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<国の令和3・4年度予算> ヤングケアラー支援 国で初の予算化!

※この記事は「ケアラータイムズ 第4号」(2022年3月号)からの転載です。

国の令和3年度第1次補正予算、そして令和4年度当初予算に、初めてヤングケアラー支援が盛り込まれ、大きな予算が確保されました。また、令和4年度からの3年間はヤングケアラー支援の集中取り組み期間と位置付けられています。

国の令和3・4年度予算の中からヤングケアラー支援関連を抜粋

表からもお分かりいただけるように、ヤングケアラー単独の事業はまだ少なく、「子育て支援」や「児童虐待防止」の括りに組み込まれた形のため、予算規模を正確に計算することは難しい状況です。ただ、国家(厚生労働省)予算に組み込まれたということだけでも、大きな前進です。特に、「ヤングケアラーのいる家庭の家事・育児支援」に大きな予算が付いたことは、ヤングケアラーの実生活のサポートができるようになったことを意味し、画期的と言えるでしょう。

年代で分断されない支援を

ただ、一つ気になるのは、完全に18歳未満の「ヤングケアラー限定」の施策であるという点です。もちろんヤングケアラーは早急に支援すべき対象であることは間違いないですが、18歳になったからといって、家庭内の介護の状況が変化するわけではありません。進学・就職・結婚などのタイミングを迎える「若者ケアラー」(18歳~30代くらい)の悩みも切実です。ケアを理由に、夢を諦めなければならない状況をつくってはなりません。さらに、40代以上にはまた別の課題があるでしょう。ケアラーを年代別に分けて支援するのではなく、ケアラーの人生全体を支援していくことが必要なのです。

経済から見るケアラー支援

最近、ケアラー支援関連のイベントで講演する機会が増えましたが、昨年は経済系のイベント(ウェルエイジング経済フォーラム)にもスピーカーとしてご招待いただきました。フィンランド大使館の方や、デジタル庁の統括官、証券会社のアドバイザーなどと共に、日本が向かう方向性などをディスカッション。介護や看護、ケアラー支援が、日本経済に大きく影響しうることを感じました。

一方、最近ベンチャー企業から数件問い合わせがあり、意見交換しています。彼らはAIなど最先端テクノロジーを遠隔介護・医療に活かそうとしています。関連して、埼玉県には「社会課題の解決につながる創業支援プログラム」という事業もあり、最大100万円の補助金が受け取れます。ケア分野の画期的なソリューションがベンチャー企業から誕生するかもしれません。

ケアラー支援というと、無尽蔵に予算が必要なイメージを持たれることが多いです。しかし、経済界やテクノロジーと連携し、ケアという最大の社会課題を解決しながら、日本経済を大きく発展させるチャンスだと私は考えています。

◆文・吉良英敏

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