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ヤングケアラー支援を考える

ヤングケアラー支援のアドバイスをいただきたいと思い、家族の介護をしている20~30代の就職・転職支援Yancle(株)宮﨑代表のオフィスにお伺いしました。

◆テーマ:ヤングケアラー支援を考える

◆ヤングケアラーとは:通学や仕事のかたわら、障がいや病気のある親や祖父母、兄弟姉妹などの介護やお世話をしている18歳未満の子どものことです。

◆ご協力:Yancle(株)代表取締役社長 宮﨑成悟さん

◆ご参加:関連団体 Aさん
     関係者  Bさん

◆発起人:埼玉県議会議員 吉良英敏(ケアラー支援条例 提案者代表)

◆開催日:2020年10月19日(月)

吉良 本日は、ヤングケアラーの支援策についてアドバイスをいただきたいと思い、宮﨑さんのオフィスにお邪魔させていただきました。

Aさん 埼玉県で条例ができたので、施策をどのように進めていくか勉強したいと思い、私も同行させていただきました。国も動き出したので、今こそ知恵を出し合う時だと思っています。

学校の環境づくり

吉良 埼玉県は県内高校2年生全員(約5万5,000人)にヤングケアラー実態調査を行いました。今後は、スクールソーシャルワーカー(生徒の問題を保護者や教員と協力しながら解決を図る専門職)やスクールカウンセラー(カウンセリング等で子どもの心のケアをする心理学の専門家)にも調査していく方向ですが、小中学生や不登校の子たちにも調査が必要だと思います。宮﨑さんは、どういうことが必要だと思いますか?ヤングケアラーは、自覚を持っていない子も多いと思うので。

宮﨑さん ヤングケアラーと言っても、週1回程度おじいちゃんおばあちゃんに付きそうくらいの子たちはそこまで困っていない気がします。どうやって生活に困っている子たちにアクセスするか、意見を吸い上げるかを考えなきゃいけない。学校の職員さんや先生、生徒たちへの周知が必要だと思います。

吉良 先生たちが理解してくれることも大切だと思います。Twitterで、「実態調査のアンケートがショートホームルームで行われたため、時間が短くて書ききれなかった」とつぶやいている高校生がいました。
  
宮﨑さん 先生もお忙しいと思うので、道徳の授業などで取り上げてくれたらと思います。

Aさん 宮﨑さんはずっとお母さんの介護をしてきて、疑問に思ったことなどはありますか?

宮﨑さん 他に支える人がいないのであれば、自分が支えてあげなきゃいけないという想いでした。介護保険は使っていたので、それ以上は助けを求められないと思っていました。
ヤングケアラーの人と話をしていると、そもそも福祉にアクセスできていない方も多いと感じます。

Bさん 気づいてあげる存在が必要です。スクールソーシャルワーカーに取材すると、現場は圧倒的に人手不足で、しかも非常勤です。各校一人いることが理想ですが、今の状況だと、担任の先生との相性も影響するし熱心な先生がいないと気づけなくて、そこから福祉につなげません。やりがいのある仕事だし、なりたい人はそれなりにいるけれど、待遇が悪くて生活していけないので職業として選べないのが現状です。抜本的に体制を強化するためには、国が予算を増やし、スクールソーシャルワーカーを常勤にして増やさないといけないと思います。

Aさん いじめや問題があったら、駆け付けてくれるような存在がいると学校の先生たちも安心します。先生はアンテナを立てるだけでいい状況が理想です。

Bさん 生徒指導が得意な先生ばかりではないため、それを仕事にする人がいないと辛いです。ヤングケアラーだけでなく、あらゆる貧困や、困っている子どもを福祉につなぐことが大切です。一度、安倍政権の一億総活躍の際に予算が少し増えましたが、調査研究にとどまり全然足りませんでした。

吉良 大阪府の公立高校の生徒を対象とした調査(2018年)によると、子どもたちはスクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーなどの専門職に相談していないという結果が出ています。
私のケアラー支援活動を見ていてくれた民生委員さんからの要望で、地元幸手市の民生委員さん向けにケアラー講座を行うことになりました。これまで埼玉県にケアラー支援に関する出前講座はありませんでしたが、一般質問で提案し新たに開設されました。地域の側からの支援という視点で、民生委員さんがヤングケアラーを理解してくれることは大切だと思います。

必要なのは自由時間と居場所

Aさん 子ども全体に対しての意識が日本は低いと感じます。

吉良 子どもへの投資の額を国レベルで比較すると、日本はとても低い。
スクールソーシャルワーカーの拡充や、レスパイトケア(ケアラーが一時的に休息をとれる支援)サービスなどの充実についてはどのくらいの規模で必要なのか、早く実態を正確に把握したいです。形式的に、市役所や地域包括支援センターに相談窓口を置いても、ヤングケアラーは相談に行かないと思います。身近な場所、普段一緒にいる人に相談したいはずです。

