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【編集者コラム】幸福の国・フィンランドの視点から

※この記事は「ケアラータイムズ 第4号」(2022年3月号)からの転載です。

幸福の国フィンランド。先日、フィンランド大使館を訪問する機会がありました。フィンランドは国連の「世界幸福度報告書」で4年連続第1位。その理由はどこにあるのでしょうか。

幸福度ランキングの調査項目は主に6つ。「GDP」「社会的支援」「健康寿命」「人生の選択の自由度」「寛容さ」「腐敗の認識」です。今回はこのうち、「社会的支援」「人生の選択の自由度」「寛容さ」の3つに注目して考えてみたいと思います。

「社会的支援」とは、困った時に頼れる人がいるかどうか。フィンランドには「近親者介護サービス」という制度があり、高齢者の家族や友人などが自宅で介護した場合、その対価として手当金がもらえる仕組みです。日本のような無償の介護ではないので、要介護者もケアラーも気持ちにゆとりが持てるかもしれません。また、頼れる存在として、ケアワーカー「ラヒホイタヤ」の存在も欠かせません。社会的地位や給与が安定しており、人気の高い職業だそうです。

「人生の選択の自由度」と「寛容さ」に関しては、フィンランド独自の社会に対する考え方が関係しているように思います。学び直しの機会、結婚や事実婚への考え方、ボランティアや寄付、そして介護内容も含め、あらゆる人生の選択に「自由」があります。フィンランドには「個人を尊重する」文化があるからこそ、高齢者がなるべく自由で自立した生活を送れるよう、社会全体で福祉を支えていこうとする風土があるのです。

さて、埼玉県ケアラー支援条例・第3条の理念にも、「個人を尊重する」という文言があります。ケアラー目線、ケアラーの人生を尊重したいという思いからです。しかし日本では、まだまだ介護は家族内で行うのが当たり前とされている場合が多く、スポットライトが要介護者に当たっており、ケアラー個人に目が向けられていません。ケアラー自身の人生が尊重される社会を目指す必要があります。

身近な人に頼りつつ、自由や自立を大切にするフィンランドに、日本が学ぶべき点は多いと思います。良い部分を取り入れて、日本なりの幸福をつくっていきたいと考えています。

◆文・吉良英敏

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