BILLY ELLIOT 2024(7)嵐を呼ぶ男
昨日のビリー役は春山嘉夢一さんです。(6)に続いて3回目の観劇となります。
彼は「嵐を呼ぶ男」です。台風7号の時は交通機関が全面ストップとなり、来場できなかったお客さまには振替対応するとのお知らせがありました。この日のビリー役は春山嘉夢一さんで公演は予定通り行われました。
そして何と今度は台風10号の襲来です。交通機関のストップが叫ばれる中、この日のチケットを手にしていた私は振替先を第3希望まで決めてホテルを予約しました。ところが予想に反して台風の進路は西方に変わり、交通機関のストップ予定も28日から29日に1日ずれました。セーフ!と言うわけで「嵐を呼ぶ男」は返上と相成りました。
もう大体お分かりかと思いますが観劇レビューは(6)からカムイビリー1本に絞ります。何故ならチケットがそう言うからです。東京公演の千穐楽までのチケットはもう購入済みです。最初はクワトロの公演を全て観てから購入する積もりでしたがそれでは自分好みの席は取れないと判断し、6月29日にアップされたYouTubeの「M-5 Expressing Yourself」を観て即断即決しました。それはタップダンスの動きが鏡の前で踊っているのかと見紛うほどの正確さでこれをサムネイルにしたら歌舞伎のような美形がどの部分でも際立つだろうと思ったからです。
この時点では歌唱の力量は未知数でしたが、(2)を観劇して、為て遣ったりと思いました。これは最近のことですが、彼が合唱部に所属していたことを知り、なるほどと合点しました。
それに加えて彼は幼稚園児の頃から器械体操をやっています。バレエを始めたのはビリー役のオーディションを意識してからだと思われますが既にバレエコンクールの入賞経験もあります。
ミュージカル「BILLY ELLIOT」のビリー役には以下の五つのスキルが必要です。
①バレエ
②歌唱
③演技
④タップ&ダンス
⑤アクロバット
これらにスコアを付けてカラオケマシンの画面に出てくる五角形の「クモの巣グラフ」でグラフ化するとしたら、多分、一番調和がとれたグラフになるのはカムイビリーだと思います。私は、この調和こそが彼の個性であり強みでもあると思っています。勿論、好みや感性に正解はありませんから、それぞれがそれぞれの個性に合った楽しみ方をすればそれで良いと思います。そう、自分らしく!
昨日のお客さんの入りは8割くらいでしたが観客のリアクションはこれまでの観劇の中で一番良かったと思います。盛大な拍手と声援が飛び交う光景はとても誇らしくお客さまにも拍手を送りたい気持ちになりました。
母ちゃんがくれた手紙の返事を歌で伝えるカムイビリーの歌の上手さにはいつも泣かされます。それはその一つ前の光と影のシーンが下地にあるからだと思います。地下に向かう炭坑夫達の力強い合唱がマックスに達した時、重い扉は合唱を遮るように大音響と共にビリー一人を残して閉じます。それに続いて亡くなった母ちゃんとの心の別れと来ればもう泣かずにはいられません。
昨日の私の座席は(6)と同じ席でカムイビリーを間近で観ることができました。生でしか味わえないこの感覚は癖になります。映画の「リトル・ダンサー」は世界のトップダンサー、アダム・クーパーの大跳躍で終わりますが、私はミュージカルの終わり方の方が好きです。何故ならビリーが客席に降りて来てくれるからです。
生の良いところは他にもあってそれはミスの対応です。生は取り直しができません。ミスらないことにこしたことはありませんが生にはミスが付きものです。キャストがクワトロ、トリプル、ダブルキャストとなればその日に組む相手が違います。しかも今回のカムイビリーは休演日を含めて5日間も間隔が開いています。165分間の演技の中には膨大な台詞と動きと細かな約束事があります。これをノーミスでやれというのは酷すぎます。
2014年9月28日に上演された10周年記念公演(Blu-ray Disc)の中にも次のようなミスがありました。
ハプニングが起きたときに役者さんがどう対応するか?その如何によってプロの力量が問われます。喜劇役者の藤山直美さんは劇中で劇団員の一人に台本にない台詞を投げかけます。そういうハプニングを意図的に設けてその対応力を鍛えるのです。
昨日の公演にもいくつかのミスがありましたが上手く切り抜けていました。これはリピーターの役得です。
3回目のカーテンコールでスタンディングオベーションの暗黙の了解がこの公演では2回目に変わりました。写真撮影🆗のイベントが途中で入りカーテンコールが2回になったからです。このことを知っているリピーターが気を利かせて2回目のカーテンコールでスタンディングオベーションをするお約束を作ったように思います。役者さんのアドリブも高見を目指して変化しています。こうやって舞台と客席が文化を創造して行くのです。その集大成が千穐楽で味わえることを楽しみに、これからも観劇を続けて行きたいと思っています。
だから、あなただけは来ないでー
台風さん!