増えてきた。思った以上にミコはいつもいつも自分の吃音について気にしている事が伝わってくる。気にしている割には外でもおしゃべりなのだけれど、このまま吃音が出ようが出まいが、好きなことを話せる人生であってほしいなあと願うばかりである。

吃音の知識が増え、吃音についての会話が増え、それに伴ってなのか、はたまた無関係なのか、現在ミコの吃音は少し多めの時期である。

しかし、これまで何年間も、ミコの吃音は多くなったり少なくなったりを繰り返しているので、もう私もその増減をどうこう思う気持ちもなくなり、『今は増えている時期』という事実だけの受け止めでいる。

そう思えるのは、適切なサポートを受けているという安心感があるからで、通級教室に通っていて、それ以上に気をもんだり対策をとるのは過剰な気がするからだ。

週に一度、早退するミコを学校へ迎えに行き、通級指導教室へ連れて行き、指導に付き添い、帰宅する。全工程で二時間程度なので、これまでずっと障害のあるこどものケアを続けてきた私としては、なんという事はない。

(しかし、お仕事をしている方にとっては大変なシステムだとも思う…)。

通級指導教室は私にとっても安全地帯であるけれど、ミコも先生にたっぷりと褒めてもらい、更にはミコが母親を独占できる時間でもあり、生き生きとしているのが何よりほっとする。

学校の四角四面な感じに疲れてしまって登校拒否ぎみの母と、学校では新一年生として張り切り、おそらく緊張もしているミコ。

私達親子は、この隠れ家のような通級指導教室で気持ちのバランスをとり、公と折り合いをつけている。





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