宮﨑さん 子どもが地域包括支援センターに連絡するのは難しいと思います。でも、私の経験上、同じような立場の人には赤裸々に話してくれます。分かってくれるという安心感が大事だと感じます。

Bさん 最近、ヤングケアラーだと自覚して飛び込んできてくれる子がポツポツ出てきましたね。

吉良 先日の「NHKおはよう日本」や「24時間テレビ」など、メディアで取り上げられている影響も大きいですね。

Aさん 宮﨑さんはオンラインコミュニティを始められていますよね?

宮﨑さん 始めて数ヶ月経ちます。常時スマホから相談できる感じです。対象年齢は40歳以下にしています。

Aさん 今、施策を考える段階なのですが、宮﨑さんのところに集まる声の中から、ヤングケアラーには自由時間がこのくらい必要だとか、アイディアをぜひいただきたいです。

宮﨑さん コミュニティで100人程度のアンケートが出来ますよ。

Aさん このケースの人にはこの施策が必要だということが分かれば、それはすごく大事なことだと思います。私は、施策に必要な一つは自分の時間(自由時間)の確保だと思っています。

Bさん 施策も大きな柱が必要ですよね。施策案の中でいうと、レスパイトケアですね。あとは、相談場所も大切ですよね。

Aさん 最初から、相談場所って言われて待ち構えられると抵抗感があると思います。 

宮﨑さん 相談っていうよりは…

一同 居場所ですね!

Aさん 相談って言われると何を相談していいか分からなかったり、具体的に何をしてくれるか分からなければ行かないと思います。

宮﨑さん 兄弟に重度の障害があり親がアル中に近い状態のため、家が危険だから避難した経験がある子から、このコミュニティがあったから孤立せずに済んだと言われました。自分だけじゃないって思えるのは大事だと思います。

Aさん 例えば千葉県だったら、千葉県中核地域生活支援センターがあるから、そこに言えば親御さんのことも自分のことも丸ごと相談にのってくれます。みんなきっと知らないと思います。こんなところもあるよって教えてあげられる場所が必要。高齢の方だったら、地域包括支援センターがあるからそこを紹介するのだけど、ヤングケアラー支援で全国にそういう場所があればいいですよね。

Bさん こういうサロンのような居場所づくりって、まず取り組むべきことですよね。関西でも、ヤングケアラーに力を入れている大学の先生方がオンラインサロンを始めていますね。   

吉良 サロンといえば、埼玉県が力を入れている子ども食堂は、「子どもの居場所」として県内800か所を目指して取り組んでいます。ヤングケアラーの相談ということではなくて、まず子ども食堂に来てもらって食事とかコミュニケーションをとる中で相談があればいいのかなと。ヤングケアラーについて研究されている成蹊大学の澁谷教授も、子ども食堂は良い拠点になるんじゃないかと以前からおっしゃっています。

Aさん 行政や議員さんだけではなく、子ども食堂に携わる方々が理解していないと、せっかく来ても傷ついてしまっては。一方で強みは、地域に近い所にあるということですよね。
あと、サロンっていう言葉はどうですか?なんか言い方、古くないですか?

一同 笑

宮﨑さん 今時なネーミングにしたいですよね。
  
Bさん カフェとか?

Aさん いつ来てもいつ帰ってもいいっていうイメージでいいですよね。

宮﨑さん サークルとか?

Aさん いいですね。あとは、ヤングケアラーは18歳未満としているけれど、20代30代は埼玉県の条例だとケアラーの中に入ってしまうので、若者ケアラーというカテゴリーを作った方が。

Bさん 20代前半の方から、僕らはヤングケアラーの定義に入っていないんですか?という反響があります。20代の若者ケアラーをもっと見てほしいという意見がうちの会社にも多く寄せられています。

宮﨑さん 20代の方が具体的な悩みがあります。仕事どうしよう、結婚どうしようと悩む時期。だから、私のヤンクルコミュニティも20代半ばが多いんだと思います。

Aさん 私のゼミの子も、重度心身障害の弟がいるから転勤のある正社員を受けていいのかと悩んで相談にきました。

Bさん 関西の大学生ケアラーの集まりが「ふうせんの会」という名前で、最近Twitterアカウントも出来たんですよ。

ヤングケアラー支援の最善策とは…

吉良 支援案の中にある、レスパイトケアや緊急支援(ケアラーが病気などでケアできなくなった場合に、要介護者や障害児者のケアと居場所の確保)は、ヤングケアラーの有効な支援になりますか?
  
宮﨑さん 一時的な支援で、何かが救われると思っていません。1日家に来てもらったくらいじゃほとんど解決しませんが、例えば、高校の合宿や修学旅行などイベントの時には助かると思います。

吉良 単発の支援ではダメかもしれないですね。ソーシャルワーカー的で、ケアマネ的な人が必要かもしれないですね。ケアマネさんはヤングケアラーの存在に気づいている人が多いです。でも、仕事上、直接助ける立場にない。もう少し、ケア全体を見渡せる制度設計にしていくべきだと思います。

宮﨑さん 自分が18歳ぐらいの時、家に母親を診るため往診の先生が来ていました。ある時、先生が「学校に行けている?何かあれば相談してね。」と言ってくれました。そのことが、すごく嬉しかったのを今でも覚えています。

Aさん 気にかけてくれて信頼できる大人が必要ですよね。私の大学でも、交渉能力のある子は退学せず頑張れて、交渉能力がない子は退学してしまいました。交渉能力がなくても、代わりに交渉してくれる存在があれば。

宮﨑さん 交渉能力のある人たちは、就職の時もそのまま企業に伝えています。でも、そういうのが苦手な方も多く、隠そうとしたり、ネガティブな書き方をしてしまう。そういった部分をサポートするのが私の役割だと思っています。

吉良 以前、宮﨑さんにヤングケアラーへの最善策ってなんですか?とお聞きした時に「分かりません。」とはっきりおっしゃったことが印象的でした。私は、最善策を明確に提案していくことを理想としていましたが、「あ…これ分からないんだな。」と思いました。
だから、まずは向き合う。そして一緒にどうしていこうかという方向でいかないと。この子にとっては解決策だけど、別な子にとっては違うっていうことを理解しないと進めないんじゃないかと気づかされました。

自覚のない子どもたちに

吉良 ヤングケアラーの自覚のない子たちに向けての啓発ってどういうものがいいと思いますか?

Aさん みんながみるのは、体験談です。それをみて自分もヤングケアラーなんだって気づけると思います。

Bさん 宮﨑さんがお母さんの介護について書いている投稿も、すごく拡散されてますよね。

宮﨑さん 埼玉県で進めている「ケアラーウイーク(ケアラー週間)」に何をしたらいいか考えました。ウェブサイトに、ヤングケアラーの語りをたくさん掲載したり、「#ヤングケアラー」をみんなで拡散しよう!と呼びかけるのはどうでしょうか。

吉良 いいですね。何が必要で、何が目標かを明確にしないと、イベント的なパフォーマンスで終わる気がしますよね。

宮﨑さん 元当事者から、当時はモデルケースがなかったという話をよく聞きます。なのでモデルケースをたくさん用意して拡散したいです。モデルケースが示されれば、ヤングケアラーが自分にも未来があるんだと思い、前を向けると思います。

不登校のヤングケアラー

吉良 最後に皆さんから何かありますか?

宮﨑さん 学校に行けている子どもと、行けていない子どもで支援策を分けられますか?学校に行けている時点で生活は最低限送れています。不登校になってしまっている子どもたちが一番心配です。
  
吉良 一番支援が必要なところだと私も思います。今回行った高校生への実態調査では、学校に通っている生徒の声しか聴けていない。すでに悩み、つまずいている子たちこそ、支援が今すぐ必要です。

Aさん ワーカーさんが定期的に訪問する体制ができれば。
 
宮﨑さん メンター的な大人(安心して相談できる人)の存在が必ず必要です。私が大学進学を諦めて専門学校にしようと思った時、親戚がアドバイスをくれて大学進学を決めました。そういう大人が近くにいてくれれば助かるはず。

吉良 今、不登校はすごく増えています。ヤングケアラーとの関係性はデータが出ていないけれど、そこへの支援も必ず必要です。これからさらに実態を調査していきたいです。


※埼玉県は、2020年3月に全国初の「ケアラー支援条例」を制定しました。安心して介護や看護ができる社会にすることが目的です。埼玉県では、ケアラー、及びヤングケアラー(ケアラーのうち18歳未満)の実態を調査中で、2021年3月までに支援計画を完成させるべく取り組んでいます。社会全体でケアを見守り、支援できる環境を築いていきたいです。


◆Yancle株式会社HP:https://yancle.com/

◆埼玉県議会議員 吉良英敏HP:https://www.kira-hidetoshi.com/

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吉良英敏。46歳。 埼玉県議会 企画財政委員長。 全国初「ケアラー支援条例」提案者代表。 真言宗のお坊さん。 19歳の時、長谷寺(奈良県)で40日間の山籠り修行のあと、17日間歩いて地元に帰ってきました。その時の経験がきっかけで政治家を志しました。 座右の名は一隅を照らす。
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